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【上海電力】橋下氏関与の証明?山口さん、やっぱりおかしな主張をされているように思います。

はじめに


色々忙しかったのと別の記事を書きかけていたので、山口氏の最新記事を読んだときにツッコミは後にしようと考えたのですが、やっぱりモヤモヤしてきたため、この件、先に片づけておこうと思いました。
この上海電力騒動、本当に色々な論点が次々に出てきていますが、私が記事を書いたきっかけはジャーナリストの山口敬之氏の記事でした。

最近月刊Hanadaの売れ行きが絶好調とのことですので、せっかくなので最新記事に対しても突っ込んでおきたいと思います。本件、調べるだけでかなり骨が折れましたが、ぜひ議論の一助となれば幸いです。
そして今日も超長いので、悪しからず・・

さて、本日のメインはこちらです。


また山口氏らしい皮肉の利いたトップ画ですね。橋下氏がなんらかの「実行する『仕組み』を作った」とおっしゃりたいのでしょうか。仮にそうであれば残念ながらそのような事実は無いかと思います
『副市長案件』弁明の崩壊と橋下市長関与の証明」とありますが、本記事ではまったく証明になっていません。
その点解説していきます。

すみませんが、ぜひ皆様にはまずは記事を読んできていただければと思います。アフィリエイトやらあるかも知れませんが、それが嫌な方にまでは私はおすすめいたしません。
そのうえで今回の主張を要約すると以下のようなものです。

<山口氏の主張(要約)>

・松井市長/吉村知事が共に「副市長案件」であると逃げているので、橋下市長の指示なくして成立しなかったことを証明する。
・橋下氏は遊休地だったから不動産賃借となり、メガソーラーの実績もいらなかったと説明していたが、それは事実と異なる。
・2010年当時国土交通省に提出した「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」の事業計画資料を提示され、当時湾岸エリアのエネルギー分野について、「夢洲地区ではメガソーラー」「咲洲地区では分散型太陽光発電事業など」と棲み分けていた
・咲洲では「咲洲地区スマートコミュニティ実証事業」を行うこととして、同事業について「分散型太陽光発電」の実証実験を行うとして、国交省より補助金交付を受けた。
・なお、同事業は「関西イノベーション国際戦略総合特区」の基幹事業となっており、特区へは橋下氏が知事時代から積極的に関与していた。
・特区事業に位置付け、補助金国府まで受けていたにも関わらず「分散型太陽光発電」が1か所だけ白紙撤回され、なぜか「咲洲メガソーラー」に置き換わってしまった。
2012年9月19日の市会でも橋下氏はメガソーラーの重大性を語っている。
以上より① 「咲洲地区スマートコミュニティ実証事業」の事業計画変更(分散型太陽光発電実証実験の一部白紙撤回)②白紙撤回した土地でのメガソーラー事業決定 という2つのプロセスが不可欠であったが、これができるのは橋下市長しかいない。
・2022年6月11日の建設港湾委員会において、環境局は「咲洲スマートコミュニティ実証事業」に咲洲メガソーラーの電力は使用しなかったことを答弁。上海電力の土地だけがやはり実証実験に参画していない。
・こんなものが副市長案件だというのはおかしい

こんなところでしょうか。
こちらの動画が記事の要約になっているかと思います。


今回は資料が膨大で少し長くてややこしく、理解が大変かもしれませんが、なるべく優しく書いたつもりです。ぜひゆっくり読んでみてください。

「スマートコミュニティ実証事業」にかかる時系列


まずは「スマートコミュニティ実証事業」にかかる(であろう)事項の時系列を全て整理します。
例によって全てリンクしていますが、滅茶苦茶膨大な資料になりますので、すべては紹介しません。太字にしているものが今回特に重要な資料ですが、マニアの方はぜひ徹底的に調べてみてください。

           ~2010(平成22)年度~
2010年11月1日  大阪市経済成長戦略(中間とりまとめ)【政策企画室】
2010年11月2日  <政策会議①>おおさか環境ビジョン【環境・政策】
2010年11月24日  <政策会議②>おおさか環境ビジョン【環境・政策】
2010年11月25日  おおさか環境ビジョン(中間とりまとめ)【環境局】
2011年2月3日   大阪市経済成長戦略(案)  【政策企画室】
2011年2月8日  平成23年度当初予算案について【財政局】
2011年2月8日  予算編成における局・区横断的政策課題【政策企画室】
2011年2月8日  平成23年度予算主要事業      【情報公開室】
     ⇒  スマートコミュニティ実証事業を実施します【環境局】
2011年3月17日  おおさか環境ビジョン 【環境局】
2011年3月24日  大阪市経済成長戦略 【政策企画室】

           ~2011(平成23)年度~
2011年6月15日  スマートコミュニティ実証事業計画プロポ公告【環境局】
2011年8月5日    スマートコミュニティ実証事業計画プロポ結果【環境局】
2011年9月30日  国際総合戦略特区申請【計画調整局】
2011年12月19日                   橋下市長就任
2011年12月22日 関西イノベーション国際戦略総合特区指定【計画調整局】
2012年3月12日   総合特区第1次計画が認定【計画調整局】

           ~2012(平成24)年度~
2012年4月3日 咲洲地区スマートコミュニティ実証事業計画策定【環境局】
2012年5月31日 咲洲スマートコミュニティ協議会 HP立ち上げ【環境局】
2012年10月10日 副市長会議
2012年11月 8日 咲洲メガソーラー入札案の起案
2012年11月12日 上記案決裁
2012年11月16日 HPにて入札公告開始
2012年12月12日 入札結果公表
2012年12月26日 咲洲メガソーラー報道発表


簡単に説明していきます。
まず大阪市で「スマートコミュニティ」のワードが一番最初に公に出てきたのは、2010年11月1日に中間とりまとめが政策企画室より公表された大阪市経済成長戦略です。

2010年11月1日  大阪市経済成長戦略(中間とりまとめ)より抜粋

これ以前に「スマートコミュニティ」という言葉は少なくとも私は発見できませんでしたので、発見したよという方はぜひご連絡ください。


次に以前にも紹介した「おおさか環境ビジョン」ですが、これは市長も入った政策会議という場で決定された大きな大阪市の環境政策の方針です。

2010年11月2日 政策会議資料より

これは事業局は環境局です。

次に、2011(平成23)年度の予算案が公表された2011年2月8日に、2011年度よりスマートコミュニティ事業を行う旨を情報公開室経由で環境局がホームページ上に大々的に公表します。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3480837/www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/johokokaishitsu/0000110402.html

これこの時点ではあくまで「イメージ」であるということが重要な点です。
このページに次のように記載があります。

【平成23年度予算額 6,741万円 新規】
(うち計画策定:2,000万円、実証実験:4,741万円)

これらは何でしょうか?答えは環境局のHPにあります。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3480837/www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000025420.html

それぞれ資料右上をみていただければわかりますが、これ、経済局環境局にまたがる事業だったんですね。
このうち、経済局の事業は全て一般財源(つまり大阪市のお金)でやっているのに対し、環境局事業は国交省からの補助金1/2を見込むと書いてあります。確かに山口氏のおっしゃるとおり、国交省の補助金事業です。
ただしここ、良く見ていただきたいのは2011年度の取組内容ですが、「 実証実験全体計画の策定、参加企業の募集、実証事業着手」と書いてあります。すなわち、これは環境局の実証実験の計画策定のための予算です。つまりこの時点(2011年2月)では計画はまだ策定されていないというのが重要な点です。


さて、この後2011年度に入り、2011年6~8月にかけて、環境局はこの計画を策定してくれる企業をプロポーザルで募ります。

この結果「ダン・建築機能・地域交通・NTTファシリティーズ 特別共同企業体」という事業者に環境局は「スマートコミュニティ実証事業」にかかる調査と計画の策定を委託します。
そして計画は策定され、2012年度入ってすぐに公開されるのです。

2012年4月3日


ここまでが咲洲スマートコミュニティ実証事業にかかる大まかな流れです。

山口氏の主張① 「咲洲スマートコミュニティ実証実験」の事業計画に関する資料?

さて、これらを踏まえた上で山口氏の主張をもう一度見てみましょう。
HanadaのHP、3ページ目をスクショさせていただきました。

https://hanada-plus.jp/articles/1067?page=3


3枚のパワポがあり、これを山口氏は、2010年当時の「咲洲スマートコミュニティ実証実験」の事業計画に関する資料であると説明されていますが。このうち、非常に不可解なのは2枚目です。
これ、先ほど紹介した「スマートコミュニティ実証事業計画」です。
もう一度言いますと、この計画が完成したのは業者に委託した2011年8月~2012年3月までのどこかでしかありえません。
しかし山口氏は冒頭で「以下に示すのが、2010年当時大阪市が国土交通省に提出した「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」の事業計画に関する資料だ。」と書いています。どうも時空が歪んでいるようです・・・

さて、ではパワポの1枚目と3枚目は何なのでしょうか?これ、実は同じ資料なのです。以下に示します。

2010年2月18日 財政局報道発表

この中の「平成22年度予算で重点的に取り組む主な施策【ダイジェスト】(その1)」を見てください。この「表紙」と「7ページ」に山口氏が引用されている資料があります。
この資料は次年度予算の内容を市民向けに分かりやすくパワーポイントで作成したものであり、決して「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」の事業計画に関する資料などではありません。(何度も言いますがこの時点(2010年2月)で計画は存在しません。)

そしてこれ、2010(平成22)年度予算の資料です。「スマートコミュニティ」の概念が初めて出てくるのが、2010年11月1日であり、その時点では計画すらも無いのです。つまり山口氏は

2010年2月18日  資料 (1ページ目)
2012年4月3日  資料 (2ページ目)
2010年2月18日  資料 (3ページ目)

という謎の構成の資料をHPに掲載し、「以下に示すのが、2010年当時、大阪市が国土交通省に提出した「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」の事業計画に関する資料だ。」などという意味不明なことをおっしゃっています。
なぜ、時間軸の全く異なるものを間に挟んだのか、そしてなぜ出典を示さなかったのか、申し訳ないですが、このような加工には何らかの意図を感じてしまいます。無邪気にされているのであれば、おそらく全く理解されていないのではと思案します。

山口氏の主張② 分散型太陽光発電?


次のキーワードは「分散型太陽光発電」です。次の資料ですね。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1177604/www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/cmsfiles/contents/0000069/69347/22juutendaijesutototototo1.pdf

実はこの件、山口氏が言及されるのは初めてではありません。⑧の中で例の資料は出てきます。

ちなみに冒頭「大阪市は2010年、再生可能エネルギーに関する事業計画を市民向けに簡単に説明した全10ページの資料を公表している。」とありますが、繰り返しで恐縮ですが、この資料は予算事業内容を概説したものであり、「再生可能エネルギーに関する事業計画」ではありません。実際、資料内には地域政策の話もあります。

また、山口氏は6月6日Twitterでも橋下氏に対し

と噛みつかれています。

要は山口氏の主張は「咲洲の例の土地は当初環境局による『分散型太陽光発電』の予定地(更に山口氏によればこれがスマートコミュニティ事業の一環)であったが、橋下氏就任後、港湾局によるメガソーラー事業に変更となった。」というものです。

こちらを検証していきます。

まず、山口氏が引用されている資料は財政局による2010年2月18日、「平成22年度の予算事業」にかかる資料です。実はこの同日、別の報道発表もされています。

こちらは情報公開室が発表しているものです。財政局との違いは、財政局が事業全体の概要を発表しているのに対し、情報公開室は事業の詳細までを発表しています。ここを見てみましょう。

Ⅱ未来への投資~将来の大阪の発展のために~
2.低炭素社会の構築に向けた取組み

と進むと次のページが出てきます。


この中に「咲洲地区における再生可能エネルギー利用拡大に関する検討調査」という資料があります。
それが以下の画像です。

https://warp.ndl.go.jp/collections/info:ndljp/pid/3495400/www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/cmsfiles/contents/0000065/65884/1-7kouwan.pdf


もう一度言いますが、これは山口氏が引用されている資料と同日に発表されているものです。比較してみましょう。

場所が完全に一致していますね。つまり山口氏が引用されている資料は具体的にこの事業を指しているのです。

さて、この事業はなんでしょうか?まず大切なのは港湾局の事業であるということです。そして、「地産地消の大規模な太陽光発電システムの導入を検討」すると言っているのです。
これ、平松市政の2010(平成22)年度予算です。咲洲メガソーラーは2012年度です。
この時点で既に港湾局が当該地区に大規模な太陽光発電システムが導入できるかを検討していたことになります。
またここを読むと「分散型太陽光発電」がどういったものであったのかがわかります。これまでは消費地から離れた一か所で大規模に発電し、街へ送電する、という発電が一般的でした。しかし環境やエネルギーのリスクを考えて、より消費地で近いところで発電してまかなおうという発想こそが「分散型発電」の考えです。だから「地産地消」という文言があるわけです。
要は恐らく「咲洲内の電力は咲洲内でまかなおう」というような発想で太陽光発電を進めたものを「分散型太陽光発電」と呼称したのであり、これは最初から港湾局の事業だったわけです。

もういちど山口氏のTwitterを見ましょう

山口氏は当初「環境局の分散型太陽光発電」予定だったものを、橋下市長が「港湾局のメガソーラー」に変えたという認識だったことが分かりますが、これは完全な事実誤認です。
山口氏が「環境局の分散型太陽光発電」と認識してきたものは、もとから「港湾局」の事業として進められてきたものであり、最終的にその地での発電量が1メガワットだったことから後に「メガソーラー」と呼ばれるようになった、というだけでしょう。

ダメ押しに環境局の資料も出しておきます。予算編成は秋ごろから始まるわけですが、12月~1月にかけて局ごとに市長ヒアリングがなされます。そのうちの環境局のヒアリング資料を抜粋します。

これでみればはっきりと夢洲環境局、咲洲港湾局とわかれていますね。
今一度言いますが、環境局の事業が橋下市長になって港湾局事業になったという事実はありません。

山口氏の主張③「咲洲スマートコミュニティ実証事業」再考

さて、これらを踏まえて、もう一度①に戻って「咲洲スマートコミュニティ実証事業」にかかる資料を全てくまなく読んできてみてください。

お分かりだと思いますが、それらの資料の中には「分散型太陽光発電」などという言葉は1言も出てきません。
当たり前ですが、「分散型太陽光発電」とは港湾局の事業の別名であり、環境局の出した「咲洲スマートコミュニティ実証事業」とは全く関係なかったからです。
(だからこそ、この後副市長会議にて、咲洲メガソーラー【港湾局】がスマコ三事業【環境】へ協力する、となっているのです。

ここで山口氏の記事を再度読んでみます。

https://hanada-plus.jp/articles/1067?page=5


ここまでご理解いただければ、(1)も(2)も、まったく根拠の無い話だということがお分かりいただけるかと思います。
資料が無いので推測にはなりますが、おそらく環境局の国交省補助金申請の中にも「分散型太陽光発電をします」なんてことは書いていないことはほぼほぼ間違いないでしょう。そもそも市民向け資料にすら書いていません。なお、この事業を位置付けた特区の計画の中にも「分散型太陽光発電」なる表現は見当たりません。

従ってその後に続く「何者かが介入し補助金事業を変更させた。これは市長しかいない。」といった趣旨の山口氏の結論のすべての論拠は崩壊してしまっていると私は思います。


この件は以上です。次に咲洲メガソーラーと「咲洲地区スマートコミュニティ実証事業」のかかわりについて少しふれておきます。

例によって2012年10月10日副市長会議です。

この中で、港湾局は事業者へ「咲洲スマートコミュニティ実証事業に協力しスマコ三協議会と連携を図ること」を求めるとありました。
具体的にはなんでしょうか?物件調書にはこう書いてあります。


港湾局が具体的に求めたのは「咲洲スマートコミュニティ協議会への参画」です。協議会とはなんでしょうか?
HPによると「咲洲スマートコミュニティ協議会は、咲洲地区スマートコミュニティの実現に向けて参画する事業者間の連携と事業推進を目的とした民間主体の組織です。」とあります。
要は咲洲スマートコミュニティ事業は実に多岐にわたる実証事業であり、それらは多数の民間企業が参画して行われたものです。その話し合いの場が協議会であり、咲洲メガソーラー事業者にはここへの参加が求められただけです。
当然スマートコミュニティ事業への電力供給も考えられたかもしれませんが、もともと港湾局からはそこまでは求めておらず、おそらく「咲洲メガソーラー」の電力を使用するかは協議会の議論に委ねたのでしょう。
先日の6月10日の建設港湾委員会の環境局答弁によると、結局「咲洲メガソーラー」の電力を使うことはなかったとのことです。

42:15頃~

以下は山口氏が起こした議事です。

https://hanada-plus.jp/articles/1067?page=6

しかしこれには続きがあります。以下ジョリーの文字起こしです。

大阪市環境局エネルギー政策課長(抜粋)
咲洲のメガソーラー事業者との関わりにつきましては、咲洲メガソーラーにかかる市有地賃貸借契約の事業者入札時においては、すでに咲洲地区スマートコミュニティ実証事業は実施中でございまして、この実証実験の中で咲洲メガソーラーの電力を活用することはありませんでしたが、別途民間事業者により構成・運営されておりました咲洲スマートコミュニティ協議会に参画いただくことで自立分散型エネルギーシステムの構築に向けた地区内連携を期待したものでございます。

山口氏はこの点、記事中で前段だけを切り取って「上海電力が発電を行っている土地だけは、こうした先進的な実証実験には全く参画しなかった」と主張されていますが、そもそも大阪市が求めたのは「咲洲スマートコミュニティ協議会への参画」であり、電力供給ではありません。こういうところ、都合良く切り取ってはいけないと思います。


その他:橋下市長とメガソーラーをめぐる市会答弁について


これは以前の記事で書いたので、下記記事、中段にある「<追記:市会での議論について>」をご覧いただければと思います。

この記事を書いた後も、あいも変わらず山口氏をはじめ、橋下氏へ批判的な意見を持つ方は、たびたび2012年9月19日の委員会の発言を引用し、問題にされています。この点もう少しだけ解説しておきます。
以下、市会の議事録は各自検索いただきますようお願いします。


市会には大きくわけて本会議委員会があります。
本会議は全議員が集まる場で案件を付託したり議決する場であり、委員会は専門的なことを話し合う場です。本会議へは市長は出席しますが、通常、委員会へは市長は出席しません。あくまで市長を呼ばなければならない場合のみ、委員会より要請がかかるのです。

さて、2012年9月19日は「民生保健委員会」という委員会の場であり、当時は福祉局、健康局、環境局、病院局の所管事務を審議する場でした。山口氏等が引用されている委員会の橋下市長発言ですが、これはどういった背景だったのでしょうか?

当時、東日本大震災が起こり、福島の原発事故が発生し、岩手県等で大量の放射線物質で汚染されたとされる瓦礫が発生しました(実際は科学的には安全とされていました)。地元でこの処分に困っていたところ、当時の橋下市長が大阪市での受け入れ・処分を申し出たのです。今回騒動となっている、夢洲、咲洲ですが、これらの人工島にはもう一つ、「舞洲」という場所があり、ここになんとも珍妙なごみ焼却施設があります。

上から順に、舞洲、夢洲、咲洲です。これらの地区は「此花区」という行政区になります。(追記:咲洲は住之江区であるとご指摘いただきました。お詫びして訂正します。)

https://www.city.osaka.lg.jp/port/page/0000002661.html

件のごみ焼却施設です。USJと間違える人がいるとか・・

https://www.osaka-env-paa.jp/kojo/maishima/

要は橋下市長はここで震災瓦礫を受けいれ、処分すると表明したわけですが、一部の大阪市民から猛反発を受けます。
当時の映像(市会の1か月前)がありましたのでぜひ少し見てみてください。反対する市民が大騒ぎでかなりカオスなのが見て取れると思います。

こういった流れがあっての、9月19日の民生保健委員会はあります。この場には瓦礫処理に反対する大量の陳情が寄せられており、当然市長が出なければならないような注目の委員会でした。

例のメガソーラーの答弁の手前、加藤委員は「橋下市長は此花区民に特別な負担を強いているとの認識を持っていて、だから25年度予算で此花区に配慮した予算をつけようという認識なのか?」という趣旨の質疑をされています。
これに対し、市長は「科学的には安全だが、安心面で此花区民に心理的な負担をかけている、そういう意味で予算も配慮していきたい」と言う趣旨を答弁されたのちに、メガソーラーの話題を出されます。
夢洲メガソーラーはFIT制度がきちんと決まる前に事業者が決まってしまったので、FITが出来た後からやりたいという事業者がたくさん出てきてもひっくりかえせない状況でした。それがいまさらどうにもならないという説明を環境局から受け、「だったら(震災瓦礫で此花区民には余計負担をかけるんだから)メガソーラーを地元還元するスキームを作ってよという指示が橋下市長から環境局へあったという話です。

メガソーラーは本来今回の質疑とは関係ありません。おそらく事前の答弁調整の場ではこの話は無かったんだと思いますが、橋下市長がアドリブで入れられたんだと私は感じています。要は「此花区民には瓦礫処理で大変迷惑をかけているから、予算措置も考えている上、夢洲メガソーラーでもなんらか地元還元したい」といったところでしょう。
なぜこの答弁ばかりが引用されるのかといえば、ここにはメガソーラーが「夢洲」ということが明言されていないからです。

そこで見ていただきたいのが、2012年7月11日の臨時会です。これは本会議の場であり、代表質問とか一般質問といって各会派議員が市長に直接質問するという非常に重要な場なのです。この中で公明党議員団の辻議員より「夢洲メガソーラー」への質問が出ます。
それに対し、

僕は前提条件が変わったのに、同じ無償貸与でいいのかということを局に確認したんですが、契約を延長しているとかいろんな理由で、しかも報道発表もしちゃって、住友商事と三井住友ファイナンスリースがいろんな事業を20社程度集めるということですから、民間の契約を阻害するわけにはいかないので、これはもうしようがないなと思っているんですが、そうであれば、確実に利益になるんです。確実にもうかるわけですから、それはやっぱり市民還元というものはしっかりやってもらうような、そういう仕組みにしてほしいということを局に伝えました

もう9月の答弁と内容的には全く同じなのです。
FITは確実に儲かります。なぜなら絶対に高値で買い取ってくれるわけですから。橋下市長が繰り返し言ってるのはこの点です。
従って橋下市長は7月の本会議で夢洲メガソーラーについて答弁したのち、9月の瓦礫を巡る委員会でもその点に言及した、というだけなのですね。
あくまでメインの質疑は7月であり、9月はそれに言及しただけ、という流れを知らず、ミスリードされている方がネット上に一定数いらっしゃったので一応お話したまでです。

また以前にも言いましたが、こうして橋下市長へ事細かに事業の詳細説明が上がるのはあくまで「市会で夢洲メガソーラーが質疑に上がったから」です。
咲洲メガソーラーは質疑にすら上がっていません。こういうものをいちいち市長に報告に行くことはまず無いのです。市会案件でも無い、重要な方針や計画でも無いようなことを報告したくても秘書に蹴られます。副市長ですら副市長会議後の事業者など知らなかったでしょう。


なお、瓦礫処理はその後無事に終わりました。賛否ありましたが、この件は橋下市長の英断だったと個人的には思っています。(こんなこと書くからまた擁護ライターとか言われる・・) まあまた私の個人的な橋下市政の「否」の部分は別の記事で書きたいと思います。


おまけ:入札申込が2社だったが、参加したのが1社だったワケ

Twitterでは書いていましたが、私を「橋下擁護ライター」と批判されていたYouTuberの方が面白い動画を上げられていました。

この中で参加された現役市議(自民)の石川氏によると、入札申込が2社だったが、参加したのが1社だった理由はもう一社が「工程表を提出しなかったから」というあまりにも致命的な理由だったそうです。書面でのエビデンスはありませんが現役の市議が港湾局から聞き取られたとのことで、信頼に足る情報でしょう。
一部ネット上では、上海電力を入れるために恣意的に大阪市がもう一社をハジいたかのような陰謀論を言っている人がいましたが、残念でしたね。
何度も言いますが仮にそれが本当なら公務員犯罪であって、違法性が問題になります。「違法性が問題じゃないンダー」とかいう意味不明な理屈は通じません。

これは内部から得ないと分からない情報なので大変参考になりました。こういう情報は私にも分かりません。まあ情報公開請求とかすればもっと探れますが、私はそこまでするつもりはありませんので悪しからず。

一部ネット上に「この点を説明しないからジョリーはダメなんだ」とか言っている人を見かけましたが、私の上海電力に関する記事は特に断りが無い限り基本的には「確定的な事実に基づいて考察する」というプロセスを取っています。
内部情報など事実関係がそもそも分からないことについて、当たり前ですが私は何かを語ることはできず、それでも「説明しろ」というのであれば、それは根拠の無い私の「妄想」に過ぎません。
残念ながらこの記事は私が妄想を語る場ではありませんので、そういうのを求めている方は申し訳ありませんが、どうぞ回れ右してお仲間と陰謀論や妄想に耽ってください。

終わりに

今回のことについて強く言いたいのは、山口氏には証明と言うからにはしっかり詳細な出典を示してご議論いただきたいということです。
私は自分の記事に何かものすごく価値があると自身では思っていませんが、唯一あるとすれば、すべて資料の出典のリンクを貼っていることかと思っています。と言いますのも、未だに私の記事を金科玉条のごとく橋下氏や某政党「I」のアンチの方へ見せつけにいく方がいたり、逆に匿名の信用できない粗末な情報だと罵られていたりするわけですが、私はそういうことを望んでいるのではありません。
出典等を示しているのだから、私の意見を参考にしつつ、ぜひ各々が自身でも検証をして欲しいのです。
山口氏とは異なり、私は匿名の怪しいライターです。また、私は本件の専門家ではなく、すべてを完全に理解して書いているわけでもありません。細かいことを言えば私も間違って書いていることはあるでしょうし、だからこそ皆さんが検証可能な形で出典を全て明記しているのです。自分にとって事実は事実であり、都合が良い悪いはありません。

山口氏は大変影響力のあるジャーナリストです。リテラシーの無い読者は出典まで調べられませんので、ここは万人のためにも、ぜひ資料の出典は詳細にご記載いただきたいですね。

上海電力騒動は公益にかかる内容です。
ぜひ私のnoteをリンク集として使って何度も何度も辿ってジョリーの意見が正しいのかどうか、事実がどうだったのか、ご自身の頭で検証してください(私自身このnoteが備忘録になっています。)
私は決して私の意見が全面的に正しいので無条件で信じてくださいなどと言うつもりはありません。ただし、同時に山口氏等の記事を鵜呑みにするのもおすすめはしません。大切なのはあなた自身で考えることでしょう。

なお、何度記事を踏んでも私には一円も利益は入りませんのでご安心を。
(ただ、サポートいただけると超モチベーションにはなります<m(__)m>)


今回も長くなりました。
次こそ脱上海電力芸人記事を書きたいと思っていますがどうなるやら・・

ありがとうございました。


じょりぃ

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