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「「獣だ…」」
「な、何ですか?」ホノカはおろおろと周りを見た。
「いや、何でもないよ」僕は彼女をなだめるのに数分かかった。
それを見ていてマリナは死にそうだった。
腹を抱えて大笑いしていたからだ。
僕はホノカにつかまれながらマリナを見下ろした。(見下した)
「何がおかしい」彼女は起き上がるとまた地面に倒れた。
今度は笑い転げていなかった。足を抱えて震えていた。
「あ、足が…」どうやら足がつったらしい。
「大丈夫か~?」僕はしゃがんで彼女の足をつついた。
「ギッ!」彼女は奇妙な悲鳴を上げて動かなくなった。
僕はもう一度つつこうとしたところをホノカに止められた。
ホノカの目はまるで何十年も生きたかのような目だった。
「ホノ…カ?」彼女は口を開いた。「大丈夫ですよ」
その一言はどこかに刺さった。確かに声も話し方も似ていた。
だが、同じではなかった。もっと自信があるような話し方だった。
もっと年を取っていたかのようなは声だった。
彼女はしゃがむとマリナのつった足を手に持った。
「ちょ」彼女は僕の目を直接見てきた。
大丈夫です。
その一言は本当に違和感を感じた。
「少し痛みを感じますが我慢してくださいね」彼女はまるで別人だった。
まるでこんなことは何度も経験したことがあるかのような速度だった。
彼女は僕からすればホノカじゃなかった。
まるで何十年も前のホノカのようだった。
彼女は正真正銘、大人だった。

「大丈夫ですか?」目の前にはホノカがいた。
いつものホノカに戻っていた。
いったいどのぐらい時間がたったのだろうか。
僕は気絶していなかったが、普通に何かを考えて周りのことが見えていなかったようだ。
僕は立ち上がるとホノカが僕のすすをつかんだ。
もう何日も続けていることなのでそこまでは気にしなかった。
だが、問題だったのはマリナだった。
彼女が来ると、厄介ことしか起こらない。今まではそうだった。
予想通り、マリナはとことこと歩いてきた。
「2人ともいい付き合いじゃない?」彼女はつんつんとつついてきた。
「ほっとけよ」僕はプンとそっぽを向いた。
「あ、照れてる~」僕は思いっきり批判したが、それは無意味だった。
帰っている間、ずっとディベートをしていた。僕が照れているか照れていないかの。
だが、行ったことは「照れてる~」と「照れてない!」だけだったが。
僕とホノカは家までついたが、マリナは一人で帰ることになった。
ホノカはついていくといったが、マリナは大丈夫だといった。
だが、ホノカには勝てず、マリナとホノカは暗闇の中に消えていった。
「大丈夫かな…」だが、心の中ではある予感がしていた。
ホノカはどんなことが起きても負けるはずがない、という予感が。

ホノカがけってくるまで僕は外で待っていた。
少し時間がかかったが、一応帰ってきた。
だが、彼女は一人じゃなかった。客が一緒に来た。
ホノカに引きずられて。
話を聞いたところではどうやらマリナと別れた後、暗闇から襲ってきたらしい。
だが、気が付くと地面に倒れていたらしい。
男の手にはナイフがあったのでなぜか暗殺しようとしたのだと思う。
僕はとりあえず百十番を呼ぶと警察が来て、連れていかれた。
僕たちは家の中に戻るとベッドに座った。
「今日はいろいろあったな…」そのまま意識が飛んでしまった。
疲れて、寝てしまったようだ。
「おやすみなさい」ホノカの静かな声が最後に聞こえてきた。

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