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「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第15話

ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂4期生になっていた××(現世名:○○)。自分に起こった事象を受け入れながら、艱難辛苦を乗り越え、無事お見立て会を成功させる事が出来たのであった。

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《12月》

○○「よいしょっと…。」

○○はソファに座るのも一苦労だった。

原因は、お見立て会の時に捻った足。

お見立て会後、マネージャーさんに足が痛むようだと話し、北川とマネージャーさんの介護のもと車への乗り込みと帰宅を行った。

他の4期生達は、○○が怪我したことを知らない。

○○が2人に口止めをしたからだ。

北川は自分たちを頼ってと言ったそばからそんなお願いをされて不服そうだったが、○○にとってはそれを踏まえてでもやはり、他の仲間達に心配をかけたくなかった。

結果から言うと、○○は重めの捻挫だった。

細かい病状はあまり覚えていないが、どうやらアクロバットで捻った時点では軽めな方だったらしいが、その後ダンスをした事でそれを悪化させた可能性が高いと言う。

医者からこっ酷く叱られた。

そして、この脚でよく踊ったものだと感心と呆れを受けた。

○○は包帯と固定器具をつけられて帰宅した。

本当は本格的なギプスを勧められたが、○○が断った。

ソファに座るなどの動作一つ一つに苦労するのは、この固定器具と包帯による動きの制限によるものだった。

そして、お見立て会から数週間、○○を含め4期生達は仕事という仕事はあまりなかった。

強いて言うなら特にここでは言うまでもない書類の記入や年明け後のスケジュールについてのアナウンスがあった程度。

理由はもちろん、この2018年をもって卒業する4人の一期生、特に若月佑美と西野七瀬の卒業イベントに力を注いでいたからであろう。

足を怪我している○○としては、自分の怪我が他に明るみにならないと言う意味で、とても助かった期間だった。

いや、学校には行った。

○○は無理矢理学校指定の上履きを履いていた。

包帯と固定器具を巻き、その上から靴下を履いて足を隠して。

その足の太さと歩きのぎこちなさから、クラスメイト、特に遠藤、賀喜、金川にはかなり不審がられた。

○○は気にしなくていいと言ったが、果たして信じてくれただろうか。

現状、○○の怪我の事を真に知っているのは、マネージャー、担任と体育の先生、そして北川だ。


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○○「あー…お見立て会が終わったら元の世界に戻るかもとか思ってたけど、そんなことはなさそうだな…。」

よくある異世界に行く系の漫画なら、その世界におけるミッションを達成したらまた半強制的に元の世界に帰る、というのが定番だと考えた○○、もとい中の××は、それがお見立て会であると考えたが…。

お見立て会の翌日、そして翌々日、今日に至るまで、普通にこの○○の体で、○○の部屋で目を覚ました。

○○「いよいよずっとこのままである場合を想定しなきゃかなぁ…。」

ピロン

○○「ん?」

携帯がメッセージの着信を告げる通知音を鳴らす。

○○「ふっ…!ぐっ…届いた!」

携帯を取るのまで苦労がかかる。

いや、今のは足を動かしたくないとする怠惰か。

メッセージの送り主は…北川だった。

北川『足、大丈夫だった?』

○○『平気。軽く捻っただけだった。心配かけたね』

北川『本当に?』

○○『本当に』

北川『信じます』

そんな軽い会話を交わした。

これで万が一北川がみんなに喋っても軽傷で通るはずだ。

この間、乃木坂の先輩達はいろんなメディアに出ていた。

22枚目シングル「帰り道は遠回りしたくなる」のプロモーション、およびそのパフォーマンスの為だ。

○○も可能な限りそれらをチェックした。

随分懐かしい映像だった。

まだ色々ぎごちなかったり、少女感が漂う3期生の喋り、パフォーマンスが、懐かしの映像ではなく「今」として披露されている光景は、未来から来た××には不思議なものだった。

ある日、また○○のスマホにメッセージが来た。

○○「む…?」

××(え、マジで…?)

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そして、12月30日。

この日は「輝く!日本レコード大賞」が放送された。

大抵の学校は冬休みに入っていたこの日、4期生達は各々の家からその番組を視聴していた。

『日本レコード大賞は!乃木坂46の!「シンクロニシティ」です!』

その言葉にスポットライトを当てられたメンバー達が声を上げ、抱き合って喜んだ。

4期生のグループLINEも通知が鳴り止まなかった。

田村『乃木坂が大賞だー!!』

掛橋『やったー!』

清宮『見てる見てる!ホントに凄い!』

金川『2年連続!!』

云々…と。

そして○○はスマホをテーブルに置き、そんなテレビの映像と未だ流れるLINEのトークを眺め、一言つぶやく。


○○「…知ってたよ」

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大晦日。夕方。

○○は送られてきた住所を頼りに、田村の家に来ていた。

スーパーで買ってきた物を入れた袋を提げて。

脚は、直ってはいないが普通に歩けるまでには回復した。

軽く湿布と包帯で大丈夫なぐらいには。

ピンポーン

ハーイ

ガチャッ

田村「お、○ちゃん、やっほー!」

○○「やっほー、まゆたん」

○○「頼まれてたもの、買ってきたよ」

田村「ありがと〜!ささ、入って入って!」

××(だよね〜…。)

○○「お邪魔します…。」

××は小学生の頃以降、女子の部屋に入ったことがない。

いや、この世界に来た時に○○の部屋にいた事はノーカンとして、だ。

ただメンバーの家に遊びにきた。

構図はそれだけなのだが、××視点、圧倒的背徳感。

××(俺が中身男だとはバレてはいけない理由がまた一つ増えてしまった…。)

○○「ん、靴多いな…。」

田村「まぁそれは仕方ないよ〜笑」

だが整頓してある。しっかりしている人がいるようだ。

○○が中に入ると、中には遠藤、賀喜、金川、早川、田村、掛橋、柴田がいた。

まあ要するに、清宮と筒井の中学生コンビと北川、矢久保以外は全員だ。

中学生コンビは年齢上で上京はしてないので今日は実家、北川と矢久保は受験との兼ね合いと、やはり家柄から実家にいるだろう。

にしても、広めのマンションの一室のはずなのだが、ここまで人がいると随分わちゃわちゃしていると言うか、窮屈だ。

○○「急に年越し会をやろうなんて言われた時はびっくりしたよ」

田村「だって1人で年越ししたくないでしょ〜?」

柴田「で、上京してきたメンバーを集めて年越ししようってこと!」

○○「こんだけいればそりゃこんなに買わされるよね」

○○の手には大きめのスーパーの袋と荷物。

それをキッチンにドカッと置く。

そばの材料。多めに10人前。

田村「みんな〜!年越しそば作るよ〜!」

みんな「おー!」

と、宣言したものの、遠藤、賀喜、掛橋、金川が動かない。

田村、早川、柴田が動く。

○○「アレ?みんなは?」

金川「私たちは食べ専!」

賀喜「自炊あんまりしないし」

掛橋「全員でキッチンは入らないしね〜」

遠藤「みんな頑張れ〜」

○○「あ、じゃあ私もそっち側に…」

そこでガシッと早川に腕を掴まれる。

○○「えっ?」

早川「何言うてんの?○ちゃんはこっち側やで?」

柴田「料理経験ちょっとはあるみたいな話してたもんね?」

××(してないしてない…。)

田村「買い物してもらったとこ悪いんだけど、もうちょっと手伝って!」

○○「!?」

××(俺、自炊したことないんだけど!?)

すると田村がコソッと耳打ちしてくる。

顔が近くなることに内心××はドキッとするが…。

田村(今座ってる子達ざっと見てみて?)

○○は言われた通り彼女らを眺める。

満面の笑みを○○に向ける食べ専組。

田村(あの子達に任せた方がいいと思う?)

…無理だ。

しっかりしてる賀喜はともかく残りのメンツは期待ができない。

○○「…わかったよ…。」

田村「よし決まり!」

早川「早いとこ始めて紅白見よ〜!」

柴田「○ちゃん、ありがとう!」

××(どうしてこうなった…。)

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柴田「このまま油が沸騰するまで待ったらかき揚げ入れていいんだよね〜!?」

○○「油は沸騰しないよ!?そしてそれはかき揚げの元じゃなくてただの野菜こねた何かでしょ!?」

田村「そばに入れるネギってどのくらいだろう〜?」

○○「少なくともそれだとデカすぎるのは確かだよ…。」

早川「○○ちゃんは色々知ってるなぁ〜」

○○「あぁ…まともに料理出来てるのはせーらだけだよ…。」

○○「てかゆんちゃんとまゆたんが知らなすぎる!良く料理側に立候補したな!?」

柴田「○が怖い〜!」

田村「ねぇ、何このジューって音…?」

○○「え?」

○○が隣を見ると、柴田と田村に注意を向けるがあまり、自分の担当箇所である麺を茹でていた鍋がその水をボコボコと溢れさせ、コンロの上に滴っていた…。

ジューッ!シューーーッ!!

○○「わああぁぁっ!?!?」

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何とか特に問題のない年越しそばを作り上げることができた一行。

掛橋「○、ずいぶんぐったりだね?」

○○「何故に大晦日にこんなに疲れさせられなきゃいけないんだ私は…。」

田村「じゃあ手を合わせて!いただきます!」

「いただきます!」

賀喜「あ、ほら、テレビテレビ!そろそろ始まるよ!」

田村「あ、そうだった!」

テレビをつけると、丁度紅白歌合戦の開幕を告げたところだった。

そして、乃木坂のパフォーマンス。

乃木坂46西野七瀬最後のテレビ出演。

「帰り道は遠回りしたくなる」のパフォーマンスを皆で見ていた。

早川「やっぱり、乃木坂ってええなぁ…。」

田村「先輩達、みんな綺麗…。」

柴田「私達、こんなすごい先輩たちの後輩になったんだね…。」

賀喜「私達も、こうやってここに立てるかな…。」

金川「立てるように頑張らなきゃね」

掛橋「紅白かぁ…。緊張しそう…。」

遠藤「大丈夫だよ、みんなで頑張ろ?」

○○はそんな会話を見て微笑みながらもため息をつく。

××(大丈夫だよ、みんなは来年再来年、この舞台でしっかりとパフォーマンス出来る)

××(今一番それを心配しなければいけないのは…俺だ)

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MC「さぁ!間もなく年が明けます!10!9!8!…」

柴田「みんな、手繋ご!手!」

その一言を聞き、みんなすぐに隣の人と手を繋ぐ。

○○も田村、早川と手を繋いでいた。

MC「3…2…1!」

「「せーの!!」」

その合図でみんなでジャンプする。

「「ハッピーニューイヤー!!」」

柴田「イェーイ!」

早川「みんな今年もよろしくなぁ〜!」

賀喜「よろしく〜!」

金川「さくちゃんちょっと跳ぶの遅れたでしょ?」

遠藤「えっ!?ちゃんと跳んだよぉ!」

掛橋「アーハハハハッ!」

○○「沙耶香、平気…?ずっとゲラ発動してるけど…。」

田村「多分じきに戻るよ。お酒飲んでるわけじゃないし」

○○「…そっか」

そこでまた○○はフーとため息をつく。

××(年越しちゃったよ…。○○の状態で…。しかも、2回目の2018年の年明け…。)

○○はそんなことを考えていたが、すぐに首を振った。

こんなことを考えていてもしょうがない。

今はこの祝福ムードを楽しもう。

○○「さ、じゃあこの後テレビある程度見たら解散にしよっか?それともここで寝る?」

田村「あれ?言ってなかったっけ?この後また乃木坂のパフォーマンス見た後はみんなで初詣だよ?」

○○「え、マジ…?」

2019年、4期生にとって怒涛の一年が始まる…。



第15話 終

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先日の話でも言った通り、4期生は3月までは上京しないように言われててほとんどのメンバーが地元にいたのでこの話のような展開は一切存在しないんですよね…。1から100まで私の創作です。

でもいいじゃないですか、こんな話があったって。

だってこれ、妄ツイだもの…。

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