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「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第27話

ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂4期生になっていた✕✕(現世名:○○)。「4番目の光」のMVを撮り終えた矢先、○○は賀喜に呼び出されて…。

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賀喜「〇ちゃんさ……あなた、誰?」

○○「…えっ?」

賀喜の目はまっすぐ○○を見つめている。

✕✕(待て待て待て…今こいつなんて言った?『あなた誰』?まさか、バレたのか?俺が○○じゃないって?いやまさか…。)

○○「は、ハハッ…何言ってんの、○○だよ、〇〇 〇〇。かっきーまで記憶喪失になっちゃったの?」

賀喜「○ちゃんさ、変わったよね。」

〇〇「えっ…?」

賀喜「記憶を失ってるからわからないかもしれないけど、私オーディションの時から○ちゃんと仲良かったんだよ。」

〇〇「へ、へぇ〜…そうだったんだ…。」

賀喜「その時と今、性格というか、雰囲気だいぶ変わったと思うんだ。」

〇〇「たまたまじゃない?それか、例の記憶喪失が性格にも少し…。」

賀喜「〇〇ちゃんはトイレのことはトイレって呼んでたよ。でも今の○ちゃんは『お手洗い』って言ってるよね。それって記憶喪失で変わるものかな?」

〇〇「うっ…。」

××(そうだったのか…。にしても細かいところを覚えてるやつだな…。)

賀喜「それに、男子トイレに入ろうとしたことも何回かあった。普通の女の子ならまずありえないよ。」

✕✕(やっべぇ…。言い返せねぇ…!)

賀喜「それに、色々知りすぎ。普通のメンバーなら知り得ないことばっかり。まるでスタッフさん達の事を徹底的に調べ上げたみたい。」

✕✕(頭いいとは聞いてたけどここまでとは…!)

賀喜「このことから導かれる結論はただ一つ…!」

✕✕(…ちょっとこの状況楽しんでるなこのアニオタ。)

✕✕(とか言ってる場合じゃねぇけど…!)

賀喜「〇ちゃん!今のあなたは偽物!男が〇〇ちゃんに変装して成りすましてるのよ!」

✕✕(ん…?)

なんか雲行きが怪しくなってきた。

賀喜「乃木坂に潜入して何のつもり!?本物の〇ちゃんはどこ!」

〇〇「かっきー、ちょっとまtt」

賀喜「さぁ、その正体を見せなさい!この偽物!」

賀喜は〇〇に迫ると頬を強く引っ張り始めた。

〇〇「いいいたたたたたっ!痛い痛い痛い痛い!いったいよぉっ!!」

〇〇は勢いよく賀喜を振りほどく。

賀喜「あれ?私の推理ではこうやって頬を引っ張れば変装マスクが取れて正体が…。」

〇〇「アニメかっ!!」

賀喜「いやほら、怪盗キッドとかそうじゃん?だから…。」

〇〇「んーなわけないでしょうがっ!」

✕✕(そういや賀喜遥香って変なところでポンコツだったな…。)

田村「かっきー!〇ちゃーん!どーこー!帰るよー!」

校舎の入口のほうから田村の声が聞こえる。

〇〇「ほーら、まゆたん呼んでるよ、馬鹿な事言ってないで帰ろ。」

賀喜「はっ!もしかしてキッドと工藤新一みたいに変装マスクがいらないタイプの変装!」

〇〇「だからアニメか!!」

✕✕(ったく、とんだ迷探偵だなおい…。まぁ、一時はどうなるかと思ったが…。でも、わかるわけないよな。)

実は未来からタイムスリップした挙句魂だけこの〇〇の体に入り込んだ男なんです、なんて。

誰があてられるだろうか。

いやしかし、変に疑われるような挙動をしていたのは事実。

これからはもう少し挙動に気をつけねば、と考える✕✕だった。


賀喜「…。」

賀喜は〇〇に目を向ける。

〇〇「まゆた~ん、かっきーにつねられた~!」

田村「えっ!?なんで!?」

賀喜「今回は外れたけど、絶対なんかある…。記憶喪失だけじゃ片付けられない何かが…。必ず突き止めるからね。」







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数日後。乃木坂の事務所。

〇〇「…個人PV?」

マネージャー「そう、他の子たちにも話してあるんだけど、今回のシングルの特典映像は4期生の個人PVで行くの。」

〇〇「あー…なるほど。」

✕✕(知ってたけど…。)

そう、23枚目シングルの特典映像は4期生の個人PV。

しかも、ほぼ全てのPVが共通して、それぞれいろんな世界や設定で暮らしていたメンバーが最後にはアイドルになるという、少しだけ4期生の加入とつながるストーリーとなっている。

例えば、掛橋は捨て猫の役のPVだったが、最後にはその段ボールから抜け出し、「アイドルになります」という置手紙を残していなくなってしまう。

遠藤は、アイドルになることが決まり上京することになったため、仲のいい男の幼馴染とお別れをしなければならなくなった切ないヒロインのPVとなっている。

一応。まだ未来だけど。


マネージャー「それでね、〇〇にやってもらう個人PVの内容が決まったから、その説明をね?」

〇〇「え、もう決まってるんですか?」

マネージャー「うん、演出家とか脚本家とかの人と話し合って、もうシナリオはこっちで決まってるの。」

〇〇「ほえー…。」

マネージャー「で、これがそのシナリオなんだけど。」

マネージャーはクリップ留めされた冊子を渡してくる。

〇〇「え、本当にこれやるんですか…?私が…?」



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こうして、〇〇の個人PVが二日後に撮影された。

スタッフ「以上で撮影全て終了になります!お疲れ様でした!」

〇〇「ありがとうございました、お疲れさまでした~!」

〇〇はスタッフからの拍手に迎えられながら撮影を終了した。

そして監督から差し出された手をしっかりと握って礼をする。

監督「〇〇さん演技力高いね!これからどんな風に活躍するのか楽しみだよ!」

〇〇「え~!本当ですか!ありがとうございます!」

監督「これからも頑張ってね!」

〇〇「はい!頑張ります!」

スタッフ「じゃあ〇〇さん、移動車こっちなので、ご案内します…!」

〇〇「あ、はい!では皆さんお疲れ様でした!ありがとうございました~!」

スタッフに案内され、マネージャーの待つ移動車に乗り込む。

マネージャー「お。お疲れ~。」

〇〇「お疲れ様です~。」

マネージャー「どうだった?うまくできた?」

〇〇「マネージャーさん。」

マネージャー「ん?」

〇〇「私は一体今日何を撮ってたんでしょうか?」

マネージャー「アッハッハッ!まぁまぁ、個人PVってそういうもんだから!先輩たちのやつだってそんな感じだったでしょ?」

〇〇「まぁそうですけど…。笑」

そう、乃木坂の個人PVの魅力でもあり特徴なのは、その謎すぎる脚本にある。

ちゃんとしているシナリオなほうが正直少ない。

本編を通しで見ても理解が追い付かない視聴者も多い。

見ているだけでそんな唖然とする内容なのだから、撮影現場は、それはもうシュールだった。

〇〇もシナリオをもらった時から撮影をしているその瞬間まで、何回「なんだこれは」と思ったかわからなかった。

✕✕(本当にあれで大丈夫だったんだよな…?あれがどんな風に仕上がるのか想像つかねぇ…。)



〇〇「あ、そういえば、この車どこ向かってるんでしたっけ?まだなんかこの後仕事ありましたよね?」

マネージャー「うん、これから事務所に向かうよ。この後は次のライブの説明があるからね。」

〇〇「次のライブ?」

マネージャー「そう、今回のシングルでは発売を記念したライブを行うのよ。」


「『Sing Out!発売記念ライブ』。」





「目が覚めたら乃木坂4期生の〇〇でした」

第27話 終

続く。


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