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#4 人物ポートレートを撮り始めて半年の軌跡と学び

2023年11月に初めてポートレートを撮影させていただいてから、2024年6月現在で約半年とちょっとが経ちました。今までどんなことを考えて撮影してきたか、どんな学びを得て、写真の撮り方をどう変えてきたのかをまとめてみたい。

僕は風景スナップが好きで、田舎の風景ばかりを撮っていた。でもある時、映画のワンシーンのような、ストーリー性のある写真を撮りたいと考え始めた。物語を語るには登場人物が必要だと思っていたので、人物写真への興味が強くなっていきました。それがポートレートに挑戦しようと思ったキッカケだった。

とはいえ、モデルさんに声をかけるのも勇気が出ないし、上手く撮れる自信もない。そういう悶々とした気分を抱えていた2023年の11月頃、Shenaさん(X:@Cig_0m)の撮影募集を目にし、モダンなお着物を着たShenaさんの素敵さに思わずDMを送った。数ヶ月悩んでいたポートレートへの挑戦機会が、あっさりと訪れてしまった。

ポートレートを始めるには、撮影させていただくモデルさんとの出会いがとても重要だと感じている。僕の場合、Shenaさんを撮影させていただけたのは本当に幸運だった。Shenaさんは初心者の僕にも親切に接していただけて、拙い撮影と、要望を辛抱強く聞いてくださった。心底この人にお願いしてよかったなっと感じながら撮影をさせていただいた。

Shenaさんのモデルとしての実力と、京都という素晴らしいロケーション、素敵な衣装の力にも助けられて、写真自体はとても素敵に撮らせていただけたと感じていた。実際、この時撮影した写真は今でも見直すくらい好きだ。でも、Shenaさん以外のモデルさんでも同じように撮れたか、望遠圧縮の力を使わずに撮影できたかと言われれば、無理だったと思う。衣装もヘアセットも、ポーズでさえおまかせになってしまっていた。完全に「モデルさんと環境に撮らせていただいた」という状態だった。これではダメだと強く感じた撮影となった。初めてポートレートを撮影できた嬉しさと、自分の力で撮りきれなかった悔しさが混じるような、なんともいえない気分で家に帰ったのを今でも覚えている。

それでも、現像した写真はSNSで高い評価をいただけた (モデルさんが投稿したものではあったが) 。この結果はひとつの自信となって、今でもポートレートを楽しむことができている。Shenaさんは、今の実力でもう一度撮らせていただきたい本当に素敵なモデルさんだった。

それから、SNSや書籍を片っ端から読み、写真の基礎的な知識をイチから学び始めた。そんな時に出会ったのが、高橋伸哉さん(X:@_st_1972)のshinya写真教室だった。

伸哉さんの写真はもちろんだが、写真教室の生徒さんが撮られている写真がとても素敵で惹かれるものがあった。単純に女性を写した写真という感じではなく、情緒的な雰囲気のある作品ばかり。こんなふうに情緒感のある写真を撮りたいなと考えていた時、愛知で開催される教室の告知があり、思い切って参加を申し込んだ。

とりあえず直近の写真教室に申し込んだ訳だが、内容は情景エロスという難易度の高いコンセプトの回だった。幸いにも周りには初参加で同い年くらいの方もいらっしゃり、楽しく参加させてもらった。だが、撮影は本当にてんやわんやだった。屋外よりも光が少ない古民家での撮影ということもあって、露出をとるだけでも精一杯。コンセプトや構図を考える余裕もなく、モデルさんへのお声かけも全くできなかった。結局この日は、先生に指示をいただいて撮った写真以外、納得できるものが一枚も撮れなかった。

まゆめさん (X:@mayume73)、りなさん (X:@gyoza_love3) という圧倒的に素敵なモデルさんにも関わらず、自分のカメラに残る写真は彼女たちの魅力を全く写し出せていなかった。本当に悔しい思いをしたのを今でも覚えている。

この撮影の直後、悔しさのあまり自分の課題をノートに書き殴った。簡単に書くと以下のようなポイントだった。

  • 露出の合わせ方が全体的に暗く、露出の基本がわかっていないこと

  • 光が全く見えていないこと、モデルさんが綺麗に写る光を全く理解できていないこと

  • 背景整理などの基本が意識できていないこと

  • 撮影イメージが希薄で、モデルさんに対して適切にお願い(ディレクション)ができていないこと

写真の基礎中の基礎だが、その基礎の重要性を身に沁みて感じていた。もちろん今もやりきれていない事ばかりで、これからずっと意識し続ける事だと思う。この日を境に、日々のスナップ撮影や、子どもたちを撮る時の写真への意識が大きく変わった。ただ漫然と撮るのではなく、できる限りフォーカスもWBもフルマニュアルで、写真をどう撮るかを一枚一枚頭をひねるようになった。書籍も色々と購入し、知識を頭に入れて、頭の中に得た情報と、自分の目と手の感覚を合わせていった。

そうして、しばらくは風景スナップを中心に撮影をしながら、濱田英明さんや砺波周平さん、瀧本幹也さんや須藤和也さんといった写真家さんの作品に触れていくことになった。2023年11月から2024年2月頃までの期間、ポートレートを撮ってはいなかったが、丁寧に自分の写真と向きあった時間だった。憧れる写真家さんと自分の写真は一体何が違うのか、この大きな隔たりの中身をなんとか紐解けないかと、実力がないなりに研究と実践に没頭していた。

そんなことを繰り返していく中、なんとなくではあるが自分の写真の雰囲気や現像の仕方に対して、しっくりくるものを掴みはじめていた。自分の写真のスタイルが少し見えてきた感覚があった。

その空間の雰囲気や空気、息づかいのようなものを写真として写すためには自分が何をみてどう感じたのかをハッキリと自覚する必要がある。そういった自分の感覚を写真に反映するには、基礎的な技術をもっとしっかり体に染み込ませる必要がある。手足のようにカメラを扱えるようにならないと、良いと思った瞬間に間に合わない。自分の思う瞬間を切り取れるようになったら・・・ポートレートでも好きになれる写真が撮れるかもしれない、そんなふうに感じ始めていた。

今の感覚でポートレートをやってみたいと思い、2024年の2月にもう一度shinya写真教室の門を叩いた。

憧れのモデルの柊里杏さん (X:@lialily11)、Xでずっと拝見して素敵だなと感じていたさゆりさん (X:@sayuphoto_) というこれ以上ないモデルさんでの撮影。数ヶ月練習してきて、これで撮れなきゃもうダメだというくらいの気持ちで挑んだ。

結果としては、そう簡単にうまくいくはずもない。憧れのモデルさんだったにも関わらず、相変わらず手元に残せた写真は僅かだった。だが、以前とは違い、撮影した中の何枚かが、自分にとっては光明を見出せるものだった。

これらの写真は、良いと感じた瞬間の雰囲気を切り取れていると感じたものだ。自分がどういうシーンの写真を好むのかをなんとなく捉えることができ、ディレクションのやり方を変えればこういった写真を撮影できる確率が上がっていくのではと感じた。

前回の教室参加の時は「なぜ上手くできないのか全然わからん」という状況だったのに対し、改善案が頭に浮かぶ状況まで持っていくことができていた。具体的には以下のようなポイントだった。

  • 引きの写真が少なく、Xなどで写真を組んだときに同じような距離感の写真が並んでしまう。

  • 良いと思った画角やポーズでの粘りが足らず、撮影の中でブラッシュアップできていない。良いところがある写真なのに無駄なものが写っていたりなど、気になる箇所が残ってしまう。

もちろん、基礎的な知識の理解もまだ足りない。撮影の感覚はどちらかと言えば追いかけっこのような感じで、撮影してから写真の課題に気づくような情けない状況。だが、ほんの少しの自分の成長を喜んであげられる程度には手応えがあった。あまり変に悩まずに、さらに基礎を徹底する必要があると感じて、そこからShinya写真教室の初心者基礎コースの受講を決めた。

shinya写真教室の初心者基礎コースでは、露出の取り方や光の読み方、構図の考え方などを座学と実技で4ヶ月でみっちり学んでいく。今まで自己流で学んできたところに、講師である谷口卓弥さん (X:@taku__graphy)から丁寧にフィードバックをいただいて技術と知識を磨いていく。

そして、2024年3月の最初の実技の日、撮らせていただいたのはふうこさん(X:@fuko_photo)だった。

この日の撮影は雨で、初めて雨天で撮影したこともあり実際わちゃわちゃだったし、手応えを感じるところまでは持っていけなかった。だが、ふうこさんの可愛らしいのにどこか寂しげな雰囲気をみて、この人で自分のテイストの作品を撮ってみたいと強く感じていた。

後日、ふうこさんに直接連絡を取り、地元いなべ市での撮影を依頼した。このいなべでのふうこさんとの撮影が、自分のポートレート写真の大きな転換点となった。

ふうこさんには4月の桜の時期に丸一日の撮影をご依頼した。事前に撮影イメージや衣装の雰囲気、撮影地の候補をお伝えし、できる準備は全て行った上で撮影に挑んだ。写真ではなく動画の撮影だったが、合間に写真も撮影させていただいた。

この撮影では大きな手応えを感じた。自分の中でイメージを作り上げていく感触と、ふうこさんがそのイメージに応えてくれているような感覚があった。実際にふうこさんがどう感じていたかはわからないが、自分のやりたいことを受け取ってくださっているという実感を勝手に持っていた。

ふうこさんに演技の経験があり、演出の意図をすぐに捉えてくださるハイレベルなモデルさんであることに助けられたのはもちろんだった。でも、そこに甘えすぎず、良い意味で初めてモデルさんに自分の意図をぶつけられたような気がしていた。

実際の撮影では、基礎的なカメラの操作や、写真の構図への工夫、光を考えて撮ることなど、今までの課題を意識しながら丁寧に撮ることを大切にした。拙い部分はありつつ、概ねイメージ通りの動画・写真を撮影することができたように思う。この経験は、自分の中で大きな自信になった。モデルさんと同じゴールを見て撮影ができたことは、本当に嬉しい感覚だった。(少なくとも僕はそう思えた、ふうこさんが全然そんな感じじゃなかったら恥ずかしい><)

ここから、4月・5月と写真教室やお仕事でも人物写真を撮らせていただく機会をいただいた。ふうこさんの撮影で得た感触を自分の中で徐々にブラッシュアップしていった。

ののさん (X:@nono3desu)、白川うみさん (X:@umiiiii17)という素晴らしいモデルさんの撮影もさせていただき、これまでの自分の感覚を確かめていった。実技の日は雨が続き、難しい撮影が続いた。それがかえって基礎に立ち返らせていただけて、学びを深めてくれたような気がする。

Shinya写真教室の実技があと1回となった時、学んだ全てを出し切って、今できる最高の写真を撮ってみたいという思いが強くなっていた。場所もモデルさんも、天気も、全て妥協なく今の全力と言える写真を撮りたい。

そんな時に、柳田桜子さん(X:@Sakurako__0404)のことをSNSで知った。どこか儚げで、それでいて強い眼光をお持ちのモデルさんで、SNSで拝見した作品に強く惹き込まれた。この方となら今の全てを出しきれるような気がする。勝手ながらそんなふうに思って、2024年の6月に撮影を依頼させていただいた。

桜子さんは、カメラを向けるたびに雰囲気が変わる。こちらがピリッと来るような迫力のある表情をされると思ったら、次の瞬間にはふにゃっとした優しい笑顔にもなる。差し出がましいようだが、このモデルさんはカメラマンの采配次第でどんな姿にもでもなれる人だと、撮影しながら強く感じていた。桜子さんの姿をどう写すかはカメラマンの腕次第だ。僕から見たこの人の魅力を映し出すことができるなら、重ねてきた努力の方向性は間違っていないはずだと思いながらシャッターをきった。

大袈裟だが、自分の写真の一つの到達点のように感じた。写真としての細かい改善点はありつつ、これが「自分の写真」だと胸を張って言えるところまで来ることができたように感じた。今までの撮影にあったような「上手く撮らねば」という感覚が徐々になくなっていって、良いと思うものをそのまま撮っているような感覚があった。要するに、撮影がものすごく楽しかったのだ。

基礎があるからこそ、自分の表現したい世界に近づくことができる。実際の撮影の現場で、モデルさんとの呼吸を合わせることができる。滞りなく、流れるように自然な空気で撮影できる。基礎を体と頭に叩き込めたことで、この感覚をある程度体感することができたように思う。

当たり前の話だが、モデルさんの力をストレートに受け取って写真として表現するためにはカメラマンの力量が大切だ。そんなことをとても強く感じた撮影だった。

そして、先日迎えたShinya写真教室最終日。初めてポートレート教室に参加した時撮らせていただいたモデルさんである、まゆめさんと再会した。まゆめさんを撮らせていただける嬉しさを噛み締めながら、今までの経験を丁寧に思い出しながら撮っていった。

桜子さんとの撮影で得た、上手く撮ろうと意識しすぎない感覚。そこにある美しさに集中すること。その瞬間を楽しむこと。焦らず、粘り強く良い画角・シーンを探し出すこと。同じ古民家での撮影でも、以前とは見えるものが全然違っていた。曇りの古民家の美しい光が、以前よりも見えている感覚があった。今まで諦めずに何枚も何枚も撮ってきた写真たちが何度も頭をよぎって、ここはこういうふうに撮れるよと教えてくれているようだった。

憧れている写真家の方々は、きっとこの感覚をもっと強く、はっきりと持っていらっしゃるのではないかと今ならわかる。

相変わらず伸哉さんには厳しめにアドバイスをいただきながら、それでも自分が手応えを感じた写真を「ええやん」と言ってもらえることが少しづつ増えてきたように感じる。この打率をもっと上げていくために、これからも頑張っていきたい。

2024年の年末頃には、またさらに素敵な写真が撮れるように色々と考えているところです。ぜひ次の半年を一緒に追っていただけると嬉しく思います。

こんなに長い記事を読んでくれてありがとうございます。
それではまた。




三重県いなべ市で小さなデザイン事務所「スタジオビーモ」をやっています。今は写真撮影を中心にお仕事をいただきながら、コツコツデザインを作ってます。よかったらWEBサイトもご覧ください。




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