見出し画像

東欧グルーヴ 通信(1)

こんにちは。『東欧グルーヴ・ディスクガイド』著者の市来です。
書籍には650枚超のレコードを掲載させていただきましたが、まだまだ紹介できていないものがたくさんあります。ここでは私が新たに購入したレコードをDiscogsリンクと音源付きで紹介していきますので、東欧グルーヴの深淵な世界を一緒に旅していきましょう。

拙著はこちら!

1)Държавен естраден оркестър на АССР『S/T』

(ブルガリア、73年 Балкантон:ВТА 1564)

12''

Konstantin Orbelyan率いるソ連ファンクの伝説、アルメニア国立ジャズオーケストラが73年の国際歌謡祭「黄金のオルフェウス」で残した演奏を収録した実況録音盤。彼らの作品はその溢れるファンクネスとアルメニアらしいエキゾチックな旋律によって世界中のDJを魅了し、全てが高額レア盤となっている。ブルガリアに残された本作も例外ではないが、ソ連でリリースされたものに比べると若干お求めやすいか。彼らのライブでの録音も貴重な一枚だ。
Discogs

2)Бисер Киров / Стефка Берова, Йордан Марчинков『Песента на „Всяка Неделя″: Хималайци / Двете девятки』

(ブルガリア、81年 Балкантон:ВТК 3612)

7''

通販番組「毎週日曜日に(Всяка неделя)」は120分の生放送で、ニュースや歌謡曲なども含んだエンタメ色の強い内容だった。おそらく日本のワイド・ショーのようなものに近いと思われる。この番組出身の歌はコンピや7インチでリリースされていて、ここでしか聴けないものも多いので要チェックだ。本作はヒマラヤについて歌ったものをA面に、サッカーに関する歌をB面に収録している。A面のオブスキュアなヒマラヤ・ソングは必聴で、反響する妖艶なコーラスとダンディな男性ヴォーカル、そしてメロウな演奏が組み合わさった珠玉のグルーヴ歌謡となっている。
Discogs

3)Raga-Sangit『Muzyka z księgi』

(ポーランド、89年  Polskie Nagrania Muza:SX 2726)

12''

現代音楽、クラシック、伝統音楽などの演奏家が集まり、インド音楽に挑戦した異色の作品。演奏するのは全員ポーランド人だが、その演奏は本格的だ。バーンスリーのソロに始まり、タブラやサーランギなど伝統楽器を披露。中にはラーガについて詳細に解説したインサートも付属している。教会での演奏を録音しており、フィールド・レコーディング好きにもオススメできるかもしれない。
Discogs

4)Electrecord Soul Group『In The Heat of The Night』

(ルーマニア、70年 Electrecord:45-EDC 10.139)

EP

西側ソウルの名曲を集めた企画EP。Electrecord Soul Groupなるグループ名でリリースされているが、Alexandru Imre率いるOrchestra Electrecordが演奏している。A面はヴォーカル入りで、しかも英語で歌唱されているのは中々珍しい。ソウルフルな歌声も本格的だ。B面にはインスト曲を収録し、B-2では名サックス奏者Dan Mîndrilăの演奏を聴くことができる。メンフィスの風を感じる一枚。
Discogs

5)Mr. Z'oob『To tylko ja』

(ポーランド、86年  Polskie Nagrania Muza:SX 2294)

12''

Mr. Z'oobは83年に結成されたオルタナティブ・ロックグループ。レゲエやスカに影響を受け、さらにそこに東欧のエッセンスが加わったことで、Emir Kusturica & The No Smoking Orchestraを彷彿とさせる独特なサウンドとなっている。騒々しいドラムの上で疾走するブラスのアンサンブルの高揚感がたまらない。変拍子も飛び出すA-5がオススメだ。ジャケットもクールな一枚。
☞Discogs

6)Grupa Vox, Alex Band『Lucy / Serce sierota』

(ポーランド、80年  Tonpress:S-251)

7''

ヴォーカル・グループVoxによるシングル。演奏は80年代ポーランドを象徴するフュージョングループAlex Bandが担当している。B面はアルバム未収録の一曲だが、メロウなAORに仕上がっておりVox史上最高のクオリティだ。洗練されたヴォーカル・アンサンブルと甘美なストリングス、艶やかなブラスが完璧に調和した編曲も見事。作編曲を手掛けたのはもちろん、Alex Bandのリーダーであり優れたコンポーザーでもあるAleksander Maliszewskiだ。超オススメ!
Discogs

7)Емилия Маркова『Вечерна боса нова / Тази нощ』

(ブルガリア、71年  Балкантон:ВТК 3099)

7''

VOCTRのヴォーカリストとして60年代半ばにデビューしたEmilia Markovaは、69年の国際歌謡祭「黄金のオルフェウス」で1位を獲得。その後も高い歌唱力が評価され、国内外のコンクールで上位の成績を収めた。80年代に表舞台から去ってしまったため、その作品はシングル数枚のみと少ないのが残念だ。本作は中でもオススメの一枚で、巨匠コンポーザーMoris Aladjemが作曲と演奏指揮を手掛けたボッサがA面に収録されている。Markovaの歌唱がセクシーに艶めく、ムーディな名曲。高音の伸びには驚かされる。
Discogs

8)Big Band LŠU F. Chopina v Mariánských Lázních『Mini medailón - Nechci nic』

(チェコスロヴァキア、89年  Supraphon:11 0269-7 511)

EP

これは平均年齢わずか14歳の若者たちによって構成されたビッグ・バンドによる、唯一のレコードだ。彼らはマリアーンスケー・ラーズニェにあるショパン民俗芸術学校の生徒たち。60年代に校内で設立されたビッグ・バンドが徐々に成長を遂げ、86年にはポーランドで開催された青少年アンサンブルの国際コンクールで優勝を果たしたという。88年には海外ツアーも実施し、西側諸国も含む世界のリスナーを驚かせた。作曲家にはRudolf Dašek
やMilan Dvořákといったチェコ最高峰のミュージシャンが名を連ね、楽曲のクオリティも高い。シンセサイザーも入った珠玉のジャズ・ロックB-1は必聴!

Discogs


またレコードが届いたら記事にします。
X(ツイッター)ではディグの成果をいち早く報告していますので、
そちらも是非。

最後までお読みくださりありがとうございました!
よければスキ&フォローをお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?