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『ジョニーぶらり旅』グアム編⑥

 オレンジジュース1杯で夜中3時まで踊っていたので、とにかく座りたかった。
 人のいないところに座るのが危なく思えたので、たむろしている付近に座ることにした。

 道端では、怪しいマッサージ勧誘のおばあさんが、通る人皆に声をかけていたが、私にだけは声をかけてこなかった。
 なぜか?私が薬中のふりをしていたからさ。なめられたら襲われかねないと考えて、変な動きをすることで誰も寄せ付けないようにしていた。
 必要以上にペットボトルを潰して地面に叩きつけてみたりと。

完璧に疲れている。思考がまともではない。

 タクシー代が馬鹿にならないグアムでは、なるべく歩いて少しでも出費を減らしたいところなので、しばらく歩き続けた。
 しかし、海外で夜中に歩くという恐ろしさを感じたので、行く時に使ったタクシーに電話し、来てもらうことにした。

 30分待っても来ない。耐えかねて、スーパーの前に座り込んでしまった。もう一度電話しても、「今向かっている」としか言わない。
 さらに数十分経って、ようやく来てくれた。どうやら、他の客を乗せていたみたいだ。

 そして私を乗せた後、さらにもう一人のワシントン出身の女性を乗せ始めた。
 その人を空港まで送ったあと、私の事をホテルまで送ってくれて、料金も割引してくれた。タクシーの相乗りなんて今時珍しい。

 四日目の朝。10時過ぎくらいに目が覚めた。最終日なのがとても寂しい。翌朝11時のフライトで帰国なので、最後の24時間を堪能しなければならない。
 まだグアムに来て、海にも入っていないし、お土産すら買っていない。そして、射撃すらしていない。
 最終日は射撃に行った後、もう一度モールに行って水着を買って、帰りに海に入ろう。

 タクシーに乗り込み、射撃場までと伝えた。
 すると、その射撃場のことを、知らないと言い始めた。
 そしてドライバーが、自分のスマホでルート検索をし始めた。
 「左方向です」
 スマホのナビは言った。
 しかしドライバーは違うと言って、右に行く。そしてそこから三回連続で右に曲がり、同じ道に戻ってくる始末…。
「we're back to same road man…」同じ道に戻ってるじゃんと言うと、
「yeahhhhhhhhh」とドライバーはヘラヘラしている。
 とっても困った。
 結果、本当にたどり着けず、タクシーを降りた後も、迷い続けた。

 諦めて個人経営の小さなコンビニに行って、飲み物を買うことにした。
 店内は暗い照明で、少しレトロな雰囲気だった。緑茶を買おうとペットボトルを手に取ると、英語で「ハニー入り」と書いてある。危ない危ない。甘い緑茶を飲むところだった。
 しっかりと甘くない方を選んで、レジに持っていこうとした。すると、もう一人がハニー入りの緑茶を選んでいるではないか。すかさず私は話しかけた。
「Do you like Japanese green tea?」緑茶好きなの?と聞くと
「 No. This is not mine. This is for my friend.」これは友達に持っていくやつなの。
「Ahhhhhhh. You should buy this one because that's fake Japanese tea. This one is the real.」なら、本物の緑茶にしたほうがいいよ。
 こんな感じで、本物の緑茶をごり押ししておいた。

 レジに行くと、お姉さんが椅子に座って接客をしていた。とても羨ましい。私もアルバイトをするときは、客が来ない間だけでも座っていたい。
 そのお姉さんに、射撃場の場所を聞くとこの近くにあると教えられた。
 そして再び射撃場を求めて歩き始めたが、しらないうちに個人の敷地に入り込んでしまい、急いで出てきた。
 まったく、撃たれたらどうしよう。

突然の行き止まり。

 結論、やはり射撃場は見当たらなかった。スマホの地図で射撃場と書いてあるところに行っても、全然違う建物だったのだ。
 もういいや。モールに行こう。

 そして、再び片道7キロを歩き始めたのだった。

 映画を観た時とと同じモールになんとかたどり着いた。前回よりも時間があるので、本屋やおもちゃ屋をみることができた。夢だったアメコミが沢山置かれている風景は、見ているだけで幸せになる。

こんないいものもある。

 モールの中の、服からサングラスや化粧品、雑貨など色々な物を扱っている店で、お土産と水着を買うことにした。
 カートには長い支柱が付いていて、どこに行っても居場所が分かるように設計されていた。
 服もかなり安く、大量生産で作られているのだろうなと感じた。個人的には、円安の中でも沢山お買い物できたので、よかった。
 合計6人分くらいのお土産を買い、一番安い水着も手に入れた。
 荷物になるので、レジで袋をくださいというと、売り切れと伝えられて、信じられなかった。レジ袋がないなんて。

 しかたなくバッグにギチギチに詰め込み、水着もはくことにした。

 時刻は14時頃。お昼ご飯の時間だ。

 「もう一度タコベルに行こう」

こんかいはブリトーも買った。

 再びタコベルに来て、今度はテイクアウトで注文をした。タコスのご神体を携え、ビーチへ急いだ。

 くもりの天気だったので絶景というほどではないが、やはり南国のビーチは新鮮である。傍に生えている木が、雰囲気があって日本と違う。

 ビーチには家族連れのアメリカ人だけしかいなかった。服を脱いで、いざ入水!
 南国の海はそこまで冷たくはない。ぬるいプールという感じだった。首元まで海水につかりたかったので、どんどん先に進んでいくも、いっこうに深くならない。グアムの海は遠浅らしい。
 しかたなく、お風呂のように座り込んでつかることにした。
 「うああああああああ~~」
 勿論、お風呂のように声はでる。
 やはり一人で海はすこし寂しいものだ。

 しばらく浸かって、お腹がすいてきたので、タコスを食べることにした。
 モールで7ドルで買ったサングラスをかけて、雰囲気を出す。

 夕方になり、すこし肌寒くなったので、海を後にした。さすがにアメリカ領グアムの海岸で、下半身を露出して着替える勇気はなかったので、そのまま帰路に就いた。
 すこし散策しながら帰っていると、人気のいない海岸に来た。かなりゴミが散乱していて、茂みもあって、人目に付かない。
 ここで着替えよう。
 すかさず、コソコソと下半身を露出してズボンをはき替える。さながら変態のようだ。見つかれば、撃たれてしまいそうだったので、冷や汗がでた。

 長い道のりを歩き、なんとかホテルに着いた。窓から見える、夕焼けの景色が何とも言えない。
 子供の頃の、もっと遊んでいたいのに、時間だから家に帰らなければいけない気持ちを思い出した。あの頃は、夕焼けが時間を知らせていたのであまり好きではなかった。
 しかし、今はゆっくりと座って見てられる。

 明日で帰国だ。英語しか聞かなかったこの時間にも、終わりがきている。

次回 最終章 4日目夜~帰国





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