オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第55回 投資先として有望な「植物工場」事業の見分け方
2022年時点で世界の植物工場の市場規模は、51億米ドルと評価され、23年から32年にかけてのCAGR(年平均成長率)は約23%で、32年には約399億米ドルに達すると予測されています。北米や中東などでは、植物工場市場が急成長し、ベンチャーキャピタリスト、政府、金融機関、個人投資家が主要な投資家となっています。
異常気象に悩まされているオーストラリアでも、植物工場市場(完全閉鎖型)が急成長しており、その中でも、南半球で最大規模のQLD州にある植物工場会社Stacked Farmは、現在までに100億円規模の投資に成功し、約4,000 平方メートルの施設でイチゴ、トマト、ベビーレタス、コリアンダー等を栽培(年間400~440トンを生産)しています。
植物工場の立ち位置
植物工場は通常の農業と比較して、①高い初期投資、②高い運営コスト、③新たな販路の開拓が困難により、経済的な課題に直面している事業が多く、7割近くが失敗に終わるとも言われていました。
しかし、近年のビジネス運営においては「持続可能な開発目標」が重要な項目となり、植物工場事業がこれを実現できる側面も増えています。このため、将来的に有望な投資先として評価されています。
例えば、異常気象への対応、食糧安全保障、雇用促進、廃棄ロスの削減(無菌に近い清潔な環境で栽培できるため)、地産地消の実現などが挙げられます。これらの側面から見ると、植物工場は単なる農業の一環ではなく、持続可能な社会への貢献を担うビジネスとして注目されています。
有望な植物工場企業を見つける上でのポイントは?
まず初めに、①高い初期投資をしているか見極めるポイントは、「作物品種に対応した栽培システム」が確立されているかを確認することです。例えば収穫が2週間以内でできるような短期間栽培のマイクロハーブなどと、収穫まで1年以上かかるいちごなどは同じような栽培環境を必要としません。
栽培期間が短いほど、栽培中の病害虫等のリスクを最小限に抑えることができます。そのため、短期間栽培の作物は簡易的な建築資材でも対応可能であり、建築コストも安く抑えられます。一方で、長期間の栽培が必要な作物は、高いリスクが伴うため、リスクを最小限に抑えた建築が重要です。そのため、初期コストが必然的に高くなる傾向があります。
次回は②、③の改善点について考察し、投資先として有望な事業を見極めるノウハウを更に細かく解説します。
参考情報
私がオーストラリアで参画した植物工場(葉物野菜:マイクロハーブ等)プロジェクト一例:
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