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青山吉能 - la valigia


個人的に、昨期の覇権アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公の”ぼっちちゃん”こと後藤ひとり役で初めて知った声優が青山吉能で(ウマ娘も興味ないしキャラソンも知らない)、そのアニメから生まれた結束バンドのデビューアルバムで披露した(アニメでは最終話のEDとして流れた)アジカンの”転がる岩、君に朝が降る”の天才的な神カバーにド肝を抜かれたのは記憶に新しい。

そんな声優の青山吉能が結束バンドとシンクロするように、この度1stソロアルバムを発表したとのことで早速聴いてみたのだけど、ぼざろ新規の俺たちが知っている青山吉能=ぼっちちゃんのイメージで聴くと、当たり前だけど全くと言っていいほど印象が違う。

オープニングを飾る#1”Sunday”からして、イントロから「出たなシティポップ・・・!(ガタッ)」と良くも悪くも背筋を正される、未だに音楽業界でトレンド扱いされているシティポップ調の曲で、それこそ結束バンドにおける”星座になれたら”のシモキティポップの回答を示す。

トラックメイカーのYunomiを連想させるアソビシステム的なマイナー調の#2”あやめ色の夏に”、そして春ねむりあるいはDAOKOから楽曲提供されたのかと錯覚するポエトリーラップと、俄然アソビシステム風のアーバンでフューチャリスティックなフューチャーベースの邂逅に意表を突かれる#3”moshi moshi”は、開口一番に「きみが与えてくれた何もかもは全部本当の愛だった~愛だった」と韻を踏むリリックは確信犯に近いというか、否が応でも春ねむりの”ナインティーン”を想起させる。この全く想定してないタイミングでのシンクロニシティは(ニチャア)ってなる。

再び、松原みきに代表される80年代のシティポップクイーンになりきる#4”Mandala”、エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」の高橋洋子や「アンインストール」の石川智晶らの90年代のアニソンシンガーさながらの歌唱法をオマージュした#5”My Tale”、ドリカムmeet奥華子的な王道J-POP系バラードの#6”ツギハギ”、いわゆるバーレスク的なシャッフル系アッパーチューンの#7”Sweetly Lullaby”やパーティソングの#8”STEP&CLAP”、結束バンドの主題歌である”青春コンプレックス”や”星座になれたら”の作詞を担当したシンガーソングライターのヒグチアイを作詞/作曲として迎えた#9”透明人間”、アルバムのラストを飾る#10”Page”は雰囲気がラルクっぽくて・・・「面白いッ!(CV.伊地知虹夏)」。

結束バンドでもバンドアニメの常識を覆した青山吉能は、再び自身のソロアルバムにおいても「声優のソロアルバム」、そのイメージを覆すような魅力的な作品を生み出している。それこそ、トレンディなシティポップをはじめ、90年代のアニソンやイマドキのモダンな電子音楽、そして想定外のポエトリーラップに至るまで、十人十色の作曲陣を迎えたバラエティに富んだ様々な曲調と調和する青山吉能の声色の変化は、本作における最大のポイントの一つで、高域から低域まで変幻自在に己の声帯を操る「職業声優」の擬態技術には只々脱帽しかない。そして、このアルバムを聴き終えた後に世界は知るだろう・・・「青山吉能は天才」だと・・・!

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