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徳
徳のない人ばかりの世の中になりました。
きちんとしている人が評価されない世の中になりました。
よく知らない人が、人に理屈を教えて、金儲けをしているのが目につきます。
一体何が起きているのでしょう。
老害という言葉があるのだそうです。
弱気を助け強きをくじくという言葉がありました。
人に親切にしよう、とか、一日一善という言葉を聞いて私は育ちました。
良いことは人に見られないようにするものだという話もありました。
お若い方には分かりづらいかと思いますが、良いことをする人は人に知られるのが恥ずかしいと思うほど、謙虚だということです。人にほめられるために自分はしていないということでもあります。
ある女性が思い出話をしてくださいました。
子どもの時、少年刑務所に毎週お花を届けていたのだそうです。それが新聞に載って、その女性のお父さんは、娘であるその方を叱ったのだそうです。新聞に載って恥ずかしくないのか、と。
女性は新聞に載るほど良いことをしたのに、何故怒られるのだろうと思ったそうです。
多分、そのお父さんはお花を届けることそのものではなく、娘さんが新聞に載って喜んでいるのを叱ったのでしょう。人の話題に上るほど得意がってはいけないと言いたかったのでしょう。
その女性のお父さんがお亡くなりになったそのお葬式で、近所の方がお父さんのことをほめていたそうです。
お父さんは自分のお店の前を、朝早くお掃除する時、近くのお店の前も一緒にお掃除していたのだそうです。商店街の中で、まだ誰も起きてこない時刻にやっていたお父さんのことを、気が付いていたけどお父さんには言わなかった、と、言われたそうです。お父さんがついでに箒ではいていたお店は、まだ仕事のことがわからない若い人がやっていたらしく、店を開ける時にいつもきれいだからお掃除をしていなかったのだそうです。
どうでしょうか。
この方は人徳のある方ではないでしょうか。
私は別に人の道を説こうとしているのではありません。
ただ、このお父さんの行いが、美しいと思うのです。
私自身はこのお父さんのように生きてはおりません。こんなふうに生きることは、自分を甘やかして生きている私には、とても難しいです。
ただ、
あこがれるのです。
あこがれるのです。
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