思い出と時を奏でるのは【祖母の家に住みついた孫】
祖母の家に住みついて半年以上が経った。
その間に私に馴染んだ音がある。
それはこの振り子時計のボーンボーンという音だ。
5時になったら5回、11時になったら11回とその短針が指す数字の回数鳴る。
それはつまり夜中の12時でも、だ。
物心ついた頃からこの時計は祖母の家で鳴っていた。
その音は家中に響き渡るようになっていて、2階にいても、庭で遊んでいても聞こえるのだ。
3回なれば3時だと分かり、おやつの時間だと言わんばかりに祖父と祖母のいる居間へと上がる。そこには飴やら丸ぼうろやらが机の上にお菓子がドサっと置かれているのだ。
それをムッシャムッシャと頬張りながらテレビに映る水戸黄門を見ていた。
7回鳴れば母か父が迎えにくる。
それまでの間はじっちゃんの工具を取り出して遊んだり(じっちゃんは大工だった)、裏が白紙のチラシにお絵かきをしたりして時間を潰していた。
小さい頃は祖母の家に泊まることがなかったから気づかなかった。
まさか夜中の12時に12回もボーンボーンと鳴って起こしにくるとは…!
しかもよくよく聞いてみれば30分に1回ボーンと鳴るのだ!!笑
やっとウトウトしてきた矢先になんだってんだ!?
誰か!あの音色を止めてちょうだい!!
と最初のうちはウンウンうなされてよく眠れなかったが今はぐっすりさんだ。
たまにホテルなんかに泊まると「今何時かしら?ちょっとボンボン鳴らないから不便ね」なんて思うくらいになった。
慣れって怖い。
きっといつかこの話も懐かしくなるんだろうな。
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