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今のところはいい調子で進んだ。何も悪いことは起こっていない。このころはまだ簡単だと思っていた。
「フンフンフフーン♪」俺は鼻歌を歌いながら暗闇狼ダークウルフの背中に乗っていた。
急に暗闇狼ダークウルフたちが止まった。そしてうなりだした。俺にもわかる。この先には凶暴な何かがいるということを。
少しすると、その凶暴な魔物が現れた。ぴょんぴょんと跳ねてくると、地面を嗅いだ。「なんだ、ただの兎じゃないか」びっくりして損したと思ったが、それは違った。
兎は俺に気が付くととびかかってきた。「ギャー!」思ったより凶暴だった。だが、俺に触れると突っ込み、間違えて捕食してしまった。
「あ…」俺は消えていく兎を見てため息をついた。「今のは捕食しなくてもよかったんだけどな…」『捕食者というのは自動的に発動するものです。不発動は不可能です。』
兎は見た目的に白くて小さくてかわいかった。普通に見れば全く攻撃してこないと思うだろう。だが、実際的には攻撃してきた。そして攻撃する相手を間違えたようだ。
兎さん、南無阿弥陀仏。俺は心の中に墓を作った。
『衣食者を習得しました。兎の羽を獲得しました』俺は目を光らせた。「衣食ってあの衣食住?ってかいったい何ができるんだ?」少しの間が空いてから答えが返ってきた。
『はい、衣食とは瞬間的に服を着替えることができます』俺はとても使えると思った。だが、『ですが、スライムの姿では使うことができません』
俺はしょんぼりとした。「無理なのかい!」だが、兎の翼というものは何かに使えそうなのでありがたくもらっておいた。
「それじゃあ進むよ」また暗闇狼ダークウルフたちは森の中を走りだした。
だが、今度はもっと厄介な生き物に出くわした。人間だ。俺を見るとすぐにとびかかってきた。
暗闇狼ダークウルフたちはよけて俺を見た。「殺しますか」俺はすぐに首を振った。「争いたくはない。少し話をしようではないか」
普通にふるまったつもりだったが、その人間は驚いていた。見た目は男性なのか女性なのかわからない。すらりとした体つきで、マスクを着けている。
服は真っ白で靴は黒かった。「話せるスライム…暗闇狼ダークウルフをこんなに手名付けている…」その人物は何かを考えていた。
「話そう」その人は地面に座った。「名前は?」俺は名前で呼びたかったので聞いた。「ホノ。ヤマダ・ホノ」俺は少し考えてしまった。この人物は日本人じゃないのかと。
「もしかして転生者?」嫌な予感がしたが、声を絞りだした。その人物はうなずいた。「ええ。とても昔にね。あなたは?」
俺もうなずいた。「ああ、俺も転生者だ。多分トラックか何かに引かれて死に、気が付いたらスライムの姿になっていたってわけ。結構いい体だけどね、これ」俺は跳ねまわった。
彼女はマスクをとった。すると、その下からは20代女性の顔が現れた。「よろしくね」彼女は薄く笑った。「こちらこそ」俺はれを差し出し、仲間の握手をした。
「それで、こんな森の中に何をしに来たんだ?」彼女は自分の手を見た。「死にに来たの」俺は固まった。「どうして死のうと思った」彼女は手から黒い火を出して見せた。
「これは黒煙魔法、私が持っている魔法」俺はすごいと思った。だが、彼女は同じような気持ちを持っていないようだ。「精霊を取り込んで習得した魔法。世界は今、私しか使えない魔法なの」黒煙を消すと俺のほうを見てきた。「スライムさん、お願いがあるの」俺はうなずいた。「何でも聞いてやるよ」だが、このお願いは完全的に予想外だった。
「私を捕食して」

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