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もうひとりの自分 第5話

私は12歳になった。早生まれなので中学1年になるべき年齢である。
しかし私には頼りになる人間が一切いない。
なので世間で起きている情報は一切知らない。
12歳になった私だが、他の人はどうなっているか
知らないがあまりまともな飲食物を口にしないせいで
本当に12なのかと思うくらい背が低い感覚にある。
だが身長を測る道具がない。
こんな小人なまま夜を歩いていると
さすがに誘拐はされないが、警察に補導され孤児院に
連れて行かれたらそれこそ面倒である。
何故なら自分のバッグに大金が入っているからだ。
これぞ命の次に大事であり生活そのものでもある。
さて私にはお金のほかに得ているものがもう1つある。
住まいだ。
といっても誰が住んでいたか知らない空き家である。

「イメージです」
外見はボロだが、中に入ると古い家であるがしっかりした作りだ。
「イメージです」
誰も使わない人がいない地域に空き家なんてのは私にとって絶好の機会だ。ただ気掛かりなのが、バカな若者連中が肝試しと称して荒らしまくること。ここで私が見つかったら…と思うとゾッとして眠れない。

私はこの古い空き家でいい歳になるまで暮らすことに
した。
当然空き家なので電気ガス水道は一切通らない。
そしてこの空き家周辺は雑草に覆われたまさに辺境と
呼んでも過言ではない廃れた場所なので
コンビニとかコインランドリーどころか自動販売機
すらない。
そのため夜になると真っ暗であり寝るしかなかった。

さて夢の中の私は中学3年を迎え高校受験の勉強に
励んでいた。
一生懸命勉強して公立のいいところの高校に受かれば、両親から多少一人前と認めてくれるだろう。
私は公立高校合格にこだわりながら勉強した。1、2年の通知表を見ればオール5とまではいかないが
9科目中6科目が「5」残り3科目が「4」といい成績で
ある。
しかし勉強はできるが他の面に関しては散々だった。
私を見てくれる相手がいない。私が教室に入っても
誰も振り向かない。
あるとき音楽の授業をしていて楽器を片付けているとき鍵がかかる音が聞こえた。おいおいそれはないだろ。
案の定音楽室の隣ある今私がいる楽器保管室のドアが
開かない。
私は吹奏楽部部員が来るまで1日を過ごさざるを
得なかった。
深夜になったころか。ピアノの音で目を覚ました。
となりの音楽室にはグランドピアノという大きな
ピアノが置かれていた。
そのときドアが自然と開いた。
ドアからこっそり音楽室の様子を見るとピアノの椅子に誰か座っている。
モジャモジャ頭のコートかなんだかわからない分厚い
洋服を着たいかにも現代に生きているではない人物が
ピアノを弾いていた。
まさか…。音楽室といえば昔活躍した音楽家たちの
肖像画が壁に飾られている。その中で1枚だけ人物がない写真がある。
ベートーヴェンだ。
ということは今座っている人物がベートーヴェン!?

そのときベートーヴェンらしき人物が突然演奏を
止めた。そして素早く私の方へ振り向いた。
すると目が光った。うっ!このままでは殺される…
ドアを閉めて鍵をかけて資料が置かれている棚に
隠れた。
だが後ろに気配を感じた。おそるおそる後ろを振り
向いた瞬間、ベートーヴェンらしき男が目を光らせ
ながら
なぜか右手に持っている斧らしき刃物を私目掛けて
振り下ろした。

「ギャーーーーーーー!!!」

その瞬間目を覚ました。

今回の夢はそれ(音楽室)メインだったか…。
まあ夢のことだから死にはしないが。

ところで受験の結果どうなったんだ…?

第5話おわり

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