オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第62回 「ソーラーシェアリング」で農業革命 ~豪の農地を活用した新たな収益モデル~
オーストラリアの農業界は、太陽光発電と農業生産を組み合わせた「Agrisolar / Agrivoltaics」と呼ばれる日本が発祥の「ソーラーシェアリング」の導入により、新たな可能性を見出しています。太陽光パネルの下で農業運営を可能にするAgrisolarは、同じ土地から二重の収益を得ることができ、土地利用効率が向上します。今回は、オーストラリアでの具体的な活用事例ついて解説します。
■収益性を考える
オーストラリアでは、太陽光発電によって生み出された余剰電力を電力会社に売る際に支払われる料金は州ごとに異なります。一部の州では政府が料金を設定しますが、ニューサウスウェールズ州やクイーンズランド州などでは、電力会社が競争力のある市場価格を設定しています。
オーストラリアでの具体的な活用法と事例
ソーラーグレージング
広大な農地のオーストラリアでは、日本のように太陽光パネルの下で農作物を栽培する他に、パネルの下で羊を放牧する「ソーラーグレージングファーム」が一般的に行われています。
The Clean Energy Council 2023のレポートによると、太陽光発電所は家畜の健康に良い微気候を作り出すことができ、悪天候時の子羊の死亡率の約2割の低下、羊毛品質の向上が実現できました。日差しが強いオーストラリアの農地での、太陽光パネルによる部分的なパネル下の日陰は、生物多様性に貢献できることも分かっています。
南オーストラリア州での事例
南オーストラリアの再生可能エネルギー開発会社であるEnergy Estateは、ワイナリー地域であるMcLaren Valeのワイン用ブドウ生産者と協力し、農場での農業用太陽光発電システムの可能性を共同で模索しています。同事業の主なメリットは、日焼け、雹、嵐による被害などの極端な気象の影響の防止、熱波の解消、節水などが含まれます。
ビクトリア州の事例
ビクトリア州のTaturaでは、州政府が運営するTatura Smart Farmにおいて、梨の果樹園の上にソーラーパネルを設置する実験を行っています。この方法は果実の日焼けを防ぎながら発電することを目指しており、初期結果では日焼け防止と雹害対策に効果がみられました。一方で、果実の生長にわずかなばらつきが報告されています。
また、West Gippslandでは、農場のダムに浮かべるソーラーパネルの実験が行われています。この方法は土地を他の用途に使いながら発電できる利点がありますが、設置コストが高いという課題があります。
森林火災対策も重要課題
農場での太陽光発電所の計画承認条件には、地元の消防当局との協議、森林火災リスクの徹底的な評価、厳格な基準の遵守が求められます。これには、太陽光発電所の敷地内に貯水タンクを設置すること等が含まれます。管理者は緊急管理計画を策定する必要があり、太陽光発電所は稼働すると24時間体制で監視され、警報システムが提供されます。
まとめ(日本の農業者の皆様へ)
オーストラリアでは、ソーラーシェアリングが広範囲にわたって実施されており、特に「ソーラーグレージング」のようなユニークな取り組みが行われています。これにより、農地が効率的に利用され、土地の多様な用途が実現されています。日本においても、農作物以外の農地をより効率的に活用するために、上記のような取り組みを、より促進させる価値があるかもしれません。