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「訊いてみるよ」彼は頭を下げるとどこかに歩いて行った。
教室に戻るとホノカが飛びついて来た。「彼女が無理してでも行こうとしてたのよ、全く力がなかったけど」マリナはどうやらずっと彼女を捕まえていたようだ。
僕はホノカを見た。彼女の目には涙がたまっていた。そこまで待たせたっけ?僕は思ったがそのようだった。「頼みたいことがあるんだ」
すべてを説明した。

「少し無理をしすぎるんじゃない?」マリナの言ったことはあっていた。だが、これは頼まれたことだ。訊いてみることには変わりない。「いいよ」彼女の口から出てきた言葉は空耳かと思った。彼女は人見知りなタイプだと思っていたので拒否するだろうという直感を持ちながらも訊いたことだった。「「本当に?」」僕とマリナは目を大きく見開いてしまった。あり得なかったからだ。彼女は頷いたが、何かが違った。さっき、敬語を使っていなかったような…だが、そんなことは関係なかった。今関係するのは彼女がやるということだ。
学校が終わったとき、なぜか全員席を立たなかった。帰ろうとしなかった。まるでこのことを知っていたかのようだった。
ホノカは教室の前に行く。なぜか付き添いとして僕も前に出た。彼女は緊張しているのかプルプルと震えていたので僕は彼女の手を握った。彼女は深呼吸すると…
無言のままだった。

数秒後、歓声が教室を包んだ。拍手が聞こえてくるし口笛も聞こえてくる。僕はいったい何が起こったのかわからなかった。「???」僕の脳にはハテナしかなかった。
だが、皆は彼女が何かを言ったかのように拍手をしていた。まるで彼女がとてもいいスピーチを言ったかのように。
「よっしゃー、頑張るぞ!」全員運動会のやる気が満タンだった。僕はいったい何が起こったのかわからない。彼女は口を動かしていない。何も言っていないはずだ。ただ、数秒ほどそこに突っ立っていただけ。なのに彼女は僕のほうを見てきた。にこにことしている。まるで別人のようだった。彼女は全く人見知りのようには見えなかった。友達を100人作るのが目標の人みたいだ。
誰? 心の中で思ったが思い出した。この顔は少し前に見たことがある。

夢だ。夢で見たことがある。覚えている。謎のパズルピースを渡してきた少女だ。ホノカよりは少し年上のようだったが彼女で間違いない。
僕は皆を見た。だが、一人だけ拍手などをしていない人がいた。イトウさんだ。彼女は何かを真剣に考えていた。だが、何を考えていたのかは聞くことがなかった。
家に帰るとお母さんがむかえいれてくれた。「おかえりー」姉は暢気にリビングのソファーで寝転がりながらテレビを眺めていた。学校では優秀な生徒なのに家ではいつも0点をとる人のような人間だ。
「ん?私がアホに見えるって?」勘もとても鋭い。「いや、そんなこと思ってないって。ただ服は適当だし髪もぼさぼさだしゴロゴロと寝転がってるし頭が悪そうな女に見えると思っただけだよ」彼女はすばやく突っ込みを入れてきた。「おんなじことじゃん!」同じことなのだが。
僕は自分のベッドに寝転がると考えた。さっきのことを。
ホノカはいったい何者なのかを。

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