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ほんのすぐそばにある現実

久しぶりに見た上司は見た目に変わりはなく、僕が知っている上司のままの姿であった。

特別いつもより優しいわけでもなく、終始穏やかな様子だった。

部下に休職された心中はいかほどのものであるか、推し測るすべはない。

僕も特別扱いしてほしいわけではなかったし、特に謝るほどの気持ちもなかった。ただ、一応礼儀として「ご心配、ご迷惑をおかけしております」とは言った。ただそれだけのこと。

上司には何の恨みもない。ただ、HSP気質な僕にとって、部下に対してパワハラ、モラハラ的な態度をとるのが横目で見ていて辛かったというのはある。共感性が強い僕にとって、周囲で怒られているシーンを見るのがとても辛い。もしこれが自分に向けられていたらと思うと、内心恐ろしかった。

復職するにあたって、先ずはデスクワークで補助的な仕事から始めようとのことだった。今現在僕がいない状態で仕事が回っているのだから、急に僕が入ってメンバーから仕事を取り上げるわけにもいかないだろう。

その言葉を聞いて僕は、一応配慮してくれてるんだ、と感じた。営業という職種的に、担当替えは簡単ではないというのもある。だがもしかしたら、復職した瞬間から仕事を全部戻されて元の木阿弥になるのでは、と考えていたため、安堵したという気持ちが大きい。

途中で上司に電話が入り、中断する。音声はそのままだから、上司の電話での受け答えだけがオンラインで聞こえる。待っている間、画面の向こう側だけが現実であって、自分だけはあたかも宇宙空間のような非現実的な世界からアクセスしているかのような気がした。

と同時に、本当にこれから社会復帰するんだな、という妙な実感もあった。現実世界が近づいてきているという焦りにも似た感覚。ほんのすぐそばにある現実。

電話が終わってから、再開。そこからは簡単だった。医者からの診断書を取得すること。復職日の決定。

面談が終了。いろいろ聞かれると思っていたのにあっけない。でも事務的であったのはかえって良かったのかもしれない。余計なことまで詮索されるほうが面倒だったと思う。

手続としてはこれ以上はない。復職までの期間をどう過ごすか。それを考えないといけない。

平日を自由に過ごせる最後のチャンス。ここからの数週間はできるだけ自分が楽しいと思えることに時間を使おう。やり残したことはないか。新たにチャレンジしてみたいことはないか。それを考えるだけでも気持ちが軽くなる。

他人からどう思われるかなんてこと考えず、まずは自分に優しく、自分を大事にしていこう。


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