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「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第30話

ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂46の4期生になっていた✕✕(現世名:○○)。
23枚目シングル発売記念ライブが迫る中、3期生たちと共に乃木坂工事中の富士急ハイランドのロケへと駆り出された。
今日の話は、その続きからスタートする。


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遊園地ロケのさなか。

スタッフ「ではここで一旦しばらく休憩となります!お疲れ様です!」

その言葉を合図に、各々が園内の散策にいったり昼食を取りにフードコートに行ったりと、解散し行動する。

4期生はといえば、先輩たちとコミュニケーションをとろうと、3期生たちの中に飛び込んでいったり、スタッフさんと確認事項の話し合いをしたりしている。

✕✕(さて、俺もどこか行くとするかな…。ん?)

その中で一人、誰と話すでもなく、一人とぼとぼとどこかに行く人影があった。

○○「…。」




ピッ。ガコン。

自販機でコーヒーを買って、その横のベンチに座り込む。

「はぁ…。」

そして一つ、ため息をつく。


山下「…。」

彼女は乃木坂46の3期生、山下美月であった。

彼女は、この頃仕事に悩みが尽きなかった。

さっきもカメラの前ではリアクションに徹し頑張ってはみたが、内心では気分が晴れてはいなかった。

すると、また自販機でがこんと飲み物を買う音がした。

視界にも写らなかったその人影を、最初は全く気にしていなかったが、その人は美月のすぐ隣に座った。

美月が隣に目をやると。

美月「あなたは確か…○○ちゃん…?」

○○「覚えていてくださり光栄です。」

美月「そりゃ覚えてるよ~、可愛い後輩だもん。どうしたの?こんなところで。」

○○「山下さんの顔がひどく暗かったので、心配で。」

美月「えっ…?」

○○「…山下さん、何か悩んでいるんじゃないんですか?」

○○がそういうと、美月はうつむいて黙ってしまった。

○○「まだ付き合いの浅い後輩ですが、良ければ話してくれませんか?」

美月「そんなあからさまに顔に出てたかなぁ……実は最近ね、ありがたいことにドラマとかでいろんな仕事もらえてるんだけど、その分グループの仕事に参加できなくなってるなって。」

××は知っていた。

山下美月はこの時期、色んなドラマに引っ張りだこになる傍ら、過労気味になった上、グループ全体の活動に欠席する率も上がり、思い悩んでいたことを。

美月「いま私、乃木坂に何ができてるんだろ…。なんかもう、頭がぐちゃぐちゃしてきちゃった。今週末、選抜発表もあるらしいの。そこから23枚目の活動も本格的に始まるけど…。」

そこまで言ったところで、○○が口をはさんだ。


○○「少し、乃木坂を休んだらどうですか?」

美月「ハハッ、そんなわけにはいかないよ、ありがたいことに、私には期待しているたくさんの人たちがいる。その人たちに迷惑をかけるわけにはいかない…。」


○○「その人たちが期待しているのは、本当に今の山下さんの姿ですか?」

美月「え…?どういうこと?」

○○「私が山下さんに仕事を依頼する立場だったとしたら、体を壊してまで仕事をしてほしくなんかありませんよ。それで山下さんに何かあったとき『やったー』ってなると思いますか?」

美月「…。」

○○「それに今そうやって無理して、いつか本格的に乃木坂を続けたくても続けられなくなったら、未来で山下さんの活躍を待ってる人みんなに応えられなくなってしまうんですよ?元も子もないじゃないですか。」

美月「それは…。」

○○「私たち4期生は、先輩たちを尊敬しています。もちろん山下さんもです。」

美月はうつむいたままだった。

○○「私たち後輩が誇りをもって自慢できる、後輩の前で胸を張っていられるような先輩でいてください。」

とそこに、番組スタッフがやってくる。

スタッフ「あ、いたいた!○○さーん!ちょっといいですか!」

○○「あ、はーい!今行きまーす!」

○○は立ち上がると、美月の方を振り返る。

○○「山下さんが、冷静で後悔のない判断をしてくれると、信じています。失礼します。」

美月「あ…。」

美月は、自販機の反射で映った自分の顔を見て、今一度考えるのだった。

そして。



その日の夜。美月の自宅。

ジャーーー……。

美月「…。」

キュッ…。

美月が蛇口を閉め、風呂から上がる。

タオルで頭を拭きながら、夜の窓に映った自分の顔を今一度眺める。

そして、○○の言葉が脳内で反芻される。


(私たち後輩が誇りをもって自慢できる、後輩の前で胸を張っていられるような先輩でいてください。)


美月は一つため息をつくと、携帯を手に取った。


美月「もしもし、山下です。……はい。はい。実は相談したいことがありまして…。」






数日後、山下美月が休業をするという連絡がグループ内で発表され、23枚目の選抜には参加しないことが連絡された。





その情報をスマホで見ていた自宅の〇〇。

××は考えていた。

××(違和感は感じていた。本来なら山下さんはもう少し早く休業を決意していて、今日ごろにはグループ内だけじゃなくてメディアやファン全体に告知されていたはずだ。それに、俺が話しかけるまで山下さんは休業の考えさえないかのような様子だった…。)

○○「俺の知っている乃木坂の歴史が変わっている…?」



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翌日、23枚目シングルの選抜発表が行われた。

その場に山下美月はいなかった。

しかし、これはまだ選抜云々が関係ない4期生には無縁な話であった。

4期生はすでに告知されていた「23枚目シングル発売記念ライブ」に向けた練習がスタートしていた。

今回のコンセプトは、一人一回以上センター。

一人一曲、過去の表題曲から自分たちで決めた曲のセンターを務めるという企画が進行していた。

そして今日、当日のセットリストが決定し配布された。

美緒「えー、〇ちゃんこの曲選んだんだ~!」

○○「うん、まぁね。」

美緒「なんか理由とかあるの?」

○○「うーん…そうだなぁ、単純にかっこいいからってのもあるんだけど、乃木坂の代表曲であるこの曲のセンターをやってみようと思ったの。この曲をやった時の先輩たちのキメ顔ってすごくかっこいいと思わない?」

美緒「うんうん!わかるよ!かっこいいよね!」

○○「ちょっと難しいダンスだからみんなに迷惑をかけちゃうかもしれないけど…。ごめんね?」

美緒「全然!いつかはこの曲もたくさんやることになるだろうし、私も楽しみだよ!」

○○「ハハッ、ありがと!」


そんな流れで、23枚目シングル発売記念ライブは順調の一途をたどっていた。

そんな中。

マネージャー「みんなー!キャプテンの桜井玲香が差し入れを持ってきてくれたぞー!!」

4期生「「わー!!」」

キャプテンの桜井が4期生の練習の様子見に来ていた。

桜井が持ってきたのは、小さめのケーキを12人分。

桜井「これ食べてみんな、エネルギーをつけてくださーい!」

4期生「「ありがとうございまーす!!」」

桜井「4期生単独でのライブは不安と過緊張とかあるかもしれないけど、楽しみながら頑張ってね!」

4期生「「はい!!」」

講師「さぁ、食べたらまた練習再開するよ!」

4期生たちは口に物が入ってない人たちのみ「はーい」と返事をし、また練習に戻っていった。






桜井「早くも顔つき変わってきましたね、4期生。」

マネージャー「だねぇ、毎日見てるとわからないけど、ふとした時に去年の入ったばっかの時と比べると全然違うんだよね。」

桜井「後の世代が続々と育ってるって感じだなぁ。」

マネージャー「やっぱり…もう決めたの?」

桜井「はい、私、この次で卒業します。」



「目が覚めたら乃木坂4期生の〇〇でした」

第30話 終

続く。

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