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ゆめうつつ 第2話
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何が期待してくださいだ?ふざけるな!
私の名前は土居。港区出身の慶應大学卒の…今は事情があって
ずっとホームレスをしている。
小綺麗なホームレスなんて聞いたことあるか?
ホームレスだが金はいっぱい持っている。
新橋駅前のコインロッカーに大きな黒いバッグがある。
その中に大金が入っている。
実を言うと新橋だけではない。東京駅。いや東京だけではない。
神奈川、埼玉、千葉、静岡、愛知、長野、山梨…
一応南関東や東海地方の各駅のコインロッカーに大金の入ったバッグが置かれている。
困ったときこそカネが要るということだ。
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親父が何をしでかしたか知らないが、名前をいくつか変え、
学校も何回か転校している。
必ず親父のやった所業が明らかになる
前に転校となっている。
ひどいときは小学校5年のときは10回も転校をしている。
福島か宮城といった東北のほうの小学校では転校してたったの
2週間でおさらば。
中学3年でようやく居場所ができた。それも生まれたこの新橋で。
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関わらず東大出身を多く輩出しているレベルの高い高校に
進学できた。我ながら奇跡である。
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訪れた。慶應には経済学部に進学。そこでお金の仕組み
について学んだ。他の大学の経済学部とは違い
ぼんぼんが多い慶應経済学部の進路はもちろん
金融機関である。私はぼんぼんではないが、
カネの魔力に取り憑かれたせいかテストの成績は
常にトップ、単位も優以外なく周囲も驚くほどカネの知識が豊富となっていた。
このまま退学して自力で会社を作りたい勢いだ。
苦しかった小中高時代とおさらばし、
順風満帆のまま大学を卒業し、銀行に就職した。
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聞いたことない銀行だが、47都道府県に各支店が必ず1つ置かれている。
私が配属されたのは主に銀行内にあるトラブルを調査・解決のために最近設けられた部署である。
配属されて驚いたのはその部署にいる人間たちがいわゆる「クセ者揃い」ということだ。
部署を統括する上司である部長は、これまでこの銀行で花形と呼ばれる部署を渡り歩いて現部署にたどり着いたという。
しかしその部署で毎回トラブルを起こし、「渡り歩いた」いうが実際にはタライ回しに近い左遷に次ぐ左遷だった。
周囲からは渡り歩くたびに問題ばかり起こしまくることから「トラブルジプシー」と言われている。
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月日は流れ配属されて6年が経った。
あるとき一人の行員が私の部署にやってきた。
その行員は証券取引などを扱う銀行では花形と呼ばれるくらい人気の部署だった。人気のためかその部署に憧れを抱いて毎年行員を対象とした配属試験が行われている。
私も毎年その試験に臨んでいるが第一次審査で落第している。
その行員から持ちかけられた問題とは、何者かが取引先の企業に銀行から数千万単位を理由もなしに送金しているのだ。
理由もなく不正に送金しているというのが引っかかる。もしこれが公になったら大問題だ。
何故ならその不正に送っているお金のほとんどが顧客のものなのだ。将来子供が進学や就職のために貯金しているとか年金生活を送る高齢者とか汗水流して働いて得る給料とか。
銀行でありながら不正に送金しまくって空っぽとなったら何をタタかれるかわからない。
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まず私は資料とか行員からの情報などの収集にあたった。
この銀行は知名度はかなり低くても創立65年が経つ歴史あるものだった。
知名度が低いせいかよく「合併してメガバンク誕生」とかあるがそれとは無縁だった。
ある銀行は私が働く銀行に対して「名無し銀行」「最果て銀行」「潜伏銀行に何が得する?」だの陰でこう嘲笑している。
さて不正送金問題であるが、調査をしているうちある不思議な現象があった。不正送金によって銀行の機能が破綻に近づいているであろうにも関わらず皆冷静にいつもと変わらず業務に励んでいる。頭取などが参加する会議においても不正送金の問題など議題に上がらず普通に会議して終了。
顧客から「お金を預けたのに行ってみたら1円も何故かなかった。」とかというトラブルが聞かない。普通にカードを入れて普通にお金を引き出すことができた。
私も試しに50万を引き出ししてみた。手数料はかかるが普通に50万引き出せた。
おいおい。デマなのか?
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すると「トラブル対策管理部門の5×歳の部長含む全員が取引先の金属加工会社に新製品開発資金を名目に銀行から50億を不正に融資した疑いで逮捕されました」
さらに目を疑った。
「同じくその融資を受け取り私的流用した疑いで金属加工会社社長(○×○×)容疑者(6×)を逮捕しました」
私の父ではないか!
父って金属加工会社を経営していたのか。知らなかった。金属加工の「き」の字もイメージになかった。
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入社以来実家に帰っていなかったが、こうなった以上心の中で家族と縁を切った。
そして今。ただ大金があるだけのリッチなホームレス生活を送っている。
自分がいつ捕まるかと怯えながら過ごしている。
おしまい。
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