見出し画像

もうひとりの自分 第12話

私には人生においていわゆる「夢のまた夢」の最たる
ものがあります。それは「結婚」です。
でも私の場合、結婚の前にまず自分が何者か、そして
自分の境遇を共感してくれる親友を見つけなければ
ならない。
それをするにも途方もない行為だ。だから
「夢のまた夢」と言っているんだ。

だが何度も言っているように、私は親友とか彼女どころか両親否、どの人間からも遠ざけられている。
このアパートに安価で住めたのは奇跡に等しい。
その代償としてかなりボロいということだ。
この部屋、誰か死んでないか?と思わんばかりの
安価だという。

さて夢の中の私はなぜか結婚しており、夫婦生活を
していた。しかし何だか愛情がない。会話もない。
だがお互い言葉をかけない。互いに独身生活が
長過ぎたのか。私のこの時点での年齢は不明だが
40はいってると思う。その証拠に白髪が多いと
いうことだ。
妻の年齢は30かその手前か。誰の紹介か知らないが
「どうしても(結婚)やってくれ」と押し付けられる
かたちの結婚だった。
そのせいか結婚して4年が経っても会話がない。
寝室は妻によって占拠されているようなので私が
寝るといえばリビングのソファぐらいなものだろう。
共働きではないが、妻は家事という家事をしない。
毎晩どこかへ出掛けては夜12時に帰ってくる。
私がいても挨拶などせず、酔っているにもかかわらず
ちゃんとシャワーを浴び寝巻きを着て寝室で寝る。

私は気になった。毎晩どこに行ってるだろう。
私は妻の後をつけることにした。

どうやらタクシーで行っているらしい。私もタクシー
を呼んだ。
「あの黄色のタクシーを追って」
妻が乗る黄色のタクシーは街を抜けて山へと向かう。
その途中に濃霧が現れた。濃霧の中をタクシーは
進むが、黄色のタクシーはとうとう見失った。

結局尾行は失敗におわり、タクシー料金25000円を
払う羽目になってしまった。家に戻ると妻がテレビを
見ていた。私が声をかけようとした瞬間、向こうから
若そうな男が妻に声をかけた。すると男は私に
振り向いた瞬間、
「泥棒ーーーー!!!」

そのとき目が覚めた。最後らへんのあの男が何者
だったのか、そして妻と思われた女の名前が最後まで
わからなかった。

結婚とは、私にとって「地獄」だった。

第12話おわり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?