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横浜でみた大道芸【2009年3月】

2009年3月の、とある土曜日に見たもの。

3月の中旬、関東地方は曇り空で午後になってもまだまだ肌寒さがありました。
横浜みなとみらい地区にあるグランモールの円形広場。
グランモール公園の一番端の広場の部分に、通行する人々とは一見して異なる雰囲気の男性が道具を出したりセッティングをしたりしていました。
円形の広場からずっと階段が広がり、あたかも観客席が設けられた劇場のような見晴らしです。
しかし次々と歩き去る通行人のみで、そこに腰をおろす人は誰一人としていませんでした。先ほどから準備を進めていた20代と思しき男性は、ラフな服装でほどよく野性味を携えていました。
大道芸人の人が使う道具を投げ回してウォーミングアップのようなことをしていると、興味をもった人々が、一組、また一組と足を止め、男性を眺めるように見ていました。
細長い風船を膨らませたりしながら男性から大道芸を始めるというアナウンスがあると、足を止めていた人たちは、階段に腰をおろして男性を見物しはじめました。
ドラ声ながらも小気味良いおしゃべりと、細かな芸を繰り出し続けていくうちに、見物人の数が瞬く間に増えて行きました。
わきに置いておいた2mはあろうかという大きな一輪車を持ち出して来ました。
その大きな一輪車の上下を反対にした状態で、なんと顎の上に乗せて立てている。
一輪車ってそーゆー使い方をするんですか?
新しい一輪車の使い方を提案。
その後もボールを使ったジャグリングやトランプを使ったマジックなどで、ぐいぐい客を引きつけて行きます。

大道芸人の人は、肩甲骨の中心あたりにボールを乗せました。
そして腰をかがめながら、ゆっくりと慎重に背中を起こして行きました。
するとボールが、ちょうど背骨の上を沿うように静かに転がり落ちて行き、下に置かれた筒めがけてストンと入って行きました。
なんか地味。
そして、大爆笑ではないけれど、なんか不思議な可笑しみがある。
それをやってるときの大道芸人の人の顔が、すんごく楽しそうなのが印象的でした。

大道芸人の人は男性のお客さんをひとり連れ出すと、ここでお手伝いのお願い。
ジャグリングをスタートさせるにあたり、火のついた松明を大道芸人の人に投げ渡す重要な任務です。
笑いを交えながらお兄さんに投げ方を教える大道芸人の人。
なんか難しそう。
練習を終えていよいよ本番です。
大道芸人の人は燃え盛る2本の松明を、左右の手にそれぞれ持っています。
そしてお兄さんが3本目を持つ。
スピーカーから聞こえて来るカウントダウン。
スリー、、、
ツー、、、
ワン、、、
大道芸人の人に向かって松明を投げるお兄さん!
あっ。
松明は若干、上空に逸れました!
大道芸人の人は軽く跳ね上がるようにしながら投げ渡された松明を左手でキャッチすると、そのままの流れで3本の松明が投げ回されジャグリングがスタートしました。
すげー!
これがプロの技や!!
炎を出して燃える3本の松明を使いながら、次々とジャグリングの技を披露していきます。
いつのまにか増えまくった大勢のお客さんの目はもう釘付けです。
誰もが同じように興奮を携えて見ていました。
最後のキメのポーズには割れんばかりの大きな拍手が送られていました。
そのあと大道芸人の人は地面に横になり仰向けに寝そべった状態で、ファイヤージャグリングしてました。
失敗して落としたら顔面が燃えるぞ。
大道芸というのは、楽しいさの提供や技術力だけでなく、恐怖を克服する強靭な精神を持つことも必要とされるのかもしれない。

大きく盛り上げたあとに、お客さんに渡して混ぜてもらったルービックキューブをじみ〜に揃えていました。
火を使ったハデな芸のあとの、細かく地味な芸のコントラスト。
シュールさも演出として考え抜かれたパフォーマンス構成なのだろう。
その後、大道芸などで良く見かける、二つのお椀を背中合わせにしたような道具を使ってもうひと盛り上がり。
ここまで高い技術と笑いを硬軟おり交ぜながら、その大道芸人の人が作り出した世界にお客さんは魅了され、その場には代え難い一体感が生まれていました。
大道芸人の人が大きな一輪車に乗り火のついた松明を投げ回せば、見ている誰もが日常を忘れ大きな手拍子をしながらそのパフォーマンスを心から楽しんでいました。
一輪車を降りた大道芸人の人は、その盛り上がりを維持したまま、松明を口の中に入れ消化しました。
この勢いならそのまま火渡りの荒行まで出来るんじゃあないかと思えるほどでした。

すべてのパフォーマンスが終了すると、大道芸人の人の持つ帽子の中へ、大人も子ども満足の表情で投げ銭を入れていくのでした。

おわり

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