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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第52回 グローバル展開するための植物工場

植物工場の世界的な展開が、異常気象への対策として注目を集めています。 オーストラリアでは、露地での大規模な農業が一般的で、従来は「完全閉鎖型植物工場」の必要性があまり認識されていませんでした。 しかし、近年、異常気象に伴う自然災害、特に山火事や豪雨、洪水などの影響が増加しており、これにより同国でも 「閉鎖型植物工場」の導入が急務となっています。そのため、植物工場を主要な事業とするスタートアップへの大規模な投資が行われています。 多国籍国家であるオーストラリアの植物工場事業が成功すれば、その事業モデルが、グローバルスタンダードとなり、 世界市場への展開が容易になる可能性を秘めています。

私がオーストラリアで参画した植物工場(葉物野菜:マイクロハーブ等)プロジェクト一例:

■植物工場の起源

植物工場の起源について考えると、1957年にデンマークで行われたスプラウト栽培が、植物工場の原点とされています。北欧諸国では日照時間が制約となるため、古くから補光型の植物生産に関する研究が行われ、これが後の植物工場の基盤となりました。その後、オランダをはじめとする欧州諸国では高度な園芸技術が発展しました。

日本の植物工場の歴史を振り返ると、30年以上の歴史があり、3つの段階を経て発展してきました。
第一次ブームは80年代に始まり、日立製作所を含む企業が高圧ナトリウムランプと平面栽培の実用化を始めました。
第二次ブームは90年代に起き、キユーピー(TSファーム)が植物工場ユニットを標準化したシステムを普及させました。農林水産省の支援もあり、全国各地に多くの施設が建設されました。
第三次ブームは2000年代に入り、大型多段式プラントが登場し、国の成長戦略の一部として位置づけられました。国の支援があったことで研究開発が加速し、植物工場の普及が進展しています。また、遊休施設を活用する手段としても注目され、大手企業を含む多くの企業が既存の建屋を利用して植物工場を導入しています。
ただし、植物工場は投資回収が難しい場合もあり、試算によれば約70%のケースで失敗してしまうことがあります。

上の表を詳しく見てみると、完全閉鎖型植物工場が赤字になる主な要因は、人件費と減価償却費です。一方、黒字でも、電気コスト、種苗資材費、その他(研究開発費)が大きな部分を占めています。これは、高品質な野菜をハイエンド市場に供給するためのチャネルネットワークが既に確立されている反面、品質向上に焦点が当てられていることを示しています。

まとめ(日本の農業者の皆様へ)

植物工場は異常気象や自然災害に対応するための食糧生産事業です。省エネルギー技術や効率的な運営管理を導入し、高付加価値商品の開発に注力することで、植物工場事業の発展が期待できます。また、オーストラリアのように多国籍国家で植物工場事業が成功すれば、その事業モデルがグローバルスタンダードとなり、世界市場への展開が容易になる可能性を秘めています。国際市場への展開も視野に入れることで、さらなる成長を目指すことができるでしょう。

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