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WBCに沸く今だからこそ考えたい

ヌートバーに魅了される理由

彼の人柄やバックボーンはもちろんだが、何に魅了されているかというと彼がやはり現役メジャーリーガーだからという点は紛れもない事実。
その一つ一つのプレーがプロフェッショナルであるからこそ野球ファンは魅かれるのだ。ポランコやウォーカー(例に挙げて申し訳ない)が良い外国人と評価されるのはそれだけ日本の球団単位レベルが低いからともいえる。もしポランコやウォーカーが日本代表の基準を満たしていたとして選出されたか否かを考えればわかることだ。ヌートバーでさえ選出された時点では懐疑的な意見も多かったように思う。
日本には通常MLBで契約してもらえない選手が来るので、ヌートバーのような選手を日本で見ることはできない。それが日本代表の選手として戦っているのだからファンが魅了されるのは必然であるとも言える。

MLBの最終決戦がワールドシリーズと呼ばれるのは世界各国から超一流選手が集結したリーグで戦っているからであり、WBCが各国である程度同等に戦えるのはMLBに集結していた選手が自国に戻り、かつ自国のトップ選手も含めたチーム編成をして戦っているから。
もし国籍やルーツの出場基準ではなく、各国リーグ代表のWBCならアメリカ一強で間違いないだろう。

広がるMLBとNPBの格差

日本経済の低迷は何も庶民の生活だけに影響があるわけではなく、プロスポーツの世界でも顕著な格差が生じている。
企業ランキングでも日本企業の名前がついにTOP50から消えたように、野球の世界でもMLBとNPBの市場規模はこの数十年で雲泥の差に広がった。
例えば年俸に関して。
あのイチローでもマリナーズ初年度年俸はオリックス時より約2億円高い程度で年俸推移はその年の活躍に応じて上がっていった。
野茂やイチローの活躍でいわゆる日本人選手の商品価値は上がり、その後MLBに移籍した選手の年俸に影響を与えたことは事実だが、日本でトップクラスの選手なら日本での年俸もある程度満足のいく数字であったし、またMLBは”夢”と”挑戦”が主でお金は二の次の部分もあった。
現に新庄は年俸が下がってもMLBに挑戦した。

ところが今年、吉田正尚は年俸約21億円でボストンに移籍することになる。
この数字は地元ボストンでも懐疑的にみられるほど高い年俸だ。
ここまでくると、もはやMLBは夢や挑戦ではなく活躍の場としての一つの選択肢になってくる。そしてその対価は選手生命を考えても高いほうがいいに決まっているので日本でプレーするかMLBでプレーするかの違いでしかなくなる。またMLBの選手待遇に関しての違いは言わずもがなだ。
そうなると元々MLBに興味がない選手でもトップ選手にのし上がればMLBでプレーする可能性は広がり、それは若ければ若いほどメジャー志向へと傾倒していくだろう。しかし今は日米の協定で海外FAかポスティングでの移籍、自由契約後しか方法はないので、FA以外は所属球団との交渉次第なのが現実。
だがそれも時代の流れとともに見直されていく方向に向かわざるを得なくなるのではないだろうか。

ただ現時点でも既にNPBはMLBのまるで下部組織のような状態。
国内FAに関しても喉から手が出るほど欲しいトップ選手はポスティングでMLBに移籍し、国内FA以上MLB未満の選手がFA移籍しているのが現状なので、国内FAはもうトレードに等しいほど破綻してしまっている。
そしてMLBで契約してもらえない外人選手を獲得し、またMLB挑戦も志半ばで戻ってくる選手に対してはどの球団が獲得するかという争奪戦になる。
こういう構図を考えれば日米の協定見直しはますます選手流出を加速させることになり、逆にMLBへの選手流出を防ぐ為に協定見直しも行わず球団もポスティングを認めない方向に向かうと時代の流れに逆らうことにもなる。
いずれにしてもNPBは何か対策を打ち出さないと衰退の一途をたどるのではないか。

WBCはMLBスカウトの恰好のマーケット

日本中がWBCで盛り上がっている今、ネット裏ではMLBスカウトによる日本人選手の品定めが着々と進んでいる。
高校野球で甲子園に各球団のスカウトが集結しているのと同じだ。
日本人選手だけではない。既に今大会中にニカラグアの投手が急遽マイナー契約を交わしている。
このようにMLBスカウトにとってWBCはマーケットの一つに過ぎず、移籍に問題のない場合はすぐに契約に持ち込めるし、移籍が自由ではない日本人選手をスカウティングしておくことも選手がポスティングした場合の入札基準になり重要だ。
そして今大会は特にダルビッシュや大谷がいるのだから比較もしやすい

またWBCはMLBとMLB選手会主催で行われているため、特に投手はカーショーのように出場を辞退するケースも多い。にもかかわらずガチンコで勝負に挑む日本人選手は活躍すれば活躍するほど、ファンの推しチームの選手はMLBの予備軍としてリストアップされMLBへ行く可能性も高まるというジレンマに陥るのだ。

まとめ

MLBは観客動員数が年々減少しているにもかかわらず莫大な放映権料が収入の大半を占め、また様々な改革により市場規模を拡大してきた。その結果選手年俸は高騰し今やドジャース1球団の選手年俸がNPB全選手の年俸を上回るほどになった。
この大会をきっかけに日本選手たちの何人かがまたMLBに行ってしまう可能性があることを考えるとますます日本の野球レベルは下がっていく。
現に巨人ではキャッチボールを教えなければならない選手に1億円の年俸を出すに至っている。アメリカ独立リーグでプレーする選手にとっては夢のある話だが、我々ファンにとってはお金を出して何を見せられているんだという話になる。
冒頭で述べたヌートバーなら逆に高額なお金を払ってでも見たいと思うはずだ。

こういう現実を踏まえるとトップレベルの野球を見るために眠たい目をこすりながら早朝深夜にMLBを見るファンも一層増えることは予想される。そしてその視聴率が上がれば上がるほどまたMLBの市場価値や規模が大きくなり、今以上にMLBとNPBの格差が広がっていくことにつながっていく。
日本の地上波中継が減少している反面、NHKでのMLB放送が多いことを考えてもわかることだ

小林至氏が提言していたようにNPBがMLBに参入するぐらいの大変革をしなければNPBはMLBへのステップリーグになってしまうのではないか?そんな心配も決して杞憂ではないと思う。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

※3月14日テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」のパネルコーナーを参考に自分なりの意見を述べさせていただきました。

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