マガジンのカバー画像

詩・小説

55
思いついた言葉の倉庫です。 たまに深夜のテンションで小説も書きます。
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

you got the love

両手を上げて 喜びに震えたんだ このままずっと苦しまないでいたい 誰にも邪魔はさせはしない …なんてね そもそもなんで理不尽な世界に生まれてしまったのか 教えてよ キラキラ光ってる 何億光年もの昔のお星様 この感情 知っている 手術台で 光を浴びて この感覚 知っている 呼吸器から送り出される酸素 期待から産声を上げるまで何秒? 他人から家族になるには後何年? そうやって繰り返すの 理不尽に寝かしつけて 愛をあげてやってよ あみだくじみたいな 生まれ様 あの日を忘れ

バースディケーキ

最近おかしいって思うんだ あの子の思い出は年々 輝く どうして見方が違えばこうも 残酷なままでいられるのか 最近おかしいって思うんだ 私の記憶ではさらに腐ってく どうしてこうも見方が違うと 鈍感なままでいられるのか ハッピーバースデー ロウソクの揺らめき トラウマの解放 ハッピーバースデー ケーキの重さにのたうち回るよ スーパーで待つ車 バス停のベンチ広告 自由の儚さに手錠をして 地下鉄に押し込んだ それぞれの思惑 ハッピーバースデー ロウソクの揺らめき トラウマの始

夏のおかえり

騒ぐ虫が落ちる頃には明日のことを考えている   現実は日常  帰り道の電柱の影 橋渡しみたいにその上を歩いた  考えなしの運命に戸惑う  薄紅色の雲あかりに魅了され  鳴る黒電話 風鈴の風  線香に群がる亡霊と白黒写真の証明書  墓地からは花火の光が舞い上がっては灰になっていく  明日は誰かが灰になっていく 騒ぐ隣人 聞こえるテレビ音 昨日放っておいた 朝顔は宿題 遠回りで急ぐ足跡 あのメロディーには捕まらないよう だんだん消える思い出に戸惑う 紺色の中の煌めきに誘わ

【詩/短編小説】魚の住処

ベランダの水槽は魚のいない住処  もう壊れているのに 「忘れないでよって 忘れないからなんなの?」 もう壊れているのに 一番乗りの教室で  あの子が来るのを待っている 散々喚いてその次は 我に返って泣くんでしょう? 仕方がないのと言い訳し 一人で終わりにするんでしょう? でもね 僕は許さないから 砕け散った破片は埃が積もり始めている もう忘れろよって 何にもない日々に戻り始めていくのは もう忘れるよって 下校時間の教室で  澄ましたあの子が待っている ざわめく人波帰