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もうひとりの自分 第13話

安いアパートに住んで5ヶ月が経った。幸いにもお金があったので何事もなく家賃も水道光熱費も払える。
しかし何かが足りない。否、足りないことがあまりにも
多すぎる。
仕事してない、テレビやラジオや新聞などの情報もない、友達知り合いもない。
そんなことはわかっているが、やっぱり何かが
足りない。
とりあえずお買い物に行こう。近くにスーパーがある。
かなり古く50年が経過している老舗である。
中に入ると相変わらず賑わっている。
お金があるので今日必要な食料をカゴに入れまくる。
ここで思った。そうだ。冷蔵庫がないんだ。それだったら野菜やアイスはダメだな。
レトルトのカレーやスパゲッティをカゴに入れまくる。
ここで思った。そうだ。電子レンジがないんだ。それだったら温めできないよな。
洗剤や入浴剤をカゴに入れまくる。
ここで思った。そうだ。洗濯機がないんだ。しかも私の部屋にトイレはあるが風呂がないんだ。
仕方なく飲み物や菓子を買って自宅にもどる。
気づけば私の家に一番足りないものといえば、
生活そのものだ。何もない部屋だとそれは本当に人間が
住んでいるのかと疑ってしまうくらい何もない。

画像はイメージです。

私は長年使用している布団で眠りに就く。
夢の中の私も買い物をしていた。商品を買い店から出た途端、店員に呼び止められる。
店員「あなたまだ支払われてない商品あるでしょ?」
「何言ってるですか?全部払いましたよ」
店員「またまた…。ちょっと事務室まで来てください」
「払ったってば」
店内にある事務室に連行された。
店員「さあ商品を出しなさい。あるんでしょ?」
渋々バッグに入っていた購入品を出した。

サラダ油

店員「何に使うんだ?」
「料理に決まってるでしょ」

ごま油

店員「何に使うんだ?」
「料理っつってんだろ!!」

こめ油

店員「何に…」
「料理!!いい加減にしろよ!ほら!証拠のレシート」
そのとき店員の1人がレシートを破り捨てた。
「おいコラ!何のつもりだ!?」
店員「おい!警察に通報だ」
店員「はい!」
「ふざけんな!」
警察「警察です。通報があったのはこちらですか?」
「早!どうせ最初からいただろ!?」
店員「この人がうちの店の商品全部万引きしたんですよ」
「違うってんだろうが!!!」
そのとき私は店員を突き飛ばして事務室から逃げ出す。
しかし何かにぶつかった。そこは何と壁。出口を探す
が何もない。
「どうなってんだ!?クソ!」
必死になって出口を探すがない。やがて店員と警官に
囲まれる。
「もういい!殺せ殺せ!もう殺せ!」
そのとき警察官が目の前にあるドアを開けた。警官に
ここから出るよう言われる。私は出口であると信じて
出た。

すると目の前に銃を構えた数人の機動隊が現れた。
機動隊「犯人佐藤博昭!最後に一言あるか?」
「私は山田!山田利男!」
(銃声)

「うわーーーー!!」
目を覚ました。普通の日常でもこんな嫌な夢を見る。
毎日が本当に嫌な人生だ。

第13話おわり


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