夢の夢

 俺は何も書けない。
 何も書けなくなった。
 もう無理だ。何も思いつかない。
 クソの掃溜めみたいな頭だ。
 豚の餌ほどのアイデアも浮かばない。
 汚い言葉を並べていれば、自分の内のこの激しい感情の渦が言い表せるのか。
 そこまでわからなくなってしまっている。
 冷静な脳みそだ。言葉が浮かんでくる。
 クソみたいな言葉だ。全部。グシャグシャに破って捨てられる程度の言葉だ。
 これは思いついていないのと同じだよ。
 今この文を読んでいるあなたは、ここまで読んでくれていて、何を感じている?
 いつも気になってたんだ。自分の文に自分がどれくらい写っているのか。
 僕にとって言葉は鏡だった。
 嘘が付けないから。付いてもバレるから。
 どうせ全部本当の事を言ってやればいいんだと思って来た。
 クソが、何も上手くいかない気がしてる。
 その理由は実はわかってる。
 僕はいつも、自分の人生の薄っぺらい日記帳に区切りを付ける為に、付箋を付ける場所を、いつも、悪い事や不運があったタイミングにしちまうんだ。
 もし僕に死ぬ程楽天家の友人がいたとして、僕と全く同じ体験をしてきたとしたら、全く違う、あいつはきっと「最高の人生」を送っていると思う。

 〈なぜ君は苦しんでいるのか。〉
 〈それが分かれば苦労しないんだって。〉
 〈『難儀な奴だよ君は。』。そう言ってくれる人を待つ位には、君は苦労してるんじゃない?〉
 〈まさか。そんな。〉


 「これ、本当に公開するの?」
 「勿論よ。」
 「えぇ・・・でもこれ、読んだ人ビックリするよ。」
 「えぇ、だからそう言ってるじゃない。改行を重ねてお人形ごっこしてるだけじゃ見えてこない、読者の気持ちってのを暴いてやりたいのよ。」
 「うーん。まぁ、君がそう言うなら仕方ないか。こんな弱小文芸部の展示なんか、見てくれる人も少ないだろうし。」
 「あなたは?」
 「僕?あぁ、もうそろそろ書き終わるから来週にでも提出できるよ。」
 「違うわ。」
 「え?」
 「あなたはこの文章を読んで、どう感じたの?って、聞いてるの。」


 「えへへ・・・うーん。『難儀な奴』だよ。■■ちゃんは。」
 「・・・そう。ふふ。」
 「なんで笑うの。」
 「そういうあなたはさぞ楽天家なのかもね。」
 『どういうこと?』
 『そのマまの意ミyo.』
 yあッぱり君ミはよkわか』




 気は済んだか?
 「一生やるよ。」
 気が済むまで?
 「うん。」
 恥ずかしくないの?
 「もう、恥ずかしさを盾にしても仕方なくなっちゃった気がするんだ。」
 「プライドはとっくに捨てたつもりだったんだけど、なんかゴミカスみたいに少し残ってるみたいなんだ。」
 気色悪い。
 「一生言ってろ。」
 もう寝ろよ。
 「もう寝るよ。」
 話はこれで終わり!
 「一区切り?」
 うん!


 「・・・ふぅ。こんな所かな。」
 窓の外を見ると、もうすっかり夜更けに差し掛かっていた。
 「やべっ!少しは寝ないと明日の学校で起きてられないな・・・。」
 「やっぱり徹夜はよくないな。頭がふらふらする。」
 少年はそうつぶやくとベッドに倒れ込んで目を瞑った。
 夢は終わり、明日が来る。そんな気分だった。

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