百不思議の小学校‐実在日記
「学校いやだな~」僕はぼそりと口から言葉が出た。
特に嫌いなのは音楽だ。あんなのこれからの人生で必要な時なんて普通はないだろう。
僕はため息をついた。せめて音楽なんて消えてくれればいいのにと何度思ったことだろうか。
すると、なぜか路地に目が釘付けされた。どうしてかはわからない。だが、目を放せなくなってしまった。
興味が湧き出てきて、僕はその路地へと入っていった。
その奥は見たことがない場所だった。いつもならさっきと同じような大通りに現れるはずだったのに、今度は道に現れた。
確かに大通りだった。だが、そこには人間が一人もいなかった。代わりに、空を飛ぶ生き物などがいた。どう見てもおとぎ話に出てくる妖怪に見える。そこには速くてあまりは見えなかったが、かまいたちもいたと思う。僕はそのまままっすぐ進んだ。
気付けば目の前には店があった。さっきまではなかったと思うのだが、記憶が飛んだ一瞬の間に現れた。
「いらっしゃいませ」そこには生き物がいた。男性の人間に似ていたが、顔が黒くて見えなかった。この世界では普通なのだろうと僕は考え、そこはほおっておいた。
僕は中に入るとそこには何一つなかった。あったものとすれば店のど真ん中にあるガラスの箱だ。
「お好きな商品を呼べてください。今、欲しいもの、悩んでいるもの、どんなものでもお望み通りの商品を紹介します」僕は首を深く傾げた。
どう見たってどこにも商品は置いていない。空っぽの店だ。
「お望みの商品は何ですか?」僕は聞かれ、一番初めに思いついたものを口に出した。「何でもいいなら音楽を消せる商品てある?…まあ、ないよ…」僕はそんな商品などないといわれると思いっ手いた。
だが、答えは。「少々お待ちください」だった。
予想外の答えが飛んできて、僕はびっくりした。「本当にあるの!?」ガラス箱の前に行くと、うなずいていた。「言いましたよね、どんな商品でも紹介します、と」
僕はつばを飲み込み、ガラスの箱を眺めていた。
「それでは、こちらをどうぞ」箱を開けると、そこにはいつのまにか本が置いてあった。
どちらかというとメモ帳だ。「?」タイトルを見てみると、そこには『実在日記』と書いてあった。「これは200円になります。」僕はそれを聞き、心の中でガッツポーズをした。普通の店で買うこんな分厚い日記よりはこれのほうが確実に安かったからだ。払うと、その実在日記というものを受け取った。
「これに書かれたことはどんなことでも実在できます。ですが、適当には書かないでください。大変なことになりますので。もしもそうなれば…」だが、最後まで説明を聞く気がなかったので、そのまま走っていった。
さっき入ってきた路地を通ると、いつもの通りに戻っていた。
後ろを見てみたが、そこはいつもの路地に戻っていた。
「最後まで聞いておけばよかったのに…まあいいか、」店員はそのままガラスに蓋をして、奥へと戻っていった。
「これでどんなことができるだろうか」僕はワクワクしながら開いた。
今日はちょうど2月1日だったので、その日付を開き、書こうとした。
「ちょっと待てよ、明日からにしたほうがいいか」2月2日を開くと、まずは試しに簡単なことを書いた。勿論その後で書いたかのように、書いておいた。一応日記だったので。
『今日は大雨で、学校が中止になった。お母さんが僕に1日中ゲームをさせてくれた』
そう書くと、まだ4時なのにもうベッドで寝ていた。
次の朝は何か大きな音で目を覚ました。
外を見てみると、嵐のように雨が降っていた。
「今日は大雨だから学校が中止になったらしいわよ、外でも遊べないし、今日は特別に1日中ゲームを許可するわ」実在日記の効果は本当だった。
僕はついつい楽しくなって、次の日に効果た。
『今日急に音楽が消えた』その夕方までは何も起こらなかった、この日記は明日ようだからだ。
次に日をワクワク待ちながら寝ると、目の前が真っ暗になった。
次の日起きると、とても静かだった。天気が晴れたようだ。
だが、窓から外を見てみると、まだ雨は降っていた。なのに、音が聞こえない。
「……?」自分の声も聞こえなかった。
まさか!? 僕は日記を見てみると、やっぱりそうだった。
この日記が音を全て音楽とみなしたのだった。
僕がほんとうにおきてほしかった『授業』の音楽ではなく、『人生』の音を消してしまったのだった。
その時、思い出した。あの人らしき生き物が最後に言っていた言葉、『大変なことになりますので』の後だった。だが、思い出せなかった。『もしもそうなれば』というところまでははっきりと覚えているが、その後は走っていったので聞いていなかった。
この世はその日を境目に音が出なくなってしまったのだった。
ㅤ