見出し画像

第10夜【おでん】

次第に原画のメカメカした影のものは少なくなったが、
相変わらず火だるまバーニアやビーム光線の作画は多かった。
金田光のような作画もあり、ZZでは自分も使ったが、
あれは動きの予備動作としての意味があり、デザインとして解釈されると意味をなさない。

仮にそれを使ったとしても、光線が主張しすぎてしまい、
モビルスーツやパイロットの芝居を脇へ追いやってしまうから、
ガンダムの様な密な人間ドラマには合わない。

担当者も、さらにカットごとに、まちまちになってる感じがした。
この頃、ようやくかよと思う全シーンの絵コンテが届いた。
そして今頃かよ?とギラドーガの足の裏の設定が届いたりもした…。
しかし、ジェガンの足の裏は最後まで来ない…。
Uプロデューサーが、それが仕事なのだろうが…こんなのを作った人がいる
と言ってガンダムの顔の立体造形の写真が渡された。
…今更?同じ時間軸にいるスタッフなんだろうか?との違和感…。
進捗状況からして使えない…。


製作プロデューサーとして進捗の為に何でもしたいという姿勢のあらわれと受け取った。

このまま劇場版にして良い訳ない物が多いし、でも自力の限界を感じる。
手を付けたカット分マーカーで塗りつぶした絵コンテが、マーカーだらけになっている。

職務を問い頭の中で整理した。

まず前半の戦闘で火だるまバーニアは無くしてメカデザインは視聴者も理解してるし、後半の戦闘シーンは迫力にもなるし、ある程度、もう火だるまは許容しよう。
O作画監督の言っていた黒影はフィルム状効果を認めないので考えないことにしよう。
コックピットモニターごしに見るモビルスーツの遠景バーニア噴射炎などは、モニターで滲んでると想定して各原画のままスルーしちゃうのもアリ!
それよりも、足りない原画枚数を増やすこと中割用にラフ原画を追加する事を考えよう。

Uプロデューサーが夜遅く回収に来た。
「サンライズに入って作画監督作業をしてもらうことはできないか?」と尋ねられ、今買ってきたからと「おでん」の差し入れを受けた。

ちょうどBUGってハニーの原画UP目前のところで、会社事情からそれはできないと伝え、爆発は修正しきれないので、劇場ガンダムⅢなどで使っていたはずのブラシの叩きのような特殊効果(エア-ブラシ係)を爆発に入れてもらえないか?と尋ねた。
「ちょっと考えていなかった」との返事で帰って行った。

ギャラにならないであろう自分への差し入れ、「おでん」をテーブルに置いて、終電までに、ハニーを終わらせようと作業していた。
方南町の会社の社長が「ねぇ?仙波君このおでん食べないの?」としつこく聞いてくる…。
「後で食べますから」と応えて、原画に没頭し、なんとか終わらせ、
さあ食べようとテーブルに向かうと容器の中は空だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?