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一棟不動産投資でフルローンは有効?

一棟アパートや一棟マンションの購入を考える時、多くの投資家は融資のご利用も一緒に考えるのではないでしょうか。

そして「自己資金はなるべく抑えよう」という考えに至る方はとても多いと思います。

なぜなら・・・

「購入したアパート・マンションで想定外の費用が発生したら不安」
「全て自己資金を使ってしまったら今後の生活に支障をきたしてしまう」
「不動産投資は自己資金を抑えてこそ旨味がある」

等々、様々な理由があり、これから不動産投資をお考えの方にとっては尚更です。

行き着くところ、「金融機関で100%融資(フルローン)で取り組ませてもらえないだろうか」という発想に至りますが、はたして不動産投資にフルローンは有効なのでしょうか?

最適な融資借入条件とは?

下の表のように異なる金利、期間、融資割合の金融機関がA~Fまであるとします。

一見すると、低金利で長期間、更にはフルローン(融資割合100%)である「A」が有利に見えますよね。

では「A」が一番理想的な融資条件なのでしょうか?

それを判断するのに「年間返済額」を計算してみました。

表にすると下記の通りです。

先程までは「A」の融資条件が魅力的と思っていましたが、年間返済額を見ると「C」の358万円が一番低い返済額ですね。

とはいえ、融資割合90%で自己資金10%入れてますから、返済額が下がるのは当然と言えば当然です。

では、ここでもう一つ計算をしてみましょう。

・年間返済額 ÷ 借入金額

この計算をすることによって、A~Fまでの比率が確認できます。

表にすると以下の通りです。

そして、一番低い比率は「C」の3.58%となりました。

この比率は何を意味しているのでしょうか?

K%とは?

不動産投資では、金融機関にとっても「融資=投資」という意味合いが強いので、金融機関を「デット(Dept)の投資家」、お客様を「エクイティー(Equite)の投資家」と呼ぶことがあります。

そして、金融機関も不動産投資による利益を期待する為、どれだけ収益を上げたかを「一つの指標」を用いて表します。

それが「K%」です。

・K% = 年間返済額 ÷ 借入残高

つまり、「K%」は銀行側からする物件の利回りを意味し、投資家様からすれば融資における支出の率を意味し、上記A~Fまでの比率は「K%」と、とらえることができます。

【A~FまでのK%ランキング】
1位:「C:3.58%」
2位:「A:3.98%」
3位:「D:3.99%」

このランキングを見ますと、一番有利な融資条件は「C」であることは分かりました。

では、2位「A」と3位「D」はどうでしょうか。

なんだか気になりますよね。

特にフルローンである「A」は融資割合90%の「D」よりもわずかながらK%は低く、とても気になるところです。

融資割合と自己資金割合

「A」「D」は、どちらの融資条件が有効なのか、ここでもう一つ例をあげてみましょう。

・例えば、以下の内容で物件を購入した場合・・・

【例】
物件価格:1億円(アパート)
表面利回:7%
融資条件:金利1.2%・期間35年・融資割合90%

・また、キャッシュフロー(CF)ツリーは以下の通りだったと仮定します。

【CFツリー】
満室家賃収入 : 700万円
95%稼働計算 : 665万円
諸費用(Opex) :△140万円純収益
純収益(NOI) : 525万円

この場合のNOIは525万円となり下のような図で表してみました。

そして、「自己資金割合10%」「融資割合が90%」ということは、

「投資家の取り分」と「銀行の取り分」は下の図のようになります。

注意したいのは、銀行の出資比率は90%ですが、実際には金利と期間を鑑みると87~88%になり、そこにギャップ(イールドギャップ:YG)が生じます。

その結果、自己資金10%の出資に対する利益「約52万円」と「YG」の合計がキャッシュフローとして得らるれことになります。

もし、融資割合100%の場合は「YG」のみしかキャッシュフローは得られず、「52万円」を得ることはありません。

よって、K%は「A」の方が低いのに、「D」の方がキャッシュフローを得られることが分かります。

まとめ

「フルローン」は金融機関側にメリットが多く、よほどの高利回でなければ「フルローン」で融資の取り組みをする魅力は下がるので、できる限りの範囲で自己資金を入れた方が良い、というのが個人的な意見です。

ここで、「フルローン」が金融機関側にメリットが多いのであれば、なぜ多くの金融機関がフルローンに取り組まないのか?という疑問が頭をよぎります。

これも個人的な意見ですが、過去に個人情報改ざん等の問題で不正融資が頻繁に行われた結果、金融庁から当面不動産投資への融資は禁止、というお達しが発令された影響だと考えています。

それに抗った金融機関は不動産投資への融資は継続していますが、物件価格の70%~90%までの融資に留めている、というところでしょうか。

インフレで不動産価格が上昇している今、しっかりと自己資金を投下して余裕をもった投資を心掛けるのがオススメです。

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