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田舎者の江戸東京論

休日の朝。
一日をじっくりと愉しむために、早めに掃除や洗濯などを済ませねばならない。
まずはApple Musicで歌丸師匠の「中村仲蔵」を聴きながら、洗濯機の電源を入れる。
江戸の芝居町で繰り広げられる、歌舞伎役者のサクセスストーリー。
創意工夫をし自分流を生み出すことの大切さを学べる大好きな噺だ。 

そうこうするうちに家事が終了し、すっきりした気持ちになり、休みということで、自由ということで、冷蔵庫から缶ビールを取り出す型を継承し、駄目な大人を演じ、その後、家を出た。

その日のお目当ては決まっていた。
前回、ひどい二日酔いのために行き損ねた展覧会。
出光美術館「江戸絵画の華〈第1部〉若冲と江戸絵画」の予約を済ませていた。

まずは、上野駅近くの立ち食いそばで腹ごしらえをする。
せっかちな江戸っ子といえば蕎麦。
かけそば一択で食券を買い、さっと食べ終え、店を出ていく形のかっこよさ。

腹八分という心地の良い気分で、地下鉄へ乗車した。
うとうとしている間に日比谷へ到着し、美術館へ。

伊藤若冲の作品を鑑賞できたことはもちろん素晴らしい体験だったが、過去の情景と響き合いながら描かれた時世粧が、絵画を通じて想像できたことも、とても意義のある時間だった。

江戸絵画の華 / チケットと図録

展覧会の余韻に浸りながら浅草へ地下鉄で移動し、隅田川沿いを散歩した。
わたしの中では定番のコース。吾妻橋付近から桜橋へ。

サニーデイサービスの名盤「東京」を聴きながらゆっくりと歩く。
このアルバムの中には、若かりし頃に憧れ、思い描いた90年代の東京、そこで生まれる青春の情景が描かれている。

江戸、そして現在の東京。
そこには人があふれ、様々なドラマが映し出される。

桜橋から見える、美しく光るタワーを眺め、菊水のふたを開けた。

ふなぐち 菊水 一番しぼり

酒を飲みながら眺める東京の空は、曇っているにもかかわらず、相も変わらず、都会的でお洒落な雰囲気を魅せてくれる。
多分、この空は江戸の時代も同じだったのだろう。

その時、ふと思った。
このお気に入りの酒は、新潟出身だったよな。
わたしは茨城出身だ。

そういえば、東京ってそんなところだった。

東京で暮らし、25年も経っているというのに、今もなお、東京を愉しむことができる理由。
それは、生粋の田舎者であるが故の、東京への憧れ。
この関係性こそが、東京を愉しむ術なのだ。

その後、少し冷えてきた夜の帰り道に現れた見返り柳が、散歩の終わりを告げた。

見返り柳

誰にも邪魔されることなく好きなことをして過ごす休日。
一人時間が与えてくれる効能は、心地のよい疲れ。

帰宅後、圓楽師匠の「浜野矩随」を聴きながら、50歳も近くなり、一皮むけたな、などと言われ、次のステージへ進まねば、と夢の世界へ。
寝落ちするのでした.

shiba

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