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第3夜【アニメーターとして】

自分は、どんなタイプのアニメーターだったかというと、一言「ムラの多い原画家だった」方南町のスタジオは昔なじみの仲間という事もあり、昔の自分が動画兼制作進行(原動画のスケジュール管理、仕事の受注、外注への発注、事務など)もやっていたので、動画側のスケジュール指導など制作的な仕事も頼まれていた。

ただでさえ線画が上手いわけでもないのに、そういうのが重なる時に描く原画は、とてもよろしくない…。

画への集中力が働かず、なんといっていいのか?脳味噌と手が両立しない。K女性作監に褒められたボーダープラネットも、
次の風と樹の詩では、馬のレースシーンこそY監督の指導でなんとかいったものの、BGレイアウトもろくなもんではなかったし、濡れ場を描く際には、人物の距離感が掴めなかった。まさかのアニメート経験であった。


<風と樹の詩>
この受注をし受話器を置いた後、近くにいた後輩女性原画マンSに
「奇麗なタイトルだけど風と樹の詩って、どんな話?」と尋ねると
「え!?受けたんですか?ウケル~w」と指さしケタケタ笑われた。
打ち合わせ当日まで内容も演出が誰かも知らず、現場マンションに出向くと
席にいた監督が安彦良和氏でビックリ!コンテの担当個所見て二度驚いた。
担当は男同士の目覚まし時計ある濡れ場シーンと馬のレースシーン。

-安彦さん指導画-

安彦監督から、その場で馬の走りとはどうあるべきか?を直々指導してもらった。こんな機会に恵まれたアニメーターがどれだけいただろう?
(ノルマを果たせば仕事は終わり。それを充実した人間生活と言うのだろう。
ノルマを余裕で果たして尚、欲を持ちノルマ外をやれば、加速的に学びを
得られる。天才肌でない自分は、そう生きた。しかし昨今の日本のエンタメ事情を見れば薦められない…制作がマニア化してるし、報酬も酷い。
まず最初に、中国やハリウッドを今の若者は目指すべきかな?)

私は、お世話になった人に御中元、御歳暮をだす人だったので、そのお礼を兼ねてか?「仕事は選んでいいのよ!」とK作監から電話忠告を受けた。
(いや…そのくらい、きっと原画の出来が御粗末だったんだろう)

そういえば、そこのお前ら、お前ら俺に御中元も御歳暮もよこした事ないよな?死んだ文化?…そうだな。


それまでの作画の中では、メカよりも圧倒的に人物の描写原画が多かったが、実はメカ向きであったのかもしれない。
(メカを描いてるのは、さほどストレスを感じなかったし)

演出家によっても極端に変わった、こっちを乗らせてくれる演出家にあたると良い作画ができるのだが、そうでないと画が落ちてしまう。
また、演出家の求める演技を再現するためにカットの秒数を平気でかえてしまったりする悪いアニメーターでもあった。

一枚絵に凝る人、1カットに燃える人、いろんなタイプの原画家がいるが
私は、1つの担当シーンを、その作風を邪魔せず心地よく構成する事を目標にした。アメリカのスタジオギタリスト、ジェイ・グレイドンのようなアニメーターになりたいと思っていた。
(Jay・Graydonに関しては、また何処かで)

ZZガンダムのドーベンウルフVSザクⅢも、結構秒数をいじった…。ただ演出家のSさんが、あさりちゃんの動画時代からの知り合いでもあり甘く受けとめてもらえたのだろう…。

逆シャアの最初の作画シーンも、それでよかったからと結構、秒数をコンテから変えてしまった。…これがどうも後に監督の逆鱗に触れることになる。
もちろん無断というわけではなく、レイアウト提出時にかなりの数の動きのラフとタイムシートをいれて、お伺いを立ててるつもりではあったし、自分流のカメラワークで作画設計を建てた、フォローPANなどのレイアウトカットは、監督の入念なチェックが入り直されて「ああ、ガンダムはこうか?」など行き違いは無いと踏んでいたのだが…。

この初回の担当シーンでは、レイアウトチェックはキャラがいればK作画監督、メカがいればO作画監督が圧倒的な画力で行っていて、どの時点で、そのシステムが崩れ、破綻し、無くなったのかは、私には知らされなかった。
(後に参加してくる原画マンには監督の修正指示だけも増えて行った。)

-有料部分-
第一担当シーン解説1.

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