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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第11回 栽培に必要な「水源・水質」

今回は、オーストラリアでの露地および施設作物の栽培において重要な「水源・水質」について解説します。この情報は、日本の農業者の皆様にも有益で、収益アップに繋がる情報も含んでいます。

水源の選択

作物を栽培する際、水源と水質の検証は欠かせません。オーストラリアでは以下のような水源が主に使用されています。

  • 雨水:雨水用貯水タンクを利用。

  • 貯水池の水:潅水用として広く使用。

  • 水道水:水不足の地域や水耕栽培(土を使わず水と液体肥料で作物を育てる方法)で使用。

※井戸水の使用は、水不足のため制限されています。

作物毎の灌水量の理解

オーストラリアは慢性的な水不足に悩まされており、新規作物の導入においては、その前提条件として、利用可能な水資源量を考慮する必要があります。栽培を検討する品種ごとに、生育に必要な灌漑量を事前に把握し、確保できる水源から見た適切な作物選択を行わなければなりません。水が貴重な同国においては、この点が新規作物導入の成否を決定づける重要な鍵となります。
以下は、オーストラリアで栽培される主要な作物の1haあたりの灌水量(ML/ha)です。

出所:Australian Bureau of Agricultural and Resource Economics

このデータを基に、作物ごとの効率的な灌水管理を行うことが可能です。
アジアン野菜は最も多くの水を必要とする作物群で、これは熱帯・亜熱帯原産の野菜が多いためと考えられます。高温多湿の環境に適応した品種は一般に蒸散量が多くなります。
次いでタマネギ、ピーマン、カボチャなどの園芸作物も比較的多量の水を要します。これらは収穫できる部位が地上部で大きいため、生育に多くの水分を必要とすると推測されます。
一方、エンドウマメやサヤインゲンは乾燥に強い作物種で、マメ科植物の特性として根が深く伸び、乾燥に適応できるためです。また、キャベツやキュウリも比較的耐乾性に優れた品種が多いことがわかります。
ニンジン、ジャガイモ、ブロッコリー、レタス等の一般的な野菜は中程度の水分要求度で、これは温帯域の環境に適応した作物種が多いためと考えられます。
以上のように、作物の原産地の気候風土や形態的特徴が、水分要求度を大きく左右していることがうかがえます。効率的な灌漑には、作物の生理的特性を科学的に理解し、管理していくことが不可欠です。

水質の重要性

水質は作物の成長に大きく影響を与えます。特に重要なのはpH値の管理です。pHは酸性、アルカリ性の程度を0~14の値で表し、多くの作物はpH5.5~7.0の範囲を好みます。数値がこの範囲を外れると、根が傷んだり、肥料成分の吸収が妨げられます。化学肥料の場合、必要に応じてpH調整剤を使用することもあります。ただし、これにはランニングコストがかかり、土壌汚染のリスクも伴います。

作物に適したpH値
オーストラリアで栽培される作物における目安pH値は以下の通りです:

上記の内容の紐と解くと、酸性を好む作物としてジャガイモ、サツマイモなどのムラサキ科作物と言えます。これらは弱酸性から中性付近のpH値が適しています。
次に、やや高めのpH、中性から弱アルカリ性を好む作物としてホウレンソウ、ハクサイなどのアカザ科作物が挙げられます。
一方で、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科作物は、中性付近のpHを好む傾向にあります。酸性が強すぎるとこれらの生育が阻害されます。
このように、野菜の品種や科により、好適なpH範囲が異なります。この違いは進化の過程で、各作物が特定のpH環境に適応し分化したことに起因すると考えられます。土壌pHは植物が吸収できる養分に影響するため、作物生育には大きな影響を及ぼします。したがって、科学的根拠に基づき、作物の特性を踏まえたpH管理が重要になってきます。

日本の農業者へのアドバイス

オーストラリアの水源と水質管理のノウハウは、日本の農業にも応用できます。これにより、作物の品質向上と信頼性の確保が可能となり、最終的には収益の増加に繋がります。以下のポイントを参考にしてみてはいかがでしょうか。

1. 水源の多様化
雨水や貯水池の利用を検討しましょう。これにより、安定した水供給が可能になり、水不足のリスクを軽減できます。

2. 水質の定期的な検査
水のpH値を定期的に測定し、適切に調整することが重要です。これにより、作物が健全に育つ環境を維持できます。

3. 効率的な灌水管理
作物ごとに必要な灌水量をデータに基づいて分析し、効率的に水を管理しましょう。これにより、水の無駄を減らし、作物の成長を最適化できます。




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