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「女子になりたい」一人の少年が告げた。「お前、いったい何を言ってるんだよ」横に座っていた男子、Aと名付けておこう。
Aは不思議な顔で少年を覗き込んだ。「女子になりたい」彼はまた告げる。「何言ってんだよ、無理だろ、そんなこと」
だが、少年は同じ事を繰り返し告げた。「女子になりたい」少しAも不気味に感じてき始めた。「先生、なんか***の様子が変です」
先生はすぐに様子を見に来た。彼はまだ同じことを告げていた。先生も声をかけたが全く反応は見られなかった。「やはりおかしいな」
先生は少年を保健室に連れて行った。連れていかれながらも同じことを告げていた。今までは何事もなかった。おとなしいのはおとなしかったが、こんな変なことは話さなかった。
養護教諭も何一つおかしくないと言っていた。精神も。だが、どう見ても精神自体がおかしいように見える。とりあえず教室に戻り、普通に授業を続けた。
だが、Aは授業に集中しようとしてもできなかった。横でいったい何が起きたのかわからない少年がぶつぶつとつぶやいていたからだ。
彼はその夜、彼は親しい友達に電話した。内容はこちらだ。
A「もしもし、Aだ。ちょっと助けてほしいんだけど」
相手「どうした。落ち着いて話してくれ」
A「僕の横にいる***君がおかしいんだ」
相手「なるほど、どうにかしてみよう。今夜に」
A「ありがとう、助けになるよ」
相手「そんなことないさ。ただ…」
A「ただ?」
相手「もう彼を見ることはないだろうけど」
A「え!?いや、そういう意味じゃなくて…」
プチッ
電話は切れ、どうすることもできなかった。


この少年も危険研究者マッドサイエンティストが作り上げた作品だ。
だが、危険研究者マッドサイエンティストが作り上げたのはこの少年ではない。
説明しよう。この少年が同じことを繰り返し告げる人間になったのは一つのガムだ。そのガムをかむのは何も起こらないが、すべてを飲み込めば効果が現れる。
もしも男ならば「女になりたい」や、「女の子になりたい」、「女子になりたい」、「女性になりたい」などと告げ始める。これはその人が女をどういう言葉で話すかに交わり変わる。
だが、もしも女ならば「男になりたい、」「男の子になりたい」、「男子になりたい」、「男性になりたい」などと告げ始める。
効果は約5時間で完全に発動する。発動すればもう止まらない。止めるやり方はたった一つ。体からとることだ。トイレに入るのもいいし、入らなければ取り除くこと。
このガムは打ってある場所からすべて排除され、もしも売ろうとした場所があれば直ちに処分されることになっている。
だが、もしもこれを食べた人がいればただちにガムを取り除かれ、違う場所へと移す。
Dクラスの囚人で試されたところ、これを食べると飢え死ぬまで同じことを告げ続けるのだった。
取り除くと効果が発動してきた時からだんだんと記憶が薄くなり、取り除かれ、起きると元通りに戻っているそうだ。
もしもガムを飲み込んでしまったら、直ちにトイレへ入ること。これは事実だ。ガムは飲み込むと体に悪い。できるだけ早くに取り出すことだ。
(だが、体から取り除かなくてもいい。そこまで悪いものではない。…と思う。)

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📖上鍵です『|上鍵《じょうかぎ》と呼んで』小説家🛜lvl @コメント/返信99.9%