「ポルトガル・リスボンの裁判所 1万7101人と発表されていたコロナ死者を152人と認定」は誤り
検証対象
判定
誤り (判定の基準について)
裁判所は、「法務省に雇用された医師が、152人の死亡を新型コロナウイルスによるものとして登録した」と回答しただけだ。同裁判所が新型コロナウイルスによる死者1万7101人とのデータを捏造だと結論付けた事実はなかった。また保健省は、この言説が広まった2021年8月までに1万7000人以上の死者数を報告している。
ファクトチェック
昨年8月に広まった言説が再度拡散
昨年8月にも同じ画像を使った別のユーザーのツイートが拡散し、約1100RTされていた。
ツイートに添付された画像は、2021年8月5日に発行された『週刊事実報道 321号』を抜粋したものとみられる。
本当に「リスボンにある裁判所はこのデータ(*筆者注:ポルトガルにおける新型コロナウイルスの感染者は88万2006人、死者1万7101人)を捏造であるとし、コロナ死亡と確認された症例は152人(政府発表の0.9%)だと結論付けた」のか。以下、詳しく見ていく。
152人は法務省勤務の医師が報告した数字
ポルトガルのファクトチェック機関Poligrafoによると、事の経緯は以下の通りだ。
リスボン行政裁判所(Tribunal Administrativo de Círculo de Lisboa)が、新型コロナウイルスに関する市民の問い合わせに文書で回答を公開した。
この文書の中には、ポルトガルの死亡診断書情報システムを検索したところ、法務省勤務の医師が152人の死亡を新型コロナウイルスによるものとして登録していたとの記述があった。
この回答を根拠に、実際に亡くなった死者数は約1万7000人ではなく、152人だという言説が拡散していったと考えられる。
ほとんどのケースは保健省管轄の医師が報告
しかし、Poligrafoは保険総局の話として、「死亡証明書の大部分は、保健省管轄の医師によって発行されている(grande maioria dos certificados de óbito são emitidos por médicos com vínculo ao Ministério da Saúde)」と報じている。
つまり、リスボン行政裁判所はあくまで法務省勤務の医師が登録した死者数を回答しただけであり、大部分にあたる保健省管轄の医師が登録した死者数については何も言っていない。
また、同様の言説が拡散していた2021年8月時点で、1万7000人以上の新型コロナウイルスによる死者が出ていたとポルトガル保健省は発表している。なお、2022年1月19日時点で同死者数は1万9413人となっている。
従って、「リスボンにある裁判所はこのデータ(*筆者注:ポルトガルにおける新型コロナウイルスの感染者は88万2006人、死者1万7101人)を捏造であるとし、コロナ死亡と確認された症例は152人(政府発表の0.9%)だと結論付けた」という言説は誤りであると判定した。
複数の海外メディアが検証済み
同様の言説は英語圏でも拡散されており、FULL FACT、ロイター通信、LEAD STORIESがファクトチェック記事を配信している。
(鳥尾祐太)
謝辞
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