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超短編小説 あのメーカー

上場はしているが三流と呼ばれてたメーカーの営業達のプライドは高かった。語学ができることが自慢らしく洋楽の歌詞がわからないのに聞いている人間を馬鹿にしていた。

若い営業達の夢は海外で活躍すること。自分たちの会社が世界一になると信じ、自分たちの結婚式でも自社の製品を宣伝していた。

営業先に集団で押しかけ無理やりにでも契約を取るのは有名だった。下請けには酷い言葉で罵倒し納期を守らせ、下請けが赤字になるような契約を結ぶ。いつの間にか無くなった下請けも多い。

営業達は陰で悪口を言われても行動は改まらなかった。

失われた30年の中、生き残ってきたが低価格で勝負してきたせいか赤字を抱え、メーカーは海外資本に買収された。プライドの高かった営業達は消えたと聞く。薄暗い部屋の中、ここを見ているかもしれない。

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