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詩・小説

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思いついた言葉の倉庫です。 たまに深夜のテンションで小説も書きます。
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#歌詞になるやつ

【短編小説】ブラックホール病

ねぇパパ 「ねぇパパ、私はいつまでここにいなくちゃいけなの?」 娘のシルビアが曇りガラスの向こうに何か絵を描きながら言った。 「そうだね、もう少し、かな」 「もう少し?もう少しってどのくらい?」 屈託のない目でこちらを見てきた娘を見て唇を噛み締めた。 「そうだな…」 考えるふりをして下を向いた。いろんな感情が私を襲ってきたのを娘に悟られたくなかった。 「ねぇパパ!」私に考えがあると言わんばかりにシルビアが声を上げた。 「パパのいた場所で一緒に暮らせばいいんじゃない?」 「パ

黒幕を閉じる

夢から咲いたように笑って 黒幕だったのアタシ ピストル先っぽ見てた 叫ぶその間には 人生が一つ終わっている 階段突き落とされて 曲がる足元ふわつく 二つ目の命が尽きる 罪深きものを裁いて 嫌われていたのアタシ 歪む笑顔を見てた 移り行く場面ばかり 生ぬるい傷を庇っている 壇上突き落とされて ライト照らしたストーリー いくつもの後悔だらけ 望まない物語を書いたその手で 黒幕を その黒幕を閉じて わかり合いたいの 『信じられない』なんていう前に お願い 私がアタシであなた

ハイウェイ

近づく死期に沿って生き抜く僕はハイウェイ そばにいて欲しいよ 消毒の匂いで頭がちょっと変だ でも そばにいて欲しいよ 我儘かもしれないけど やりたいことは全部 君がいないとダメさ 夢を見ていたいよ コールで君を呼んで困らせてごめんね でも そばにいて欲しいよ 我儘かもしれないけど 眠れぬ街は叫びあって笑ってる 舞い降りる天使たちの声が合図だ ラッタった〜♪ラッタった 〜♫ 遠のく声のせいで死にゆく僕はハイウェイ そばにいて欲しいよ 青ざめた顔を見せちゃってごめんね でも

エンドロール

画面の隅で縮こまるのは 匿名を希望する人類 遊園地ではあの有名な剣を抜いてはしゃぐ大人たち うるさいよ あの声を早く消して 苦しいよ あの言葉を誰か消して 空っぽになる事もできずに 情報で埋まる未来の僕 スクショだらけのカメラロールで 法律に触れるラインを踏んで うるさいな その声を早く止めて 苦しいよ 「苦しいの?」 その言葉で僕を止めて パッと終わる ジ・エンド ハッピーにならない パッと終わる人生に君の顔が映る 泣かないでよ 君のそんな顔を最後にしたくないのに

夜をお散歩しよ

秘密の思い出に今を思う  あの夜 誰にも知られないように  あなたと一緒にいた時間 星屑はとっくに消えていったよ 生活は荒む パレードのよう 人当たりだけはいいアレらはなんなの あなたと一緒に歩いた 夜の散歩道がとっても恋しいよ 握りしめた小銭が落ちる 帰る場所の鍵を探しても どうせ 毎日をかき集め  口の中の飴玉は無くなって あなたはここから居なくなった どうせ 私はまた一人 秘密のドライブで抜け出した この夜を一人で過ごすためだけの あなたと一緒にいた時間 月の満

you got the love

両手を上げて 喜びに震えたんだ このままずっと苦しまないでいたい 誰にも邪魔はさせはしない …なんてね そもそもなんで理不尽な世界に生まれてしまったのか 教えてよ キラキラ光ってる 何億光年もの昔のお星様 この感情 知っている 手術台で 光を浴びて この感覚 知っている 呼吸器から送り出される酸素 期待から産声を上げるまで何秒? 他人から家族になるには後何年? そうやって繰り返すの 理不尽に寝かしつけて 愛をあげてやってよ あみだくじみたいな 生まれ様 あの日を忘れ

夏のおかえり

騒ぐ虫が落ちる頃には明日のことを考えている   現実は日常  帰り道の電柱の影 橋渡しみたいにその上を歩いた  考えなしの運命に戸惑う  薄紅色の雲あかりに魅了され  鳴る黒電話 風鈴の風  線香に群がる亡霊と白黒写真の証明書  墓地からは花火の光が舞い上がっては灰になっていく  明日は誰かが灰になっていく 騒ぐ隣人 聞こえるテレビ音 昨日放っておいた 朝顔は宿題 遠回りで急ぐ足跡 あのメロディーには捕まらないよう だんだん消える思い出に戸惑う 紺色の中の煌めきに誘わ

【詩/短編小説】魚の住処

ベランダの水槽は魚のいない住処  もう壊れているのに 「忘れないでよって 忘れないからなんなの?」 もう壊れているのに 一番乗りの教室で  あの子が来るのを待っている 散々喚いてその次は 我に返って泣くんでしょう? 仕方がないのと言い訳し 一人で終わりにするんでしょう? でもね 僕は許さないから 砕け散った破片は埃が積もり始めている もう忘れろよって 何にもない日々に戻り始めていくのは もう忘れるよって 下校時間の教室で  澄ましたあの子が待っている ざわめく人波帰

僕の先生

みんなはまだ覚えているかな? あの先生のことを 過ぎ去った日々を 大人になってから思い出す  あの先生のことを 見渡した未来を  どうしてこんな生活になった? クソみたいに吐き出す愚痴が止められない  片手の画面をフリックして 目の前の伽藍堂の闇を見て孤独に呆れている 運命から手を離したり伸ばしてどうにかこの橋の上にいる  一歩でも間違えたら僕は僕じゃなくなってしまいそうです 見守っていてよ 僕の先生 あの日のように  みんなはもう覚えていないだろうけど 私はいまだに思

この世界でまた君に会いたいな

君がいないから僕は探した その面影を  流れていく色に重ねるように その思い出を  例えば生まれ変わって そっくりな君の姿が 目の前にあったとしてそれは君なんだろうか? 例えば転生して そっくりに作られた世界 でも目の前の風景 それは僕の思い出と同じなのかな?  いろんな色が混沌とした 散りばめられたこの世界で  やっぱり君に会いたいな どこにいるの? 君のいない街 坂道 街頭 そのどれもが  薄れていくように渇いていった そのどれもは  例えば生まれ変わって そっく

そいつ

もういらない  使いもんにならんから捨てとくれ もうしらない  あんたなんか代えのきく人形や バカおっしゃい  言わんとってやったのに告げ口か だそうで  煙みたいにゆらゆらと  見下げる街はキラキラと  お楽しみはこれからで  いっそ呪ってやりてぇな ねぇ要らない?  塵にすらならん このゴミを ねぇ知らない?  墓場まで持っていくあの人形 馬鹿おっしゃい  詭弁ばっか宣うて恥知らずが だもんで  火種みたいに燃え移る  見限るなれど今更で  お陰でこっちも同じ穴 

壊れたプレイヤー

何にもなくて壊れちゃいそうだよ  子供の頃からずっと感じていた  空っぽの体に棲みつく悪魔が意地悪な言葉で僕を弱らせる  あと何回傷つけばいいんだろう?  夜の街に繰り出す僕のハートに火をつけて  ガラクタの体に棲みつく悪魔が この頃 僕に優しくしてくるんだ  大切なものってどうしてこんなに音もなく簡単に壊れてしまうの?  あの日の過ちが手招きしてる  夜の街に繰り出す僕のハートに火をつけて  壊れていく音楽に乗った僕らに火をつけて

もうここには彼女はいない

祭壇に添えた老人は粒々の涙を流し始めた 牢にいた生活のように 彼女のことを思い出しては嘆いた 帰ろう、ここにはいない 帰ろう、彼女はいない 祭壇に添えた花束に煌々と照りつける太陽の火 蝋に似た生活のせいで 彼女のことを忘れてしまっていた、と 帰ろう、ここにはいない 帰ろう、彼女はいない 見下ろした街に微笑む 洗濯物は嵩張ってカゴの外へ ドアの向こうに感じる あの温かい声で もう一度 僕の名前を呼んで 帰ろう、彼女はいない 帰ろう、ここには居ないから

彼女の月曜日

憂鬱な月曜の朝に 彼女はコーヒーを飲んだ 甘いけど苦いから 足りないのは何? 痛い期待 つまんない ここから早く出たい 大好きな存在を全部 取り上げて笑う愚弄者 彼女はもう知っていた ここに答えはない 詰まる息苦しくて ここから早く出たい そのままの私を受け止められないのなら ひとりになりたいの 放っておいて欲しいの 毎日が月曜日のよう 痛み止め 空のコップと 彼女はもう泣いていた 追い詰めたのは誰? その問いに答えはない ここから早く出たい そのままの私を受け止めら