第0章 選択の迷い グレートリアリティア
登場人物
清原華(きよはら はる) 女性 中学三年生
外見
黒いショートヘアで、茶色い目。体格は平均かそれ以下。
性格と特徴
基本的に敬語を使う丁寧な性格。他人に対しても誠実に接し、困難な状況でもあきらめることがない判断をしている。
座右の銘は「できるまでやればできる」
成績が優香に続き学校で二位を保持。
能力は発言しているが固有能力は不明である。
碇山優香(いかりやま ゆうか) 女性 中学三年生
外見
日本人ではありえない紺色の髪で長いのが特徴。目が緑というのも彼女の特異性を表している。
性格と特徴
華と非常に似ているが、現実をよく見て冷静に判断している。
初めにできるかできないかを判断する。
成績が学校一位を誇っているが、あまり本人は誇りに思っていない。
華と同じように能力自体は発言しているが固有能力は不明。
2050年 2月12日
中学校の教室。
長い自習の時間が終わり、他の生徒が息抜きに外に出る中、華は机に向かって眉を寄せながら書類をめくっていた。
その書類には志望校の説明や入学試験の情報が記されている。
「うーん、どれも同じような学校にしか見えない……」
志望校を決められない華は、心の中で戸惑いを感じていた。
周りのクラスメイトは既に決断を下し、進路に向けて一歩を踏み出している中、彼女は未だに自分の進むべき道を見つけられずにいた。
二月ということは、すでにほかの人は受験を終え、結果すら出ているような状況であるのに、志望校すら決まらないという状況は、彼女を追い詰めていた。
「ねえ優香さん、志望校決まった?」
華は同じクラスメイトで親友の優香に相談を持ち掛けた。
「あはは。昨日と答えは変わらないよ……」
乾いた笑い方をしながら優香は答えた。
「やっぱり……本当に決まらないよね」
二人とも自嘲気味に笑った。
「親からは『今の世代、立派な軍人になって世界を救ってみなさい』なんて言われるけど、厳しいよね」
「私はそれいいと思うけどね。危ないけど」
「それで死んじゃったら意味ないじゃん」
争いを避けたがる優香は、親からの誘いを渋っていた。
「でも、そろそろどこでもいいから決めないとまずいよね……中卒はまずいって聞くし」
優香は少し考え込んでから、声を発した。
「まあ、最近あきらめかけてたけど、今日は掃除当番休んでさ、一緒に帰らない?最近はやることがないから当番ずっとしてたけど……」
「いいね。先生に相談してみるよ。了承もらえたら行くから」
もともとやることが少なかった華はあっさり了承した。
数時間後
「先生、ちょっと頭痛いので掃除当番休みます!」
華は直接言うのを避けて休もうとした。
「本当は?」
先生の問いに、華の嘘はほんの数秒でばれた。
「実は……」
華は嘘がばれると知っていたので、特に慌てずに説明した。
「まあ、もともと強制じゃなかったのでいいですが、ただし、今日中に決めるようにしてください」
「厳しくないですか?」
「厳しくても決めないと、志望校がないなら中卒と同じだって、何度も言っているはずです」
もう二月であるということは、先生も二人のことを気にしていた。
「わ、わかりました……」
そう言うと、華はそそくさとその場を後にして、優香のいる場所に向かった。
「終わったよ、優香さん。いいことと悪いこと、どっちから聞きたい?」
苦笑いしながら近づく華に、心優しい優香はその茶番に乗ることにした。
「いいことは?」
「休んでいいと言われました」
「悪いことは?」
「今日中に志望校決めないといけません」
「えっ?!本当に?」
優香は驚きの声を漏らした。
「ちなみにさ、どんなところに行きたいとか決まってるの?」
一通り驚いた後、華は話を進めるために聞いた。
「うーん、なんとなくはね」
優香の願いは、戦争の影響で困窮している人々を救いたいというものだった。
親からも軍事学校を進められたが、渋っていたのは争いを避けたいからだった。
二人は歩き出し、いつもの商店街を進んだ。途中、新しく開店したカフェに立ち寄ることにした。
そこで二人はニュースを報道する大型スクリーンに目を留めた。
「次のニュースです。国際連合は新たな平和的決議を発表し、今年から国際連合軍事学校を試験的に東京で再開することを決定しました」
アナウンサーの言葉に、二人は思わず顔を見合わせた。
「国際連合軍事学校というのは何なのでしょうか?」
別のアナウンサーが聞いた。
「ええ。国際連合軍事学校は、昔に国際協調の形成に成功した世界共通の軍事学校です。戦争の影響で崩壊しましたが、今年の復活は世界平和への第一歩になるとの期待が寄せられています」
「国連学校って……あの国連学校のこと?」
「うん、戦前に一度成功したって聞いたことある。まさかまた開校するなんて……」
ニュースでは国連学校の復活理由やその魅力について詳しく説明されていた。
世界各地から優秀な人材を集め、平和と安全を守るための教育を行うという内容だ。
「しかも、入試条件は日本語がある程度話せること、能力が発現していることだね」
「ねえ、これって私たちの悩みを解決する道じゃない?」
「確かに……今のままじゃどこに進むべきかわからないけど、ここなら私たちの力を活かせるかもしれない」
華と優香は自然に話し合い始めた。自分たちが国連学校で学び、国際戦争を防ぐための力を身につけることができるという希望が心に芽生えた。
「私、ここに入って本当の歴史をすべて知りたいんだよね」
優香は得意教科であり一番好きな教科である歴史について話した。
「(でも、本当に軍事学校にこんな理由で入っていいのかな? もっとすごい理由で入ってくる人はいるはずだけど、私には、この平和な場所で過ごしてきた私には立派な理由が持てない、、)」
「よし、じゃあもうここに志願するってことを検討するで決まりだね」
「そうだね。もう遅いし、帰ろうか」
時計を見ると、もう17時を回っていて、いつもならとっくに帰っている時間だった。
二人は、この学校に志願するという方針で一致し、カフェを後にした。
「(ずっと、、こんな平和な世界が広がっていたらいいのにな)」
華は切実にそう願った。
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