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「そろそろ狭くなって来たんじゃないか?」次の日に本田が口に出した。
確かにこの小さな土地はだんだんと狭くなっていた。
「いったいどうやったら…」すると、那留が現れた。
僕たちが見ると、彼女はいつもと違った表情をしていた。
どちらかというと、乗り気のようだった。
「あの…作ればいいんじゃないんですか?」僕はそういわれ、きょとんとした。
作るといっても無理だろう。普通なら。
「いや、その…」彼女は海の中を見た。
「あそこら辺にある木の板を使いまくったらいいのでは?」海底を見てみると、そこには木の板がたくさんあった。
多分あそこで昔は何か木造りをしていたのだろう。僕は意味が分かった。
「でも僕たちだけじゃ多分…」普通に無理だろう。僕たちだけでは。
そこへ圭太が現れた。那留のお父さんだ。
「ん?どうしたんだ?」彼は手にもう板を持っていた。
僕たちが話をすると、彼はにやりとした。
「そんなことならもうしてるさ。ほら」彼が指さしたほうに歩いてくと、そこにはたくさんの人がいた。
男女共に働いていた。女の人は釘などを男の人に提供していた。
「あそこらへんに土地を作れたいいなって思ってな」だが、海の中で自由自在に泳げそうな男の人は数少なく、板を埋めるのが大変だという。
「だから疲れれば休んでまた潜る、それをずっと続けてるのさ」それでは遅いと僕でもわかった。
なので、僕は佐々木と本田を見た。佐々木は泳ぎを得意としていて、本田は普通に運動力抜群だ。
「手伝ってくれるか?」彼らはもちろん頷いた。

僕たちが取り掛かってからどのぐらいたっただろうか。
地面んがだんだんと出来上がっていて、新しい土地が広がっていた。
だが、本田は違うことをし始めた。
海に潜ると板をとってきて、次々ととってき始めた。
「?」少し気になってそのまま見ていると、大量のペットボトルをとってき始めた。全ては空だ。
20個ほどとってくると、また海の中に潜っていった。
地面には20個ほどの板と空のペットボトルがあった。
「これを何に使うんだ?」気になったが、訊く気にはならなかった。
さっきからせっせと働いていたからだ。
今度は直径2センチメートルほどの長い紐を次々ととってき始めた。
「本当に何をしてるんだ?」彼は僕の視線に気づいたらしく、手招きをしてきた。
そこに行くと、板を十字架に持ってくれないかといわれた。
持っていると、重なった場所を彼は紐でがっちりとくくり居つけ、その上にからのペットボトルを入れておいた。
「何をしてるの?」ちょうど今がいい時だと思い、訊いてみることにした。
「ああ、これ?簡単なことだ。ボートが足りないから、作ろうと思って。誰かに僕が生まれたての時、行ってたんだよな。その時はベビーベッドがなくてね、買おうとしてたんだと思うけど、僕の近くにいた男の人が言ったんだ。『ないなら作れ』ってね。誰かはわからない。親に訊いても教えてくれないんだ。ま、もう訊くこともできないんだけどね。でも、彼の一言のおかげで色々な勇気をもらえたよ」彼は昔を振り返って少し笑みを浮かばせた。
「そうだったんだ…」少し気の毒に思ってその話は避けようと思った。
「とりあえず、何個作るつもり?」僕が訊くと、彼は考えた。
「あ、そこは考えてなかった」「はい?」