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星岡 弥生

まだ暑い…まとわりつく湿気でシャツと背中がくっつく。
店の暖簾を外し今日の営業を終える…
ひとまずお冷をコップに入れ、水分補給する…
冷えたものが身体に入り、
身体の重さを感じる…
ラーメンの試食ばかりしているからだろうか…
高校生の頃の写真を眺めながらこれまでを
振り返る。

横浜戸部にある「星岡」は唯一無二のラーメン屋として多くの人たちに愛されている。
父、星岡 雄士の作る正統派醤油ラーメンは
何度も日本一の称号を得ている。

徹底的に肉を削いだ鶏ガラから出る
澄み切ったスープ…

それを支える長期熟成醤油

本家旭川より品質の高い低加水麺…

季節によって変える具…

これを基本形として更なる進化を求め、日本中から、厳選した食材を使い、新たなラーメンを
常に試行錯誤している。

桑名在来のハマグリを調達した時に
作り上げたハマグリラーメンが忘れられない。

そして、今コロナ禍に対抗するものとし
仏跳チョンラーメンを試作している…

いつ何時も問題は資金繰りだ。もはや銀行では話にならない。究極にして至高の一杯の価値を
まるで理解できない。

だからこそ、団万太郎という客との出会いが大きかった。
彼は事業をいくつも展開している実業家で
ある日、こんな頼みを受けた。
「ここのラーメンはほんと美味いな‼️
なぁ、弟子って募集しているかいな❓」

聞くところによると、次男坊が野球を
やっていたが、肩を壊して、非行に走っている。ここで修行させてくれないかという話だった。

父に相談すると
「任せる」と言われたので
引き受けることとした。
やってきた勇君は素直な子で
父の手荒な指導にしっかり耐えてくれた。

跡継ぎ…長年の「星岡」の課題にも光明がみえた。
修行料として万太郎から多額の援助を受け、
彼からこんな提案を受けた。
「よかったら、勇と一緒にならんか?
そんでチェーン展開を…どうや」

なるほどそういう魂胆だったか。
うまく話に乗りながら
「実はウチにもう1人、女がいるんですが
そちらはどうでしょう。」
「ああ、あの子か❓まぁ年下の方が
勇にとってもええか…」
「ひとつ屋根の下に暮らしていれば、
自然にね」

チェーン展開などとんでもないが
まぁいい、ウチは元祖として私がしっかり
していれば問題ない。
葉月と勇をくっつけて、何人か子どもができれば…星岡雄士の血を引いた者が、この店を
継ぐ…

そもそも、心臓が悪かった母が無理をして
葉月を産んだのは、男が欲しかったからだ。
それなのに生まれたのは女だった。

とんでもない穀潰しが生まれてしまった。
母の落胆ぶりは今でも忘れられない。

しかしあの穀潰しも役に立つ時がきた。
幸いなことに見てくれはいい…
そして勇は案の定、葉月に入れあげ、

中学生になって、葉月を呼んだ。
「あんた、勇君と結婚しな」
「え?」
「お父さんが望んでる…跡継ぎが欲しいんだよ。あとはわかるね」
「お父さんが望んでるの」
「そうよ、役に立ちなさい」
「……ハイ」

うまく、勇と葉月は付き合い始め、
すべてが順調だった。

あの女、椎名藍が邪魔しなければ…

続く








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お値段張りますが、満足できる出来栄えです。 単発売りはしておりません。

2021夏、日本はデルタ株の脅威が訪れる。 そのなかで団 勇もまた、感染する… ついに麗菜と昴は 自らの運命と戦う決心をする… 様々な三角…

ホントにありがとうございます😭 さらによい作品を作り還元していきたいと思います♪