無題

なぜか無料の企業開業セミナー 意外にも不思議な優しさと充足感に包まれた話

 「無料セミナーに行ってみる」第2弾です。参加してみたのは、こちら。

10・20代限定 起業・開業・独立 支援セミナー

 僕はこれから起業しようとか独立しようとか、そういうつもりはまったくありません。まあ、将来的には考えてみたいかな、という程度です。例えば10年後くらいにフリーランスになるという選択肢がきちんとあればいいな、というような。興味を持つプロジェクト数件にアサインして食っていく、みたいな。

 世の中には、起業した人も独立した人も、すでに星の数ほどいます。彼らはTwitterやnoteで発信したり、YoutubeやPodcastで喋ったり、本を書いて出版したりと、さまざまな形で経験や考えをアウトプットしています。

 企業や独立について知りたいのであれば、こうしたものを通して情報や知識を得る人が多いでしょう。では、なぜセミナーが存在するのか。しかも無料、平日の真昼間。疑問は尽きません。ということで、参加してみました。結果、解けた点も解けていない点もありますが、書き留めておこうと思います。

 なお、今回もなんとなく、主催者名は伏せます。B社としておきます。

4人しか入れない会議室、まさかの1対1

 参加直後にはこんなツイートをしました。

 「セミナー」というと、講師1人に対して聞き手が数人~数十人くらいをイメージする人が多いと思います。僕もそのように想像していました。しかし残念ながら、1対1でした。凶器で脅されたら一巻の終わりという状況。参加者数は事前に聞きたいものですね、心持ちがかなり変わってきます。

 「謎のコンサルタント」と書いていますが、謎というより、どこにでもいそうな優しそうな風体のおじさんでした。物腰柔らかで、40代くらいでしょうか。有名企業もクライアントに持つコンサルタントで、MBAも取っているとのこと。

無理やり書かされる起業の内容 でも納得してしまったその理由は

 「とりあえず、これね、書いてくれる?」と渡されたのは、起業内容の予定を書き込むシート。業界や業種、時期、資本金、役員数、従業員数など、詳細に書き込む欄が続いていました。面食らいつつも、「いや、今日は企業の相談に来たんだから当たり前だ」と自分に言い聞かせ、考え始めました。

 平静を装っていたつもりでしたが、おじさんはぼくの心情を読み取ったのか、「普通、いきなりこれ全部は書けないよ」と優しいことばが届きます。よくわからない感覚に陥りながら、とりあえず埋め始めると、それぞれの記入欄ごとに解説をしてくれました。

 そして記入を終えてひとこと、「起業をしようと思ったときに、これを埋めるのがいちばん大変なんだよ。これを埋められただけでもう準備の8割が進んだも同然」

 僕が書いた主な内容は以下の通り。

業界
 第1希望 地域活性化
 第2希望 スポーツ
資本金
 10万円
時期
 2025年4月
従業員数
 0人

 それっぽく埋めました。不自然なところは特になかったようで、記入内容に対する指摘などは無し。「じゃあ、このためにいま、足りないことを、この2025年4月までに経験することになるね」とのことばをもらう。シンプルでわかりやすい助言です。

 そしてようやく、難しい指摘も出てきました。「地域活性化も、スポーツも、ぼくは結構経験してきたんだけど、これをビジネスにするのって本当に難しいんだよね。いずれも、有名な企業とかないでしょ。そういうことなんだよ、もうかる術がない」と。

 そんなことはわかっている、それをなんとかするために相談に来たし、それをなんとかするためにどんなことをこれからすればいいのかを探ろうとしているのだ、と胸にモヤモヤが浮かび始めます。それでもおじさんは冷静に、諭すように、いろいろな話をしてくれます。心に残ったのが次の話。

 東北のある県で仕事を持っていて、よく行くんだけど、小学生がこんなことを言っていた。「お店が新しくできるのを見たことがない」。住んでたならわかると思うけど、地方って本当に大変。単純な話、人口が減っているから。仕事を新しくやろうにも、お客さんがいない。もうかるわけがない。

 小学生の話、こう改めて聞くと、衝撃を受けますよね。われわれ大人は、こうした子たちに、どんな明るい未来を描いてもらえるのでしょうか。構造的な大きな問題がたちはだかります。自分の甘さと、問題の深刻さを痛感しました。一方で、なんとかできないか、という気持ちも改めてわいてきました。

 このおじさん、やる気をくすぐるのが上手だな。ぼくに対してネガティブなことを一切言わないし。だんだんと話がおもしろくなってきました。

低学歴でも「行動力」で成功する、高学歴は「考え続ける」ことで成功が遠のく

 もうひとつ、心に残った話があります。

 大卒ということは、考える力が日本の中で上半分にいるということ。でも、失礼だとか自分は違うとか思うかもしれないけど、これを逆にいうと、行動力が無い方の半分だとも言えるんだよ。もちろん、どちらもあるのが一番いいんだけどね。それはなかなか難しい。

 まとめると次のようになります。

 大卒 : 考える力 高 ⇔ 行動力 低
 高卒 : 考える力 低 ⇔ 行動力 高

 おじさんの経験則では、「早く行動に移る方が成功する確率が高い」とのこと。自分の頭で考えるよりも、実際に行動して他人と関わっていくほうが事業は間違いなく良くなるということ。心から納得する話です。

 学歴で一律に言うのは乱暴ですが、思い当たるフシもかなりあるので、行動力はとにかく意識しないといけないなと改めて思ったところに、こんなひとことが飛んできます。

 でもここにこうやって来れてるだけマシだよ、普通はこんな行動も取らずに考え続けるもの。

帰り際の「本は読むな」

 帰り際、最後に気になることを聞いてみた。「起業や独立に関する本がたくさん出てますけど、こんな風に対面で話すことの良さってなんでしょう」と。するとおじさんは、

 ぼくは、本は読むな、って言ってる。

と驚きのひとこと。理由を尋ねると、「本を読んでも、差別化は考えられない」。成功例や正攻法は載っているが、人の真似をしても事業は成功しない、いかにきちんと差別化をするかが大切。そのためには本を読むよりまず行動、ということらしい。

 ちなみに、なぜ無料でこんなことをやっているのか、コンサルの客になってもらって儲けるのか、と尋ねたところ、「ボランティアみたいなものだよ、個人をコンサルしても儲からないし、起業のお客さんは成功すればするほど結局離れていくから、ぜんぜんビジネスにならない」と一笑に付されました。

 起業に向けて歩を進められたわけでは全くないけれど、不思議な充足感に包まれて帰路につくことになりました。1年に1回くらい、こういうの行ってみると面白そう。

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