無名小説スライム編(8)
「俺は少しの間国に行ってくる」俺は少し国の文化をここにもって来たかったのでそう瘋癲に伝えた。彼女はついていくといったが、別にそこまで危険なことではないので俺は遠慮した。ほかの人を連れて行くのは色々面倒だからだ。
「ねえ神、どうやったら一番早く国まで行くことができる?」『はい、一番早い方法は魔物を使うことです。特に暗闇狼がいいでしょう』俺は狼を知っている。凶暴な生き物だ。
日本ではほとんど見かけないが。
「まあ、そう簡単なことじゃないと思うけど大丈夫だろうね」とりあえず森の中にはねてはいると、まったく大丈夫じゃないことを思い知った。「こ、これは…」
俺の前には今、約300体もの狼が立ちはだかっていた。空は木で見えず、薄く光が照らしてくるほどだ。狼は空飛ぶ光る面玉のようにしか見えない。「殺される…ねえ神、どうしたらいいだろう~」
俺よりは頭のいい神に聞いてみた。『はい、一番いい方法は草むらに隠れることです。すぐに見つかりますが、こちらのほうが細い場所の行動が有利でしょう』
神の言うとおりに横に曲がり、草むらの中へと突っ込んでいった。これしか逃げる方法はないと思ったからだ。「おお、体がするすると隙間を通っていく!」はしゃぎながらも草むらの中を猛スピードで通り抜けた。
ーしかし何かを忘れているような…あ! 俺は思い出した。第一目的はあの暗闇狼を最低1匹でも捕まえることだ。だが、今はそんなことをする暇などなかった。
「一番の方法はーー…」『はい、北へと突き進めばいいでしょう』俺はなぜ北なのかわからなかったが、とりあえずいうとおりに北へと進んだ。「ちょっとマップを見せてくれる?あの点のついたやつ」
マップを見ると、俺が向かっている先に巨大な丸があった。「これってまさか…」俺の後ろには大量の丸があった。「まあ神を信じよう」目の前には巨大な丸があり、俺は巨大なクモやもしかすると巨大な竜を予想していた。
「このでかい点ってまさか…」俺はいったい点が何なのか分かった。「これってただの小さな竜だよね。本当にこんなチビッ子があんな強い魔力を持ってんのか?」俺にはまだ魔力を読み取る能力を持っていないので、目の前に見える魔力は分からなかった。「我は竜ではない。龍だ!」「同じことだろうが!」俺は素早く突っ込みを入れた。「同じものではない。この我をあの竜と同じにしてほしくはない!奴はへなちょこのテンテコリンだ!」俺は心の中でそんな表現がこの世界に存在するんだ、とつぶやいた。
「それじゃあ俺はここで…」そろそろとその場から離れようとしたが、考えたとおり、止められた。「おい待て!」巨大な手が空中に出てきて、俺をつまんだ。
が、その威力があまりにも強すぎて俺は気を失った。「こ奴…弱いな。軽くつまんだつもりだったのだが」そのまま地面に置き、また地面に座った。小さかったのでまったく物音は立てなかったのだ。
「さてと、何をするーードワ!」何か大量の生き物に踏みつけられ、慌てて空に飛んだ。「いったい何者だ!この我を踏みつけるなどとは!」初めは暗闇狼もただ笑っていたが、再び誰なのかを見ると、固まった。「こ、これは龍様…失礼しました!」一瞬できれいに並び、暗闇狼は頭を下げた。「す、すみませんでした!」殺されるのかと思い、ぶるぶると震えていた。
「それでは」龍は口を開けると、すべての暗闇狼が龍を見上げた。「こ奴に使えるので許そう。こ奴はスライムだ。世界で一番弱い魔物とされていた。だが、個のスライムは話すことができる。我はこ奴に興味を持った」暗闇狼は俺、スライムを見た。「こいつは食べ物にするつもりだったが話せたとは…貴重な生物…いや、魔物を殺すところだった」すると、龍は表情が変わった。「今何と言ったのだ?まさか食べようと思ったのか?」「ち、違います!」すべての暗闇狼はころりと倒れた。暗闇狼達には龍の魔力がその目で分かるのだ。その魔力はここ一面を埋め尽くすほどの力だった。
「まあ、これで厄介者は片付いた。それではおぬしがどこまで成長するかを見届けるとしようか」龍はニヤリと笑った。
俺はそれから数日間、龍の枕として使われていたのだった。
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