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仮想神社、移住斡旋

バーチャル:YAYOI Forest Shrine

私は別に信心深い方ではない。典型的な、「クリスマスは楽しみ、1週間後には初詣に行く」タイプだ。

まぁ、ヒトが怖くて初詣なんてものにはついぞいったことはないのだが。

そんな私が、わざわざバーチャル世界で、神社のワールドに入ったのは、『神社の境内ってギャルゲーとかでは鉄板のイベント舞台だよな』と、あまりにも俗なことを思いついたからだった。

私が人生を捧げたある恋愛シミュレーションゲームでは、神社の境内で、ヒロインが自身にとって最も大切だったあるモノを焼き捨てるシーンがあった。

あるアニメでは、ある夏に神社で不思議な少女と会うことで物語が転回していった。

それに、フィクションの夏、あるいは冬に、ボーイ・ミーツ・ガールするのも大体神社だ。

お参りをする場所、宗教的な場所というよりも、特にフィクションの世界では、「出会い」の舞台装置として使われるのが、神社だと思った。

そういうわけで、私はバーチャル世界で神社のワールドに赴く。私にしては珍しく、誰でも入ってこられるように設定して。

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別に、偶然ここに誰かが入ってきて、それこそ恋愛シミュレーションゲームや漫画のように、私のバーチャル人生という「物語」が転回していくことを望んではいないけれど、同時に、せっかくなのだから、少なくともなにがしかの「動き」が、私に生じることを期待した。


…まぁ、当然だが、ゲームとは違いそんなに甘いものはこの世にはない。いや、厳密に言えばこのVR世界は「ゲーム」ではあるのだが。


それはそうだ。突然誰かがやってきて、まさに運命のヒトとでもいうべき誰かが、都合よく「友達になりましょう!」なんてことはない。

内心は、甘い自分に苦笑いしながらも、なんてことはなかったように、普通にこの神社のワールドを散策することにした。誰も「なんてことはなかった」ようなふるまいを見てはいないのに。

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坂を登ると、神社の本殿がみえる。ワールド全体には霧がかかっているような感じ。ありていに言うと、少々怖いというか、プラスにとらえるならば神気が漂っているとでもいうのだろうか。

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本殿の周囲をぐるりとまわり、バーチャル世界とはいえしっかりお参りをしようと思った。願い事を考える。

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・・・一応、最初の欲求にすなおになっておくか。

『どうか新たな出会いがありますように。願わくばそれが楽しい出会いでありますように』

今の心境ならこれしかないだろう。そう思い、この願いをもってお参りする。

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二礼、二拍手、一礼

顔をあげ、もう一度本殿をみる。バーチャル世界に「神」はいるのだろうか。

カシコミカシコミ。電子の神よ、仮想の神よ。バーチャル世界が常に平和であらんことを。


リアルワールド:某所

ビルの谷間に小さな祠を見つけた。え、こんなところに?と思うような、変な立地にポツンとあった。

なるほど、近くにあった由来、いや注意書きによれば、元々あった祠を、ビルを取り壊し、建て直す際に、当初のサイズより大分小さくして新たに設置したのだという。

コンクリとガラスに囲まれた祠はなんとなく居づらそうにしている。取り壊されなかっただけマシ、なのかもしれないが、肩身が狭そうな祠は少々可哀想だった。

そういえば。そういえばあるゲームでは、「信仰心」をかつてほど得られなくなった神様が、まだ魔術や魔法が残る土地に移住するという話があったな。

そうだ。せっかくですし、こういう神様たちに、バーチャル世界への移住をお勧めしますよ。

びっくりするくらい大きな神社はすでにたくさんありますし、人もたくさん集まってきていて活気もリアルワールドとはくらべものになりません。

名前もわからないけど、都会で小さくなって生きている祭神の皆さん、ぜひバーチャル世界への移住をご検討くださいね。

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