看護師の仕事はなぜ理解されないのか。
看護師の仕事は認知度や人気は高いのに圧倒的に仕事内容が知られていない現実に打ちのめされた話です。
※いつもの夜勤明けの記事です。少々言葉遣いが荒く、夢物語のような内容になっているかもしれませんがどうかご了承ください。
先日、地元の友人と飲んでいた時、仕事の話になった。
基本的に友人とはあまり仕事の話はしないのだが、営業職をしている彼はコロナ不況の煽りをモロに受けており、他の仕事に興味が出てきたとのこと。
そこで僕は看護師の仕事内容についていろいろと話したのだが、友人(非医療者の一般人)が看護師の仕事内容についてほとんど何も知らないことに驚いた。
しかし、普通に考えれば他業種の仕事内容なんて知らないのが当然だろう。
とやかく言っている僕も、営業の仕事内容なんて全くわからない。なんとなくスーツ着て会社に行ったり、お客さんに飛び込みで物を売ったりする仕事、そのくらいしか知らない。
そもそも、僕自身も看護師になる前は違う仕事をしていたが、当時は看護師の仕事内容は「医師の手伝い」くらいにしか思っていなかった。
看護師になる前はそんな「医師の手伝い」というイメージを持っていた僕だったが、看護師としての経験がだんだん長くなってくるにつれて、看護師の仕事が当たり前に世間に知られていると思い込んでしまっていた。
というか、医療・看護の世界にどっぷりと浸かりすぎて「世間=看護師の世界」になってしまっていた。
しかし、先日の友人との会話で、まだまだ看護師の仕事は世間に知られていないということに気付かされた。
そして、実はそれを看護師はあんまり気にしていない。というか周りに医療者だらけで気にする機会がほとんどないから気づかないということがわかった。
しかし、実は看護師というのは日本で最も多い専門職業である。看護師は日本に120万人いる。日本人の100人に一人は看護師なのだ。ドラマや映画でもよく出てくる職業で知名度はトップクラスの仕事だ。
にもかかわらず、看護師の仕事内容に対する世間の認知は非常に低いことを改めて実感した。
この圧倒的認知を得ている看護師という職業なのに仕事内容については理解されていない 。この原因は何だろうか。ちょっと考えてみる。
まず、看護師経験2〜3年くらいであれば、まだまだ医療者以外の世間と接点がある。高校の同級生、地元の友達、家族や恋人。こういった人達の影響で看護師の仕事と他業種の仕事を比較することができる。
だが、年数が経ってくるとなかなかそれができなくなってくる。
会う人が医療関係者ばかりになってしまうし、また、仕事に対する違和感も無くなってくる。
最初のうちは非医療者の友人達に「こんなことがあって〜」「ヤバいことがあったんだけど」といった具合に仕事の話をすることはあるだろう。実際に僕もよく話をしていた。
しかし、日に日に看護師の仕事に慣れてきて仕事に対する違和感がなくなり積極的に話さなくなる。
更に、看護師の愚痴は看護師しか理解できないことがかなり多い。
しかも、病院自体が閉鎖的な空間で、個人情報の保護と言う名の暗号化装置で外部への情報はシャットアウトされる。
その結果、看護師が院内で話しているような愚痴や問題提起は倫理的な問題としてタブー視されることもあり、看護師の仕事内容は誰にも知られないままになっていく。
Twitterを見ていると、院内で当たり前のように言っている内容でも大炎上している光景を見るが、象徴的な出来事だと思う。
このような理由で、看護の仕事内容についての情報はどんどん閉ざされていく。
こうなると、看護師の仕事とは、世間ではどのようなイメージになるのだろうか。
例えば
健康診断や近医で看護師を見ることで
→採血をする人、注射・点滴をする人、医師の手伝いをする人
医療系のドラマを見て
→医者の指示のもと動く人、入院患者さんの身の回りの世話をする人
ニュースを見て
→大変な仕事をしている人、労働環境が過酷な人
家族が入院している姿を見て
→入院中の世話をする人、患者さんの近くにいる人、下の世話までする人
こんなイメージが出来上がる。
これらを統合すると
「医師の指示で簡単な医行為や下の世話をしているタフな人たち」
みたいなイメージになるのではないかと思う。
んで、実際に友人から言われた言葉は
「看護婦ってオムツ交換とかそういうの以外もするんだな、意外だったわ」
だった。「Oh…マジか」と思ったけど、それがまあ一般的なイメージなのかなと。
その友人に、僕が医学書を読んだり、研修に行って学んだことを活かしながら、実際に臨床で心電図の異常があったら医師に報告したり、急変が起きた時は真っ先に心臓マッサージをしてアドレナリン投与をしたり、呼吸状態が悪いのであれば積極的にドレナージをしたり、色々やっているよと話をすると、とても驚いた様子だった。
でも世間はそんなイメージはほとんどないのだ。
というか、そんな話をしてもチンプンカンプンだと思う。
そして、小難しい話になるので(しかも看護師はバカにされたと思ってイライラするので)、話が究極につまらなくなり、途中で会話が強制的に終わる(と言うか話題を相手が変えたがる)というのが一般的な流れなのではないだろうか。
また、実際に現場で働きながら、看護師の仕事はこれだけ認知されているのにもかかわらず、看護師の立場と言うのは非常に脆く、弱い存在に感じる。
今回のコロナもそう。看護師だけではないが、看護師は特に現場で疲弊していると思う。と言うか感染リスクが非常に高く、人員不足による弊害をモロに受けやすい。
看護師の仕事内容への世間の関心が薄かったり、待遇の問題を抱えているこの現状、一体誰の責任なんだろうか?
これは誰のせいでもなく、看護師の責任だと思う。
具体的に言うと、看護師がもっと正しく自分たちの仕事内容だったり、待遇や立ち位置についてアピールをしてこなかったことが原因だと思う。
看護の先人で偉大な方々は多いし、今までの活動を否定するつもりはない。
だが、病院には
・とんでもない勉強量をこなし、もしかしたら医者より頭が良いのではないかと思えるような看護師がいる。
・女神のような人間性を持ち、どんな患者さんにいつでも笑顔を提供している看護師もいる。
・子供を育てながら、家庭を大切にしつつ、管理職をこなし、大学院に行って看護学を深めようとしているスーパー看護師もいる。
こんなすごい看護師がゴロゴロいるのだ。
しかし、こんなにすごい看護師達も、結局は僕のようなノーキャリア、ノーライセンスの平凡な看護師と一緒に働いている。
そして病院という箱の中に飼われているから、僕と同じ「看護師」と言うカテゴリーに入れられ、先ほども言ったような、一般的な「看護師」のイメージになってしまうのだ。
もっと看護師は外に飛び出して、自分の価値や医学的知識、患者さんとの関わりで蓄積した看護の能力をもっとアピールして良いのではないだろうか。
看護師が能動的に動くというのは何となくタブー視されているようだが、看護師がもっと積極的に医療の情報だったり自分達の仕事について語ることによって看護師の価値は何倍にも膨れ上がると思っている。
看護師はちゃんと実力があるし、人数も桁違いに多い専門職の集団なのである。
そんな看護師に必要なのは行動することだけだと思う。
と、超絶自己啓発っぽくなって「キッツいわぁコイツ」と思っている人も多いだろう。でももう少しお付き合いいただきたい。
ここからは何でこんなことを僕が言っているのかを説明させてほしい。
ぶっちゃけ看護師の仕事はおそらく今後減ってくると思う。
「え?」と思う人も多いだろうが、今後IT技術やAIの導入による医療の効率化が図られるようになるだろう。看護配置も今の7:1もしばらくは継続するだろうが、AIやIT技術に加算がつき、10:1とか、あるいは20:1のような看護配置も出てくるかも知れない。
そうなると病院内で最も人件費がかかっている看護師の給料や人員の削減が検討されるのは容易に予想できると思う。
また、毎年とんでもないペースで膨れ上がる医療費を今後も国がカバーできるとは到底思えない。今後は更に高齢化が進み、医療費は莫大にかかってくる。医療に効率化が求められ、看護師の労働環境は更に悪化することは目に見えている。
その2つの問題点①高齢化による医療費の増大リスク②現場をより効率的に回したい国の思惑、を解決するために僕が具体的に考えるのは、看護師の能力を活かした予防医療や看護師による健康相談である。
もうここまでくるとかなり胡散臭いがここまで読んだのなら最後まで読んでほしい。
さっきも言ったような、めちゃくちゃ勉強していたり、患者さんに寄り添うのがとても上手な看護師はたくさんいる。
そうした看護師がもっと世間に、予防医療を広めていったら良いと思う。
僕は救命で勤務しているが、時間がなかったり、お金がなかったりして徐々に健康を損ない、結果的に心筋梗塞や脳出血などの大きな病気を発症して救命に運ばれてくる患者さんは多い。
この現状を僕は「貧困が産む負のスパイラル」だと思っている。
この貧困というのは主にお金のような財産を指す言葉だが、単純にお金だけではなく知識や人間関係も財産に含まれる。
例えば、お金があっても健康に対する知識がなくて、病気になってしまう人もいる。
はたまた、健康に対する知識があっても孤独を感じて精神を病んでしまった結果、入院する人もいる。
こうした方々のサポートを積極的に行うことで、入院する前に問題が解決できたり、若くして大きな病気を持つような患者さんを減らすことができるのではないだろうか。
じゃあこうした相談やサポートを具体的に誰ができるのかというと、ここで看護師の出番だと思う。
看護師は医療の勉強はしているし、入院している患者さんのお世話やコミュニケーション能力に長けている。となると、看護師が適任だろうという結論に至る。
で、ここで出てくるのが「質の担保はどうするのか」問題。
大抵看護師のチャレンジはこれが理由で潰されるのだが、そこは大々的に始めるのではなく小規模に始めたらいい話。
少しずつ広めていけば何ら問題はない。
一気にやろうとするから管理が難しくなるし、足並みが揃わなくなる。小さく始めて大きくする。
そんで、ここで必要になってくるのが世間一般の方々の「看護師の仕事ぶり」や「看護師が持つ医学的知識」に対する理解だろう。それがないと看護師に相談する人もいないし、そうしたサービスを使おうとも思わない。
アメリカではNP:Nurse Practitioner(上級看護師)がいる。このNPたちは開業ができ、医師が経営している病院より安い値段で受診をすることができる。アメリカでは一般的なこのNPだが、日本は全くと言って良いほど看護師に対する理解がない。だからまず看護師を ” ちゃんと ” 知ってもらうことから始めないといけない。
となってくると、大事なのは看護師が自分の仕事だったり、日々勉強していることについて身近な友人や家族に語ったり説明することだと思う。
120万人の看護師がいるのだから、看護師1人が10人の人に自分の仕事についてだったり、勉強していることについて話すだけで、1200万人の人々(日本人10人に1人)に看護師の仕事について理解してもらうことができる。
もうここまでくると夢物語だが、その一端として、僕は各種SNSで看護師の仕事についてアピールをしている。
看護師が自分たちの仕事についてしっかりとアピールをして、積極的に行動を起こせば医療は変わると思っている。
これは数も知識も桁違いの「看護師」だからこそできることだと思う。
こんな発信をすると
看護師なんかがそんなことしていいのか?
と、聞こえてくるように思う。
だけど僕は、権利は勝ち取りに行くものだと思う。
いつしか看護師が病気の人、健康な人、関係なく、人々の生活になくてはならないような存在になる日が来ることを願いながら日々発信を続けていこうと思う。
一緒に頑張りましょー!!笑
とても長い記事でしたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?