感染対策としてのオンライン診療(導入者目線①)

<記事で伝えたいこと>
オンライン診療を医療機関が始めるのはどれくらい大変なのか。
それを現状の追い風ムードに流されないように考えてみました。
多くの医療現場ではITと規制に精通した方がいないはずで、セキュリティを気にしすぎてオンライン化が進まなかったり、逆に野放しで問題が顕在化したときに大変なことになる可能性も。
こういうまとめをマンパワーがある医療機関がやってシェアすれば、少しは役に立つのかなと思います。

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新型コロナウイルスによる感染症が猛威を振るう中で、医療現場をささえるために様々な施策が打ち出され、遠隔医療ベンダーがシステム利用の無償提供を発表しています。

参考:ポケットドクターさん
https://www.pocketdoctor.jp/med/info/new/1303.html
参考:Joinさん
https://www.allm.net/2020/02/27/8806/

一方で、実際に始めるとなると実務的には現状の規制を理解し、それに適合する形で進めていく必要があり、この点既存のパッケージ化された製品を使用すると一定程度ルールに適合した形で始められるのかなと思います。一方で、そもそも医療現場として求めているのはどういったオンライン診療の形であるのか考える必要があります。

患者さんが求めるオンライン診療は「自分が新型コロナウイルスにかからないように、ハイリスクな場所には出かけない」です。もう少し公衆衛生的な目線を入れると「自分が保菌者だった場合に他の人をリスクにさらすことになるので出かけない」ですが、

医療現場では、診療の質を(リソースの許す範囲で)確保したうえで、
・いかに医療従事者の感染リスクを減らすか
(従事者の不安削減の観点、院内感染が広がって業務継続不可とならないよう医療機関としてのBCPの観点)
・すでに診療責任を負っている既存の患者さんに対して、どのように医療を提供するか
・組織を運営するために必要な収入(診療報酬)の確保
などの目的でオンライン診療を行うことになるのではないかと思います。
※「オンライン診療」は規制上の定義が存在していますが、本文ではテレビ電話を用いた診療行為全般をわかりやすくオンライン診療と記載します。

医療機関でオンライン診療を実際に立ち上げるにあたっては、まず現状の規制を確認する必要があります。
オンライン診療規制の大元は、医師法20条の無診療診察の禁止と、個人情報保護関連法、厚生労働省の定める「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」にあるのですが、これらをひっくるめた形で「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、オンライン診療ガイドライン)が整備されているので、システム的にはそれを踏まえて対応を考えます。

オンライン診療ガイドライン上求められているのは以下の項目。

1.オンライン診療の提供に関する事項
 (1)医師-患者関係/患者合意
 (2)適用対象
 (3)診療計画
 (4)本人確認
 (5)薬剤処方・管理
 (6)診察方法
2.オンライン診療の提供体制に関する事項
 (1)医師の所在
 (2)患者の所在
 (3)患者が看護師等といる場合のオンライン診療
 (4)患者が医師といる場合のオンライン診療
 (5)通信環境(情報セキュリティ・プライバシー・利用端末)
3.その他オンライン診療に関連する事項
 (1)医師教育/患者教育
 (2)質評価/フィードバック
 (3)エビデンスの蓄積

初めからオンライン診療でやってもいいこと全部入りでルールを作ろうとすると膨大なので、まずは最低限で医療現場の役に立つことから着手しようと思います。
うちの場合は、「コロナ軽症者の入院患者について不要なコンタクトをなるべく避けたい」。昨今、防護服等の不足が言われていることを考えても患者と医用従事者の接触機会を減らして従事者のリスク低減と感染予防に必要な物品の節約をする、リーズナブルだと思います。
まず、接触が必要な業務と不要な業務に分け、接触しなくても実施可能な業務の洗い出しや接触が必要なタイミングでまとめて実施可能なことを整理します。

入院患者を中心にアプローチを考えると、対面による指導が必須の管理料等のスキームでオンライン診療を使用しなければ、診療報酬に対しては特に影響がありません。
サージカルマスク(現状では50円くらい?)、N95マスク(同300円?)、フェイスガード(同800円?)、防護服(同2000円?)と1つあたりの値段があがり、どういったシーンで廃棄するのかによってコスト感が変わってきますが、オンライン診療により消費量の削減ができればコストメリットは出てきそうです。

次では、具体的な規制項目と対応方法を記載する予定です。

※内容は個人の意見であり、所属する組織を代表するものではありません
※内容の正確性に努めておりますが、本記事を参考にしたことにより発生するいかなる損害も補償しません

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