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刃奔星走、彼方へススメ!


「おいこらまたんかー!!!」
「おい、そこの侍と魔女止まらんかい!!」
時代は明治。場所は大阪。
街中を失踪する二人の影。それに追随する大勢の影、影、影。
先を走る二人の影は、顔を見合わせる。
1人は乱雑に髪を束ねて男物の着物を纏い、帯刀する女侍。
1人は洋物の紳士服と三角の山高帽子をかぶった優男の魔女。
魔法使いは顔を真っ赤にしながら、侍へつばを飛ばす。
「それで、ハァ。……何かプランハァ……うえぇ。計画はあるのかかっ!!!? なぁおい、キクさんよ」
「あるわけないだろう。銭もなければ身分もない。あるのは志と剣の腕のみだ。あとお前さんもっと鍛えろエイベル」
「こちとら学者肌なんでねッ! ああ、くそ、こんなことなら出島で路銀なんざ渡すんじゃなかった。助けるんじゃなかったぜ!」
「なにを、あれで助けられたのだ。礼を言う。人の良さに漬け込む真似をしてすまない」
「あああ、くそ!その妙に素直なところほんとヤダ! それに言ったろ?ギブ&テイクってやつさ。持ちつ持たれつ、だったか?」
「ああ、よろしく頼む」
「あいよ! とりあえずこの状況どうにか……っておっと」
2人が行き着いた先は袋小路だった。
左右を家の壁に囲まれ、背後には海が広がっている。
そこに集まるは刀や最近の銃器を持ったごろつきども。
1人の大柄な、おおよそ海外からの移民だろう。褐色の肌をしたごろつきが大太刀をもってやってくる。
ごろつきは全身ズタボロで傷だらけにもかからわず、血気盛んに二人をにらみつける。
「はぁ、はぁ。ようやく止まったなデコボコ野郎どもが」
「私は女だが?」
「シャラップ!! 元はといえばお前が道場破りしてきたのが悪いんだろうが!あと金までもっていきやがって!」
「それはお前さんが違法な金ふっかけて巻き上げてたんでね。あと俺らの路銀集め」
「本音が出てんだろうが! くそ、もう勘弁してねぇ。お前らボコって海に沈めてやる」
「やっちゃってくださいボス!」

2人は見合わせてふっと笑みを浮かべる。両腕を上げた。
大男は降伏の意を示したかと、二人に近づいていく。大勢がにへらと笑みをうかべーーそのまま驚愕した。
魔法使いが杖を掲げると侍の刀が真っ赤に灼熱を帯びる。
侍が刀を奮えばそのまま太刀風となり、大男が彼方へと引き飛ばされていった。
女侍は無骨な鉄刀2本を。
魔法使いは大ぶりな木の杖を掲げている。
「それじゃ、まぁもう一仕事しますかね」
「ああ、出遅れるなよ」

時代は明治。激動の時代。
活劇するは、魔法使いと女浪人、根無し草が居場所を求めて旅をする。
目指すは江戸。華やかなりし街。目的は仇討、救済。
かたや女浪人は、家取り潰しのため反乱を起こさんとしている兄を討ちに。
魔法使いは宗教弾圧の末、戦争を起こさんとしている仲間を救うために。
斬った張ったにすったもんだ、剣術に魔法になんでもありの東奔西走時代劇。
さぁいざ往かん、刃奔星走、彼方へススメ!






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