その場はにぎわっていた。
今日は発表の日、やっぱり私も出たかったが、あの資料を見せられてはくじける。
あそこに書いてあったことは一ミリ一ミリのことだった。
まるで、操り人形のようだ。言い方が悪いが。
できるだけよくするためにやっているのだろう。
劇が始まると、目の前のカーテンが開いた。
そこを見た私は驚いた。
めちゃくちゃ細かくいろいろなものが作られていたからだ。
地面にはたくさんのガムテープが貼ってあった。
「わぁッ」私は目を丸くした。
そこで見たのは、人生を変えたのかもしれない。
「あ、ヨォ」真横には岸田先輩が立っていた。
先輩は手に金槌を持っていた。
「先輩って…あの舞台にあるものを作ったんですか?」先輩は驚いていた。
「そうだけど…よくわかったね」僕はそれを聞き、つい笑ってしまった。
だが、劇がもう始まっていたので怒られた。
「いや、だって先輩、手に金槌を持っているじゃないですか」先輩は自分の手を見ると、慌てて隠した。
どうやら持っていたことを気づかなかったようだ。
「ま、まあそういうことだね」先輩は照れくさそうに認めた。
私はそれを見て、薬と笑った。先輩の照れた顔はかわいかったからである。
「それで、」先輩は私のほうを見てきた。「この劇は見ていて楽しい?」
私は答えるのに困った。いいように答えたらいいの、それとも正直に答えたら…
答えは先輩の顔にあった。先輩の顔はこういっている。「正直に答えて」、と。
なので、私は本心を言った。
「見ているのも楽しい。だけど、あそこに立ちたい。前に出たい」それを聞いて、先輩もうなずいた。
「僕も昔はめちゃくちゃ頼んだよ。まあ、全力で拒否されたけど」
その理由は少しわかる気がした。嫌がらせをしたいわけではない。だが、先輩は少しおっちょこちょいなところはある。
あんなに細かいことをするのは先輩には難しいだろう。だが、それを私が言えることでもない。
私だって難しいのだから。
「それで、どうしてあれを作る仕事になったんですか?」私は大工ということが思いつかずに変な言葉で訊いた。
先輩は少し考えてから答えた。「まあ、自由だから、かな」それを聞き、私は少し身がわからなかった。
先輩のいう自由というのは私の言う自由と違うのだろうか。
どうしてもそう考えてしまう。
「どういう意味ですか?」私は思わず訊いてしまった。
だが、仕方がない。とても気になったことなのだから。
「自由って」先輩はまた考えた。説明が下手なのか、時間がたってから答えた。
「あの台本に縛られないというところかな?」先輩は自分でも言っていることがあっているのかがわかっていないようだった。
私はそれを聞き、ほっとしたような気がした。
「だってさー」角でそれから私たちはずっと話していた。
それは楽しかった。
だが、その後見るのを忘れていたのは悲しかった。
ビデオで見せてもらったが、やはり思った。
もしもこんなことがなければ思いもしなかったことだろう。
私が思ったことは簡単なことだった。
「ああ、現実で見たのとビデオで見た感覚は違うな…」
そう思ったのだった。
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