オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第41回 日本の目標「2030年までに食糧自給率45%、輸出額5兆円」の達成ノウハウ(マーケティング編:その1)
日本の農産物は高品質な「プレミアム農産物」として、オーストラリアを始め、多くの国で周知されています。言い換えると、すでに海外展開する上でのブランディングは成功していると言っても過言ではありません。ただ、近年の未曾有の危機の状況下では、従来通りのマーケティング手法では、対応できない現実があるのは確かです。今回はそんな状況下でも対応できるマーケティングノウハウについて解説します。
リスクヘッジのために、先ずはオーストラリアで「テストマーケティング」を
オーストラリアは、アジア諸国に比べ、農産物の輸出候補先と挙げられることが少ないと言えます。 「農業大国で競合が多い、人口が少なく新規開拓の余地が無い」、として輸出対象国として除外されるケースが多いかもしれません。 しかし、オーストラリアは年間平均給与所得が約900万円(2024年時点)を超える高所得国で プレミアム市場の需要が依然として高い地域です。 特に、高所得層の間では、 農業、食品企業のブランド戦略が成功していることもあり、「ビーガン」「ベジタリアン」 「オーガニック」といった高価格帯の食品カテゴリーが人気を集めています。そのため、日本の高品質農産物もこの市場で競争力を持つ可能性があります。
しかし、日本から見ると、オーストラリアは、東〜東南アジア諸国に比べ、農産物の輸出候補先と挙げられることが少ないと言えます。その主な要因は、オーストラリアは、「①農業大国で競合が多い、②人口が少なく新規開拓の余地が無い」として輸出対象国として除外されるケースが多いことです。しかし、世界的にみると、オーストラリアは、海外進出のための出発点の地、即ち「テストマーケティング」の地として知られており、同国で成功したビジネスモデルは全世界で通用すると言われるほどです。そのため、リスクヘッジを目的にオーストラリアで成功したビジネスモデルをベースとして、本格的にグローバル展開するといった企業が多くあります。
オーストラリアの国内市場から「世界のトレンド」が分かる
テストマーケティングの地として最適なオーストラリアで売られている農産物の製品分析することで、「世界のトレンド」のノウハウを理解することができます。生産された7割以上が輸出されているオーストラリアの農産物は、「国際標準規格」の基で生産されており、国内の大手スーパーマーケット(WoolworthsやColes等)の農産物においても、国際標準規格で取引されています。また、一般的に、出荷基準そのものが、国際標準規格がベースになっているため、多くの生産者は、敢えて「国内用、輸出用」に栽培方法を変えて、生産していません(※輸出用に栽培する場合、品質管理費等の負担が増えるため、生産者による)。
また、ビジネス進出で重要な法律の側面をみると、グローバルな法律のノウハウが蓄積されている点がメリットと言えます。 超多国籍国家(アジアと西洋の文化が融合した)オーストラリアは、 州法など、欧米と共通の法律が存在し グローバル展開を目指す企業にとって法的リスクについて試験、軽減できる環境が整っています。 また、自由貿易協定の締結により、海外取引が容易であることも大きな利点です。 関税などの貿易障壁を心配する必要が少なく、スムーズな市場参入が可能です。 オーストラリアの多国籍性は、グローバルな農業ビジネス展開を目指す企業にとって魅力的と言えます。