日本語勉強中のタイ人が電話を受けると結構な確率で面白い事になる件
難しい日本語を勉強しながら日本の飲食店で働いてるタイ人達を見てると、「大したもんだなぁ」と思う時がありますが、そのタイ人達の失敗をカバーしてる自分も中々のもんではないだろうか?とも思う時もあるのです。
タイから来日し、日本語学校に通って学費稼ぎにバイトしてる子達などは、漢字の読み書きが少し出来たり、熟語を知ってたりするのですが、聞いたり喋ったりするのは、
日本人と結婚したタイ人おばさんよりは、かなり劣っている子が多いのです。
しかし、おばさん達は日本語が相当達者な人以外は店に掛かって来た電話には出ようとしませんが、日本語勉強中の若い学生アルバイトの子達は、
「電話に出るのも勉強のうち!」
とでも思ってるらしくアグレッシブに取りに行きます。
もちろん、お客さんからの電話や、その他大事な内容の電話だったりするので、その子達には「わかるとこまで頑張れ、少しでも分からなかったら俺に代われ」と言ってあるので、彼らは安心して勉強がてらに頑張るのです。
がしかし、基本的にプライドが高いタイ人で、さらに日本に単身勉強しに来るお金持ちの子の為、電話の内容が少し分からないくらいで、電話を代わるのは屈辱なのか、必要以上に頑張っちゃう子もいて、
「フンッ、ぜんぜん余裕だぜ電話なんか」
なんて顔をしながら普通に電話を切って、
「テンチョ、タセクサンガ アトデガパオベントウ フタツトリニキマスデス。」と言っている。
わかった、ところで「タセクさん」ってモンゴル人か?
チガイマス、ニホンジンデス!
そうか・・・
で、何時に来るって言ってた?
アトデデス・・・
そうか・・・
わかった、今度弁当の注文の電話だったら来店時間を聞きなさい!
ライテン?
お客さんがお店に来る時間の事ね。
オッケー、ワカリマシタ、ゴメンナサイ。
こんな感じで少しずつ頑張って成長していくタイ人学生達が可愛くて、
ついつい甘やかしてしまうのです。
先日もベンとマプと言う日本語学校生二人に店を任せて、別室で事務処理をしていたところ、ベンから電話がかかって来て「テンチョ 15フンゴニ ヨシダノボタン キマスカラ!」と言ってきた。
電話で聞いてもお互い分からないので、すぐに店に戻り、で、15分後に誰が来るって?と電話を取ったベンに聞くと「ヨシダノボタン デス」と嬉しそうに言っている。
なあベン、「ヨシダノボタン」ってなんなんだよ?・・・
まあいいや、で、男か女どっちだった?
オトコ・・・
男のヨシダノボタンと名乗る人・・・
わかんねぇなぁ…
ベン!他になんか言ってなかった?
ハイ、デモ ワカリマセン、ヨシダノボタン・・
ピッピッ!と言いながら嬉しそうに指でボタンを押す仕草をして誤魔化すべン・・・
それから15分「ヨシダノボタン」とはどんな人物が来るのだろうか?
とワクワクしながら待っていると「お待たせしました〜〜」とグレーの作業着姿の小太りの男性が店に来た。
あれ?何かの修理ですか?と聞くと「炊飯器の早炊きボタンが使えなくなったって本部から連絡受けて来たんですけど・・・」
あ〜あ〜あ〜早炊きボタンね、すいません、頼みました、頼みました、
あの〜、吉田さんですよね?
僕ですか?
いや違いますよ、小林ですけど。
え?この子が「ヨシダノボタン」が15分後に来ますって言ってたんですけど・・・
とベンを見ると、ベンとマプが、まるで「シャイニングの双子の女の子」の様に直立不動で並んで立ち、楽しそうに「ピッピッ」とボタンを指で押す仕草をしている・・・
普通に修理に来たのに、いきなり「ヨシダノボタン」と呼ばれ、タイ人の女の子の変なパフォーマンスを見せられ、困惑しながらも、若くて可愛いタイ人の女の子二人を前にし、一瞬にして鼻の下がデロデロになってるヨシダノボタン・・・
炊飯器はこっちです、すぐ直りますかねぇ?
とヨシダノボタンをキッチンに案内すると、「ああ、これですね、パネルを交換するだけなんですぐですよ。」
と言って手際良く作業を始める彼の横で、コックのミットさんが何故かノリノリで12月でもないのに「ジングルベル」をハミングで歌いながら仕込みをしている・・・
「なんでコイツこんな時期にジングルベルなんかハミングしてんだ?」
なんて顔しながらコックをチラチラ見ながら作業を進めて、あっという間に直してしまったヨシダノボタン。
作業報告書を書きながら、こんな可愛い女の子達と一緒に仕事してるなんて羨ましいですねぇ・・・
とヨシダノノボタンが言って来たので、可愛いでしょ?
でも、小林さんの事「ヨシダノボタン」って言ってましたけどね?
大体、「小林さん」がどうなると「ヨシダノボタン」になるんだか
意味不明なんだけど、この可愛さで許しちゃうでしょ?
するとヨシダノボタンが「いやぁ、実は僕もフィリピンが好きでよく行くんですよ、昨日フィリピンから帰って来たばっかりで・・・でへへへ・・・」
そして間髪入れずに俺が、
あぶな〜〜い!ベン!マプ!離れろ!この人から離れろ〜〜!お前らのボタンもピッピッって押されちゃうぞ〜〜!
そしてポケットから大量のペソ出すぞペソッ!
ペソって・・・
ガハハハ〜〜!だ、だ、大丈夫ですよ!ペソなんか持ってませんから〜〜〜!
と大喜びのヨシダノボタン。
何を喜んでんのこのバカ男達は・・
みたいな顔して何事もなかったのように仕事に戻るベンとマプ・・・
まだ話したそうなヨシダノボタンだったが、別にヨシダノボタンのフィリピンの話なんか聞きたくなかったので「どうもありがとうございました!」と普通に俺にお礼を言われ、え?っと呆気にとられた感じで去って行ったヨシダノボタン・・・
キッチンからはミットさんの「ジングルベル」のハミングがまだ聞こえて来てました・・・
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?