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「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第23話

ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂の4期生になっていた××(現世名:○○)。
7th year birthday Liveを終えた乃木坂46一同。
そして今日も○○は乃木坂の4期生として活動に励む。

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時は3月初旬に遡る。

今野「というわけで、4期生には舞台をやってもらいます。」

4期生たちは隣と顔を見合わせてザワザワとし始める。

今野「えー、名前は、『三人のプリンシパル』、と。」

○○「三人のプリンシパル…。」

○○は舞台と聞いて何のことか思い出せていなかったが、タイトルを聞いて思い出した。

『三人のプリンシパル』。

設定としては、演劇『ロミオとジュリエット』を行うためのオーディションを行い、そこに4期生たちが挑むというもの。

ここでこの舞台のポイントとなるのが、このオーディションというのは、舞台の中でのみ行われるものではなく、舞台を観に来た観客全員が審査員となり、メンバーたちを評価、投票、合格者を決定するという、リアルオーディションになっているのだ。

オーディションが行われる配役は三つ。

ロミオ。ジュリエット。そしてその他すべて。

三人のプリンシパルというタイトルの通り、選ばれるのは、三人。

舞台の後半ではその当選したメンバーによって実際に演劇『ロミオとジュリエット』が披露されるが、誰が選ばれるかわからないので、当人たちも本当に直前まで自分が出演するのか否かわからない。

つまり、合格した際に備え、その役のセリフを全て覚えておく必要がある。

そして、そのうえで、その努力が無駄骨に終わる可能性もある。

ゆえに、全員が努力を無駄にせぬべく、当選に向けて必死にこれに挑む。

しかもこの公演は複数回ある。

毎回だれが当選するかわからない。

全てはその場に居合わせた観客たちにかかっている。


というのがこの『三人のプリンシパル』の概要だ。

今はその舞台のガイダンス中というわけだ。

清宮「ん、じゃあ自分が立候補する役一つだけ覚えておけばいいってこと?」

今野「いいえ違います。覚えるセリフは三役全部です。」

○○「は!?」

今野「公演は複数ありますが、皆さんには最終的に複数の役に立候補してもらいます。そうじゃないと、一人一役立候補をずっと続けてたら当選者が偏る可能性があるだろ?そうしたら後半のパートに出演できる可能性にも偏りが出てくる。これはそのための救済措置でもあります。」

柴田「それで、全役分のセリフの暗記を?」

今野「はい。」

その一連の会話に4期生たちはザワザワと困惑し始める。

✕✕(おいおい、プリンシパルってこんな鬼畜な舞台だったのかよ…。)

人役分のセリフを覚えるだけでも手一杯なのに。

今野「えー、次のページを見てください。公演の日程が書いてあります。」

一同が資料をめくる音が響く。

✕✕(げっ…これが公演の日程…!?多すぎるだろ…!?)

期間は4/9~4/21まで、昼公演がある日もあり、計16公演。

今野「…というわけで、皆さんは自分の立候補する役を決めてもらって、そのセリフの全てを暗記してもらいます。そのうえで、皆さん自分が出演すると決まった前提で行われるレッスンを受けてもらいます。」

柴田「えっ…。」

矢久保「できる気がしない…。」

田村「大丈夫かな…。」

✕✕(…これ、意外とやばいかも…。)


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時は現在。4月。

ここ数週間、4期生たちはこのプリンシパルに備え、空いた時間はすべて台本とにらみ合う日々が続いた。

同じ役を臨む者同士が集まり、暗記の具合を確認するさまも見受けられる。

空き時間、というのは、舞台のレッスン、および、ミニライブのレッスンの空き時間である。

そう、ミニライブ。

このプリンシパルは乃木坂主催のイベントなため、第一部オーディションパート、第二部公演パート、そして第三部では4期生のミニライブが行われる。

このレッスンも並行で行われるのだ。

バースデーライブ直後の大仕事。

4期生一同、必死に取り組んでいた。

体育座りをして台本を眺める○○の横に、同じく台本を持った遠藤が座る。

遠藤「お疲れさま。」

○○「さくちゃん。お疲れ。」

遠藤「〇ちゃんは初日は何の役に立候補するんだっけ?」

○○「私はロミオに立候補するよ。」

遠藤「え、男の子役やるの?すごいなぁ…。」

✕✕(一番慣れてるからな…。)

○○はこのプリンシパル期間、できるだけこのロミオ役に多めに立候補するつもりだった。

✕✕(って言っても、こんなキザなセリフ全然言う機会なかったからこれはこれでハズイ部分あるけど…。)

○○「さくちゃんは何役やるんだっけ?」

遠藤「私はその他全部役やるよ。」

○○「えー、そうなんだ。他の役はやらないの?」

遠藤「うーん、ロミオ役は少し興味あるけど…。」

○○「ジュリエットは?」

遠藤「なんか、ヒロインっていうのは似合わないし、男の子役もなんか違うし…。」

○○「そんなことないよ、むしろヒロインっぽさの方が強いと思うけど。さくちゃん可愛いもん!」

遠藤「えへぇ…?そんなことないよぉ…。」

笑って照れながらも遠藤は必死に否定する。

どこまでも謙虚というか、自尊心が低いというか…。

遠藤「私は、〇ちゃんのジュリエット役も見てみたいけどなぁ~。」

○○「えっ…。」

そこにタイミングよく会話が聞こえてくる。

田村「ここさ、『二人はキスをする』ってあるじゃん。」

金川「あ~そこね!実際はうまく隠れるから顔を近づけるだけでいいって言われたけどさ~!」

田村「キスしてるよう見せかけるぐらいだから結構近づくじゃん!?もう私本番ドキドキしてできる気がしなくて!」

金川「さやも~!」



そんな会話を股聞きした○○と遠藤。

○○「…💧」

遠藤「なんか、今後レッスンの時意識しちゃいそう…。」

○○「大丈夫だよ、実際にするわけじゃないんだから…。」

遠藤「……。」

○○「こっち見て顔赤くしないの!!💦」


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そして迎えた、本番。

会場たるサンシャイン劇場には公演を見に来た観客、いや、審査員たちが開演の時を待っている。

矢久保「うわぁ、緊張するぅ…。」

賀喜「誰が選ばれても恨みっこなし!楽しんでいこう!」

「「おーー!!」」

のー!ぎゅ!ぎゅー!せーの!努力!感謝!笑顔!うちらは乃木坂上り坂!46!!

お見立て会の時は全くそろわなかった円陣も、少しだけそろうようになってきた。

そして、開演。

「ではぁっ!!一人ずつ、自分が立候補する役と、セリフを言ってみろぉっ!!」

✕✕(毎回この俳優さんの演技がガチすぎて怖いんだよ…。)

「次。○○。」

○○「はい!○○ ○○!ロミオ役に立候補します!」


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初日はロミオ役が賀喜、ジュリエット役が北川、その他全部役が早川となった。


そして2日目の公演にて。


《ロミオ役 ○○ ○○》


○○「えっ…?」

賀喜「やったじゃん!!」

田村「おめでとー!!」

✕✕(マジか…。)

2日目にして○○が、他のロミオ立候補者を出し抜き、○○がロミオ役に抜擢された。

まさか自分を選ぶ人間がそんな、当選するほどいると思わなかった。

いや、当選するつもりがなかったかと言われれば、違うのだが。

そして肝心なのは、相手役。ジュリエットは誰か。


《ジュリエット役・掛橋沙耶香》


掛橋「…!」

掛橋も心底驚いたような顔をする。

そして、○○と目が合う。

掛橋は○○にグッとガッツポーズをしてくれた。


《その他全部役・早川聖来》


××(聖来はまたその他役に当選か…。)

といっても、それは皆んなが納得する結果だった。

このプリンシパルの時点で、早川の演技は圧倒的な物だった。

流石、その後も女優として幅広く活躍するだけある、と××は感じていた。


そして、第二部。

『ロミオとジュリエット』公演。

✕✕(若干衣装だから派手目ではあるけど…うん、やっぱ感覚的に落ち着くね、男の恰好っていうのは。)

バァン!!

○○「!?」

掛橋「恋も知らないのにもう結婚の話だなんて!!!!」

小道具を叩きつけ、声を裏返し大声をあげて狂気的な演技を見せる掛橋。

お姫様の格好はとても可愛らしいのだが…。

○○「…俺今からアレに告白しに行くの…?」

早川「まぁまぁ…。あ、ほら、出番やで、行ってき!」

○○「あ…お、おう!」

早川(男役、なりきっとんなぁ。)





そして、例のキスシーン。

○○「では、動かないで。祈りの成就を見るまでは…。」

○○は己の顔を極限まで掛橋の顔に寄せた。

舞台の観客には○○の背中が見えており、上手くキスするフリを隠せている。

ただ、やはり何も意識しないわけがなく。

想像して欲しい。

仮にもキスする瞬間を大勢の前にお披露目しているのだ、と。

たった一瞬、たった一瞬だけだったが、○○には1分、いや10分にも感じる長さだった。

そしてお互いに何事もなく芝居を続ける。

××(カロリー使うわぁこれ…。)

ちなみに、本編のキスシーンの回数は4回である。

そしてちなみに、××はキス経験は…ない。


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そして、また別の公演日。


《ロミオ役・賀喜遥香》

××(本当にかっきーはロミオ適正あるよなぁ…。)

賀喜の低音と持ち前の少し男混じりな振る舞いは、その日舞台を見にきた観客たちの心を数回に渡り掴んだ。

公演を観に来る人間は毎公演入れ替わるわけだから、これは共通認識というか、誰がどう観てもというやつだろう。

そして。


《ジュリエット役・○○ ○○》


○○「は…?」

不意にモニターに表示された自分の名前。

○○は困惑を隠せなかった。

何故なら、受かると思っていなかったのだ。

仮にも中身男だし?もっと別に適正のある可愛い子沢山いるし?

本気で演技こそしたものの、ロミオ役に疲れたが故に少し休息を取ろうと軽い気持ちで立候補した役だった。

当選は想定外。

××(おいおい、どうするよ、俺あんなザ女みたいな役やりきれるか…?)

そして相手役、ロミオは…賀喜。

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先日の公演では自分から掛橋にキスをする側だったが、今度は賀喜からされる側。

賀喜「では、この唇が祈ります。どうかこの祈りを、お許しいただきますよう…。」

○○「聖者の像は動きません。祈りの心を汲み取るまで…。」

賀喜「では動かないで。祈りの成就を見るまでは…。」

そして賀喜の顔が接近してくる。

その顔はとても凛々しく、艶めかしく…。

××(そんな顔で見てくるなよ…!?)

くどいようだが、するのはキスをするフリである。

しかし…。

○○「…ッ!」

賀喜の顔が離れていく。

××(マジでドキドキする…。)

××はなんとなく、賀喜がイケメンメンバーとして評される理由がわかった気がした。

××(てか、される側って、こういう感じなのかよ…。)

キスシーンは、残り3回。


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そして、またまたある日の公演。

《その他全部役・○○ ○○》

○○「嘘ぉ!?」

賀喜「すごいじゃん○ちゃん!三役制覇!」

○○「いやぁ…。」

××(どうしてこうなった…。)

ロミオ役、ジュリエット役、どちらも変にエネルギーを使うのであれば、それなら三役目、その他全部役だと立候補した。

××(何で当選するんだよ…。)

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○○「それでは、ばぁやは行って参ります…!」

田村「ロミオ!やっと会えた!」

賀喜「あぁ、我が愛しのジュリエット!!」

賀喜「お願いします神父様!」

北川「神父様〜!」

賀喜「どうしましたか神父様!」

その頃舞台裏。

○○「はわわわわわ…💦」

××(無理無理無理無理!着替えが終わらないって!!)

その他全部役。

それは文字通り本当に全部なのだ。

○○はばぁや役をやってはけた後、僅か数十秒後に今度は教会の神父として舞台に上がらねばならなかった。

そして神父としてまた舞台からはけた後、今度はロミオの同僚役として舞台に上がる。

役を切り替えるのも難しければ、迅速な早着替えが要求される役。

○○「やぁお二人さん!まさか出会ってすぐに結婚に至るとは!」

賀喜「おぉ、神父様!」


××(次の公演のオーディション部、手抜いてやろうか…?)




そんなこんなを繰り返し、4期生たちは「三人のプリンシパル」全16公演を無事に終えた。



「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」

第23話 終

続く




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