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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第30回 新規で農業事業を成功させるには? (その5:ローコストで経済的な「太陽光利用型植物工場」を運営できる栽培方法)

農業事業を始めるにあたり、特に「太陽光利用型植物工場」での栽培方法について考えることは非常に重要です。本記事では、ローコストで経済的に運営できる栽培方法について解説し、日本の農業の発展に役立つ情報を提供します。

太陽光利用型植物工場の導入

「太陽光利用型植物工場」で栽培する作物を決定した後、次に考えるべきはどの栽培方法が最適かという点です。コストを抑え、効率的に運営するためには、以下の四つの主要な栽培方法を理解する必要があります。
栽培方法は、前号で解説した自動化の環境制御設備と同様に、いかにコストを抑えることができるのかが決め手となります。栽培方法は大きく分けて、①高設ベンチ栽培②隔離(低いベンチ)栽培③地植え(地面に直植え)栽培④水耕ベンチ栽培となります。

労働コストと作業効率の重要性

直管パイプで骨組みを組んでその上に培地を設置する、設置コストが高価な高設ベンチ栽培等に比べ、地植えで作物を栽培する方が、イニシャルコストを抑えることができ、メリットが大きいように思われがちです。しかし、安易にイニシャルコストを抑えることだけに焦点を当てるのではなく、人件費を含むランニングコストについても注力を注ぐ必要があります。

例えば、高設ベンチの場合、地植え栽培に比べ、定植~収穫作業等、作業員のスピードが2倍近く速くなることが多くあります。高設ベンチは、作業者の胸の高さで収穫等の作業が可能です。農業に限らず、あらゆる作業は、しゃがんだり、中腰でする動作が少なく、手足の上下動作が少ない環境での作業が最も作業スピードが上がると言われています。これは、「トヨタ生産方式」で定義されている「7つのムダ」の内の一つ、「動作のムダ(※)」のノウハウでもあり、農作業でも「動作のムダ」を省くためのカイゼンは必須事項です。

※付加価値を生まない動き、ムリな作業、効率の悪い姿勢や動きのムダ。

実用的な方法を

日々の労働コストを削減させるには、如何にして作業動作のムダを省き、効率の良い作業環境を労働者に提供できるかが要となります。時間給が2,000円以上のオーストラリアでは、日雇いの作業員を一人・一日雇うだけでも、2万円近くのコストが発生します。安い設備投資ができたとしても、その栽培設備のために作業効率が下がり、人件費が倍増してしまうようであれば、元の子もありません。
新規で農業事業を始める場合など、作業スピードの比較することが困難な場合、地植え栽培の生産者、すでに栽培ベンチ等が導入してある生産者、各々の生産者の下で数ヶ月間ずつ農業研修を行い、事前に作業スピード・作業効率の比較をすると、より実用的な栽培方法を確立できます。また、作業工程に詳しいベテランの農業者にアドバイスをもらうなどして、栽培方法(設備含む)を決定するようにしましょう。

プレミアム化も可能に

「地植え」以外の栽培場所が地面から切り離されている栽培の場合、雑草の発生、病害虫の発生リスクを減らすことが可能になります。そのため、農薬散布する回数が減り、農薬のコスト、散布者の労働コストを抑えることができます。また、「無農薬」や「減農薬」として付加価値をつけてプレミアム農産物として販売すれば、イニシャルコストをカバーできる増収が見込まれ、投資回収が容易になるかもしれません。

まとめ

このように、作業し易い環境やリスク回避の要素が多ければ、安定した栽培環境が整い、コスト削減にも繋がります。栽培方法の選択は慎重に行い、長期的な視点での経済的な運営を目指しましょう。

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