水鏡  ~大地のメソッド~ 

 座ります。背筋を伸ばしましょう。

 軽く息を吐きます。あなたの喉にある空気を、まだ肺に入ってない、つまりあなたの一部でない空気を一度身体から追い出します。

 目を静かに閉じましょう。意思を持って、しかし静かに。瞼は自分が落としたくて落とします。眠りではないからです。あなたは寝てはいけません。これは覚醒のプロセスだからです。

 あなたの目の前には、あなたは今、果てしない凪の水面、どこまでも澄んだ蒼天に浮かぶ雲のひとつひとつを完璧に反射する鏡の大地にいるでしょう。それはあなたの内世界ではありません。あなたが心をなだめ、清らかに浄化するプロセスを踏んだ事で到達する事のできた神様のいる場所です。

 つまり、今あなたの目の前に座している巨大なお方は、紛れもなく神様その人です。

 胡坐をかく阿修羅。三方を向く顔のそれぞれは水平線の遥か向こうを、目を細めて穏やかにご覧になられています。

 あなたがするべき事は、まず、挨拶を。続けて下さい。

 「また失礼させていただきます。」

 「ご機嫌はいかがでしょうか。」

 私が、私たちが、つまりあなたが知りたい事は、必ず神様の手に現れます。

 大地のメソッドとはつまり、この手に現れる物を読み取ることです。

 今の私にもっとも不測、不足、欠落しているものを、礼儀を持って、身体を清め、私を純粋な私自身に定めたから、神様は教えてくださいました。

 「ありがとうございます。」

 「それでは、頑張ります。始めさせていただきます。」

 軽く息を吸いましょう。その空気は神様の世界の空気です。あなたを正しく研ぎ澄まし、礼節を貫いたからこそ身体に作用する美しい恩恵です。

 一間を置いて、目を開けましょう。そうしたら、自分の座る大地に口づけをするように礼をします。背筋を伸ばすことにだけ集中して、その他全ては無意に正しくなるように、ほんの少しの緊張感を忘れずに、丁寧に礼をしましょう。

 この時に媚びるような礼をする人間の心は地獄に堕ちます。

 静けさの中に、あなたは整いました。

 これからの無垢な感謝と、挑戦と、反骨の血を流す、この事に対する命の誓いを静かに唱えましょう。

 右膝から順番に、丁寧に静かに立ち上がります。

 必ずこうしてから戦います。

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